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八月二十日【一方通行編】

第二位との戦闘、多重能力者との決別、白井への宣告。
様々な事件が起こり、消化不良のまま時間だけが無情に流れて八月十九日は終わった。
その翌朝、御坂は白井と一言も会話をせずに寮の部屋を出た。

施設はまだ壊されていない。

それだけが御坂の胸を苦しめる。
今日も第二位に邪魔されるかもしれない。
あるいは多重能力者が邪魔しに来るかもしれない。
はたまたまるで知らないもっと強い敵が立ちふさがるかもしれない。
それでも御坂は止まれない。
止まってはいけないのだ。
自分が遺伝子サンプルを提供して生み出されてしまったクローン達は今も1人、また1人と命を奪われているのだ。

御坂はリストにあるもう1つの施設に忍び込んだ。
とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第52話








「白井さん、今日は何か元気無いですね。綾峰さんと喧嘩でもしたんですか?」

「ちょっ。佐天さんっ?」

風紀委員の仕事が一段落したところで遊びに来た佐天に連れ出されて白井と初春達は一七七支部に一番近いファミレスに来ていた。
そこで席について佐天の一言目が先ほどの言葉だったのだ。
佐天の言葉に初春も驚いているが、先ほどまで聞くに聞けなかったためか白井の方を伺っていた。
白井はそんな2人の様子に心配をかけている自分に気がつくと、ぽつりぽつりと話し始めた。

「別に…私が喧嘩した、という訳ではないのですけれど…」

「けど?」

「何かあったんですか?」

2人に促される様にして白井は言葉を続けた。

「その、お姉さまと唯鷹さんがケンカしてるみたいですの…」

「ええ!?」

「あの2人が、喧嘩…ねぇ」

「別に殴り合うような取っ組み合いの喧嘩、というわけではありませんの。ただ、お互い何も言わないと言うか…」

2人にとって大人なイメージのある綾峰や御坂が、喧嘩しているという状況に驚きを隠せない2人は身を乗り出して状況を尋ねて来た。

「何が原因なんですか?」

「お姉さまは唯鷹さんが自分の大事な物を壊したと思い込んでるんですの。でも本当は唯鷹さんはそれをただ隠してるだけで、でもそれを唯鷹さんもお姉さまに言わないので…」

「それで喧嘩、と」

なるほど~、と頷く初春の横で座っていた佐天は質問をする。

「えっと、とりあえずその御坂さんの大事な物は壊されてないんですよね?」

「ええ、それは確かですの」

「だったら綾峰さんにその事を御坂さんに言わせるか、あるいはもう直接白井さんが言っちゃえば良いんじゃないですか?」

「唯鷹さんは言うつもりはないみたいですし…私が言った所でお姉さまそのまま鵜呑みにしてくださるかどうか…はぁ」

ため息を吐き、いつもの凛とした雰囲気のない白井に2人は御坂達のケンカがどれほどの物かがなんとなく推察できた。
運ばれて来た紅茶に口をつけて窓から呆然と空を見上げる白井を背に2人は慌てて話し合う。

(佐天さん、どうしましょう?白井さんがヒステリックにならないであんなに落ち込んでるとこなんて私見た事ないですよぅ)

(同僚のアンタが見た事なかったら私だって見た事ないわよ。にしても話聞いてる限り完全に白井さんは板挟みされてる被害者じゃん。そこからどうにか持ってけない?)

(うーん、私も聞いてる限りだと綾峰さんが悪い様に感じましたけど…綾峰さんが理由も無くそんなことするとは思えませんし)

(だー、もー。誰が悪いとかじゃなくて、今は白井さんを励ますのが先決でしょ。…そうだ、初春。カラオケとかどう?さっきこの割引券貰ったから遊びに来たんだった)

そう言って佐天はスカートのポケットから折り畳まれたカラオケ店のロゴが書かれた紙を持ち出した。

(ナイスアイディアですよ。それ。やりましょう、佐天さん!歌いきるんです。そうすれば白井さんもきっと元気でますよ)

