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八月十六日~十八日 【一方通行編】

朝、白井が起きる前に起きて御坂は制服に着替えると、出かける支度を始めた。
先日買った服を適当なリュックサックに入れておく。
白井を起こさない様に準備を終え、部屋の扉のドアノブに手をかける。
「お姉さま、こんなに早い時間にどこへ行かれますの?」

ドアノブを持つ手を止め、御坂は部屋の方にいつもの笑顔で振り返る。

「ちょっと野暮用があってね。それをやらなきゃいけないの」

ネグリジェ姿の白井がベッドの上に座っていた。

「……そうですの。お帰りは何時頃に?」

白井の問いに御坂は数秒悩む様に口を閉ざすと、すぐに苦笑いを浮かべて言う。

「さぁ、わからないわ。もし遅くなったら寮監対策はお願いね」

片手をあげつつお願いのポーズを取る御坂に、

「ええ、わかりましたわ」

白井は淡々と答えた。

「……………………」

「……………………」

沈黙が広がった。
お互いに相手に何かを伝えようと、されどそれを踏みとどまるような空気が流れ、

「……ねぇ、黒子」

それを破ったのは御坂だった。

「あんた最近、綾峰さんを見た?というか会った?」

「い、いいえ。最近は連絡が取れませんの」

白井の答えになるほどと頷くと、御坂は扉の方に向き直る。

「そう、わかったわ。それじゃ、行くから」

それだけ言うと御坂は部屋の扉に手をかけた。
御坂の後ろ姿に、白井はつい、呼びかける。

「………お姉さま」

「ん?どうしたの?黒子?」

振り返った御坂の笑みは完璧で、完璧に無理をしているのはわかるのに、

「……いえ、お気をつけて行ってらっしゃいですの」

白井にはそれを指摘する勇気が出なかった。

「ええ、行ってくるわ」

それだけ言うと、御坂は外に出かけていった。








とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第49話








とある病院の地下実験室。
50を超える妹達が眠るその場所の中心に綾峰とカエル顔の医者はいた。

「それにしても、培養器をもう盗まないってことは僕が作るってことで良いのかな?」

医者は綾峰の提案を受け、質問をした。

「まぁ、そこらにある量産品より、先生が造った方が普通に高性能っぽいですしね」

目的はもう果たしたし、と綾峰は頭に浮かべた作戦が次の段階に入っている事を自覚した。

「そうかい?それじゃぁ、早速始めようか?材料は揃えておいたから、今日中には人数分そろうだろう?」

「相変わらず、準備が良いですね…」

「これでも、僕は患者ために必要な物は何でも揃えるのが医者だと思ってるからね?」

「なるほど…」

かなわねぇや、と綾峰は苦笑を漏らした。








『ただいま、電波のはいらない場所にいるか、電源を切っています』

音声案内と共に、電話が切れる。

「何か前にもこんなことありましたわね…」

御坂の出かけた後、綾峰に電話をかけた白井はため息を吐く。
11日に自らの前に現れた『多重能力者』、それ以降の数日の間に一度も連絡の取れない綾峰、そして綾峰の隠している『秘密』。
これらを考えれば、なんとなく白井には真実が見えている気がした。
まぁ、綾峰唯鷹=『多重能力者』であることはまず間違いないんでしょうね…と白井は思う。
そしてあの白い男が言った『実験』という言葉を考える。

(あの時、あの男は妹さんをクローンと言った、そして妹さん自身もクローンだと認めましたわね…。そして『実験』はあの男をレベル5からレベル6へ上げるもの。という事はあの男もお姉さまと同じレベル5という事になりますわね)

そこまで一息のうちに思考して、白井は更に思考に埋没していく。

(『実験』そのものについてはいまいち全容はわかりませんが、お姉さま自身ではなく、妹さんのようなクローンを使うという事、かつあの夜の様に戦闘をしているという事から、戦闘を繰り返す事による進化ということですの?)

そこまで考えて白井は己の想像にぶるっと体を震わせる。

(推測はともかく、お姉さまや綾峰さんが私をこの件に巻き込みたくないと考えているのは事実でしょうね…。あの2人のことですもの、勝手に背負って勝手に解決しようと相手や回りの事なんて何も考えずに自分が信じる本当にいい結果を求めて駆け回ってるんでしょうね)

悔しさが白井を包む。
己はどれだけ無力なのだろう、と唇を噛む。
自分が本当に大事に思う人たちが自分を大事に思うからこそ頼ってくれない、だから置いていかれる。
そんなのは嫌だ、と白井は思う。
ただ一緒にいたい。
同じ場所にいたい。
それだけが白井の望み。

(そのためには、まずは情報を集めなくては…そして私がお二方のためにできること、それを見つけますわよ)

世界で最も大事な2人を助けるために、白井は静かに決意した。







長点上機学園の学生寮の一室。
布束砥信はその日、当然のようにその来客を受け入れた。

「まぁ、いずれこういう日が来るとは思ってたから」

そう言うと、ゴスロリのメイド服を着た布束は紅茶を来客用のカップに入れてテーブルに置いた。

「…………………」

無言で椅子に座る相手に対し、布束はテーブルを挟んだ反対側の椅子に座ると、同じ紅茶を入れた自分用のアンティークカップに口をつけた。