作戦が決まった2人は即座に実行に移した。

「そうそう、白井さん。コレ見てください」

佐天は白井の方に向き直ると先ほどの割引券をバッと広げて白井に見せつける。

「? 何ですの?」

「カラオケの割引券ですよ。これで歌いまくって嫌なことを全部吹き飛ばしましょう!」

「そうですよ、それに歌って気分を入れ替えれば御坂さん達のこともきっと良い案が浮かぶかもしれませんよ」

佐天に引き続き、初春もそれに加勢する。
が、白井はふっと優しい顔で微笑むと首を振った。

「初春と佐天さんのお気持ちはありがたいのですけれど、遠慮させてもらいますの。そんな気分じゃありませんし…」

「そんな…」

「白井さん…」

失敗したか、と2人の表情に暗い影が過る。

「それに、その割引券、期限切れてますわよ」

「へっ?」

「あ、本当だ。佐天さん。これ期限が7月19日になってますよ?」

「うそぉぉぉ!!?」

慌てて割引券の日付を確認すると既に一ヶ月も前に切れていた。

「佐天さん、どこでコレ貰って来たんですか!?」

「むーちゃんがいらないから上げるって言ってたんだけど…って期限切れてたならわったっすっなっよぉぉぉぉ」

テーブルに突っ伏しながら佐天ははた迷惑な親友の代わりにテーブルを叩き始めた。

「何でそこで確認してこなかったんですか!?さっきの私たちめちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか!」

「だって~」

初春も動揺してるのか佐天の肩をつかむと佐天の首がガクガクと鳴りそうな勢いで揺らした。
それを見ていた白井から、

「ぷふっ」

という笑い声が聞こえて来た。

「「え?」」

その笑い声に2人の動きが止まる。
見れば、先ほどまでこの世の終わりでも見た様な表情で落ち込んでいた白井が口元を抑えながら笑っていた。
それを見ていた2人の顔にも笑顔が浮かび、三人は顔を見合わせて笑い合った。









笑いが絶えなかった。

「わったっしっにはー、御坂美琴って名前があんのよ!いい加減覚えろド馬鹿!!」


戦いが終わったのだ。



御坂がリストにあったもう1つの施設に潜り込むと、中はもぬけの殻だった。
静寂に包まれた施設には人影はまるでなく、電気機器も完全に停止していた。
罠を警戒しつつ奥に進むが、結局誰とも会わぬままに研究施設の最深部まで辿り着いてしまった。

「どういうこと?」

意味が分からず、呟きながらも御坂はとりあえず情報を探すために施設の情報機器にハッキングをしかける。
そして出て来たのは1つの報告書。

その報告書には、『施設から撤退する』と書いてあった。


結局何があったのかは分からなかった。
実験を妨害した御坂の活動が功を奏したのか。
あるいは多重能力者が御坂の知らない所で何かをしたのか。
あるいは実験そのものを揺るがす別の何かが起きたのか。
何も分からないまま狐に摘まれたように帰路に着く御坂には1つだけ分かった事があった。

『妹達』はもう死ぬ必要はない。

御坂はそれが嬉しかった。
全てが終わり、自分のクローンと出会ったあの日から一週間の間に起きたあらゆる出来事が唯の悪夢だったのかとも思えた。
いや、きっと悪夢だったのだ。
御坂の努力は報われ、夢は覚めたのだから。
御坂は晴れきった想いで空を見上げる。
そこにあるのは赤みを帯びたオレンジ。
これほどに奇麗なオレンジ色を久しく見ていなかったように御坂は感じた。
思い返せば灰色の記憶。
それほどまでに自分が追い込まれていた事を御坂は改めて認識した。
そこに強いビル風が吹く。
風に吹かれた御坂は改めて夕日が沈む方角を見る。
高いビル群によって隠された夕日だったがそれでも今の御坂にはとても奇麗に感じられた。

ふと、喉が乾いて御坂はいつもの公園に行く事にした。
あの自販機にも今日ぐらいはお金を払ってやっても良いかもしれない。
そんなことを考えながら御坂が自販機に向かっていると、そこには先客がいた。
ツンツン頭の黒髪にどこにでもありそうな学生服。
大きくも小さくもない肩の向こう側ではおつりの返却用のレバーをがちゃがちゃと乱暴に動かしながら少年は焦る様に呟いていた。

「おっかしーなぁ」

御坂はそれが誰だか知っている。
いつも不幸だと呟く少年は今日も変わらず不幸(にちじょう)にいた。
そこに戻ってこれた事に改めて安堵しながら御坂は少年に声をかけた。

「ちょろっとー。自販機の前でボケっと突っ立ってんじゃないわよ」

満面の笑みを浮かべて。







微笑みを浮かべて白井は友人達を見送った。

「今日は本当にありがとうですの」

「またカラオケ行きましょうね!」

「今度はきっと4人で行きましょう!」

夕方頃、日が沈む直前の空の下で、そう言って別れて親友達は手を振りながら自分たちの学生寮に向かって行った。
初春達の姿が雑踏に埋もれて、それでもしばらく見送った白井はため息とともに表情を曇らせた。
初春達に心配を掛けるまいと精一杯に笑った。
もちろん白井は無理に笑ったわけではない。
どんな時でも親友と言うものは心からの笑みを浮かばせてくれる。
初春や佐天は白井にとってそう言う意味のまさに親友達だった。
レベルや学校を超えて、本当の親友達。
そんな人間といて笑わないわけがない。
それでも佐天達の横で笑みを浮かべる白井の心はちくり、ちくりと本当に小さな針を刺す様なそんな痛みを引きずったままだった。
もちろん、御坂と綾峰のことだった。
2人が『妹達』のことで仲違いを起こしているのだろうと白井は感じていた。
それを御坂や綾峰に聞いた訳ではなかったが、状況を考えればすぐに浮かぶ答えだった。
佐天の言葉が白井の脳裏を過る。

『だったら綾峰さんにその事を御坂さんに言わせるか、あるいはもう直接白井さんが言っちゃえば良いんじゃないですか?』

それができればどんなに楽な事だろうか、と白井は改めてため息を吐く。
白井はもちろん綾峰の行動を御坂に告白してしまう事も考えていた。
だが、出来なかった。
御坂と綾峰は何度か接触した様子があると、白井は踏んでいた。
だと言うのに、御坂に対し綾峰は一言だって『妹達』のことは言っていない。
いや、むしろ誰にも言っていない様子だった。
せいぜいこの事を知っているのは本人とカエル顔の医者、そして白井くらいだろう。
その白井だってカエル顔の医者が教えてくれなければ知る事はなかった。
それほどに情報を制限している理由は何なのか。
考えれば考える程わからなくなるが、1つだけはっきりしている事がある。
コノ情報が誰か(特に御坂に対しては)に広まる事を綾峰は望んでいない。
だから白井は言えなかったのだ。
結局白井はどうすれば良いのか。
未だに分からない。

結論が1つでて、それが結局結論になっていない事に気付き、そしてまた悩み。

これを繰り返すたびに白井はため息を吐いていく。
足取りは重く、吐く息も重い。
ふと、白井は向かいのバス停を見る。
繁華街のバス停の停留所には、御坂の姿があった。
一瞬、気まずい気分になり目を反らそうとして、白井はあり得ない物を見てもう一度御坂を見た。
そこには、笑顔の御坂がいた。
一週間近くの間、白井がどんな風に話かけても見る事すら叶わなかった御坂の笑顔があった。
その横には見知らぬツンツン頭の男子生徒。
服装からして綾峰と同じ学校の生徒のようだ。
あの男が御坂の笑顔を引き出したのか、白井はしばらくの間、呆然と2人を眺めていたが。
くるりと、後ろを向いて逃げる様に走り出した。







いつの間にか夕空がさらに赤みを増していた。
その夕日を遮る様に飛行船が浮かんでいる。
そんな夕空が見える繁華街のバスの停留所のベンチに上条と御坂は座っていた。
上条の息は切れており、その傍らに広げられた様々な缶ジュースの山が異様なシチュエーションを醸し出している。
ちょっとハッチャケすぎたかな、と半分反省しながら御坂は上条に言った。

「愉快に現実逃避してないでジュース持ちなさいってば、元々アンタの取り分でしょ?」

そう言いながら磁力で持って来た缶ジュースのいくつかを上条に投げ渡していく。
ぎゃーぎゃーと文句を言う上条に笑いながら呆れていると、ふと飛行船のお腹の部分が視界に入った。
飛行船の腹にくくりつけられた大画面に筋ジストロフィーの病理研究を行っていた水穂機構が業務撤退を表明しましたと、今日のニュースが流されている。
その画面が御坂には本当に遠い出来事の様に感じられた。
今、思えば『レベル6シフト』は唐突に御坂の前に現れ、本当に呆気なく終わってしまった。
もちろん、御坂の必死の努力があってのことだったが、それにしても妙に引き際が良いように感じられた。
(本当に終わったのかな)
そんな思いが御坂の脳裏に走る。
だが、その御坂の気弱な心すら少年との会話は吹き飛ばしてくれる。



他愛もない会話が続き、少女の心は本人も知らないうちに癒されていく。
それは少年へのほのかな恋心ゆえなのか、あるいはただ忘れたいと願う少女の想いなのか。
無為な時間がただ無駄に過ぎて行く。
そんな幸せな時間が少女の笑顔に彩られながら過ぎて行った。
精鋭的な缶ジュースの話から始まり、少年への少女の不満に続き、後輩の話、後輩に彼氏ができたことでの妙ないらいら。
そんな少女の幸せな時間は本当に矢の様に過ぎ去って行った。
ただ、唐突に始まり、終わったように、少女の悪夢は。

唐突に再開した。


「お姉さま」







走って、走って、走って。
どこをどう走ったかもわからぬ内に、気がついたら公園にいた。
いつも御坂が蹴りを入れる自販機はいつものように立ち尽くしている。
公園のベンチに座る白井は先ほどの御坂の事を思い出していた。
一週間ぶりとも言える笑みを浮かべていた御坂。
それを引き出したのは、いつも側にいた自分では無くどこからともなく現れた見知らぬ男。
もしかすると、それが御坂が日頃から行っていた「あの野郎」なのかもしれないと白井は考えながら、

「アハ、アハハはハ」

嗤っていた。
(勝手に心配して、勝手に力になりたいと考えて、勝手に置いてかれ、昨日の言葉を悩み、唯鷹さんとお姉さまについて悩み、友人にまで励まされた私は、)

「まるでただの道化じゃないですの」

白井はそんな自分が酷く滑稽に思えた。
そして、そんな負の思考があってはならない1つの結論に達する。

「私は、お姉さまや唯鷹さんにとって本当に必要なんですの?」

口に出して問いかけるも、答えなど帰ってこず、悩める少女の問いは虚空に消える。
ぽろり。
一筋の水が少女の目からこぼれ落ちた。

「あ、」

気がつき、慌てて拭うも1度溢れた水は止まらない。
止まらない水は拭う手すらも濡らして流れて行く。

「う、」

もう限界だった。
ただの中学生が抱えるにはあまりにも重すぎたのだ。
だから、限界を越えたそれは、少女の目から溢れ出し、少女の口から漏れ出していく。

「あ、ああああああああああああああああ」

少女の悲痛な慟哭が公園に響いた。








「なんで、あんたがこんな所にいるの?」

睨む御坂の視線を無表情で受け止めるミサカは質問に答える。

「研修中です、とミサかは答えます」

先ほど、声を掛けて来たミサカの腕を強引に掴むと御坂は上条から遠ざかってきたのだ。
そして先程の質問に答えるミサカに背を向けると、叩き付けるように御坂は声を荒げた。

「あの計画は中止されたんじゃないのっ!?」

そう、計画は中止されたはずだった。
最後の研究施設に残されていた報告書には『施設から撤退する』の一言、そして研究施設は無人となっていた。
あの状態で実験が続いてるわけがない。
しかし、ミサカは無情にその思考を打ち破った。

「計画というのが、『絶対能力進化(レベル6シフト)』計画を指すのなら、予定通り進行中です、とミサかは答えます」

「!!ッ ウソ…ッ、今も…?」

目を見開き尋ねる御坂にミサカは頷くと、詳細を説明する。

「はい、先程、第一〇〇二〇次実験が行われたばかりです」

その言葉に御坂は完全に停止する。
それは、御坂の罪がまだ終わっていない事を指していた。
かつて研究者に渡したDNAマップが今こうして自分と同じ姿をしている少女達を生み出し、殺している。

(そう、私が殺したの)

そう、考えさせるにはその現実は充分だった。
目の前に立つ、御坂もいずれはあの時の9982号のようになってしまう。
あの娘のように殺されてしまう。

「―――ッ!」

瞬間、こみ上げて来る嘔吐感に御坂は口元を必死に抑えた。
そしてその間も御坂は考える。
どうすればミサカ達を救えるのか、自分は何をすればいいのか。

「お姉さま?ご気分が悪いのですか?」

顔面蒼白となった御坂にミサカは心配して声をかける。
しかし御坂は答えない。
聞こえなかったのか、聞きたくなかったのか。

「お姉さま。ご気分が良くないのでしたらあちらのベンチで、「もう止めてッ!!」ッ!?」

突然の御坂の大声にミサカは押し黙る。
頭を抱える御坂はただ叫ぶ。

「その声で!その姿でっ!」

聞きたくない物から耳を塞ぎ、見たくない物から目を反らし、思い出したくない物を追い出すように頭を抱え、叫んだ。

「もう……私の前に現れないで……ッ!」

御坂の悪夢はまだ終わらない。







涙は流しきった。
声も出し切った。
もう、何も出すものはなかった。
白井は、呆然と夜道を歩いていた。
いつものような覇気はなく、凛とした瞳も死人のように光を無くしている。
足取りもおぼつかず、その姿はまるで夢遊病者のそれだった。
人通りが多い故に無事ではあったが、一度路地にでも入ろうものなら今の白井では襲われても何もできそうにはなかった。

ふと、そんな白井に背後から声がかかった。

「お、オセロじゃん。こんな所で何してるじゃんよ」

緩慢な動きで白井が後ろを振り向くと、ジャージ姿の瀑乳女性が買い物袋を下げていた。
傍らには白井より少し背の低い少女もいる。

「黄泉川先生…」

赤い泣きはらした目をした白井の姿に黄泉川は一瞬驚いた表情になるが、すぐに笑顔で声をかけた。

「白井、夕飯は食べたのか?」

「…いえ、まだですの」

「寮に連絡は…その様子だとしてないようだな」

「ああ、そういえばまだしてませんでしたの」

白井の答える声には力はなく、本当にどうでも良いという感情が伝わって来た。
そんな姿に、横にいた雲雀が声を掛ける。

「オセロのおねーちゃん。大丈夫?」

「私は大丈夫ですのよ。大丈夫ですの」

力の無い表情で微笑む白井に雲雀は黄泉川を見上げた。

「わかってるじゃんよ」

そう言って雲雀の頭にぽん、と手を乗せると、持っていた買い物袋を下して携帯を取り出した。
何回かのコールの後、凛とした声が聞こえて来る。
何度か飲み屋で知り合った常盤台の学生寮の寮監の声に苦笑しながら黄泉川は軽い状況説明をすると、いくらか話した後に携帯を閉じた。
それを呆然と見つめていた白井に、黄泉川は声を掛ける。

「夕飯がまだだって言ってたじゃん?」

「え、ええ」

「なら、今日はうちで食べてくと良いじゃんよ」

「え、でも外出届けが…」

「それならさっき了解を取ったから大丈夫じゃん。ほらほら行くよ」

「れっつごー」

突然の状況に白井は驚くと、声を上げた。

「え?ええええええ!?」








少女が声を掛けた。

「依頼よ」

ドレス姿の少女は仲間達にそう言うと、コピーした書類を配っていく。
ホストとチンピラを半分に割った様な雰囲気の少年はその資料を見て少女に尋ねる。

「おい、何だこの『実験動物の回収作業の護衛』って生温い仕事は。本当に俺たちの仕事かよ?」

「さぁ、知らないわ。ただ私たちが呼ばれたんだから相当の理由があるってことでしょ?」

ドレス姿の少女は資料を適当にめくりながら言葉を繋げる。

「まぁ、確かに資料に何の回収かがしっかり載ってないのは気になるけど…」

「それは知るなってことだろ。そういや、回収っていやぁ。昨日お前が捕まえたあの女はどうなったんだ?」

昨日、少女が回収した布束についての質問だが、少女は肩をすくめるとどうでも良いという感じに言った。

「さぁ、どっかで生かされてんじゃない?私、あの後すぐに他の部隊に預けちゃったし」

「ふーん」

少年はどうでも良くなったのか生返事を返し、少女もそれ以上はどうでもいいのか口を閉じた。

「それにしても、この病院に何があるんだろうな」

「まぁ、俺たちに回収させるんだからカイブツとか?」

先ほどまで口を閉ざしていた少年の問いかけに資料を読み終えた他の少年が言葉を返す。

「何にせよ。多重能力者のヤロウもこそこそ裏でやってるみたいだし。そろそろ動きがあるだろうな」

口が裂ける様な残酷な笑みを浮かべて『スクール』のリーダーである垣根帝督は病院の写真を見る。



そこは、綾峰が『妹達』を保護している病院だった。








後書き。
やってしまった。
更新するつもりなんてなかったのに…。
とりあえず、こっそりと上げておきます。


改訂版。
白井の上条発見シーンを追加。
これがないと、上条さんが御坂の部屋に入るシーンが消えてしまう事に気がつきました。
そして書いてるうちに更なる鬱展開に。
なぜだ。なぜこうなった…。

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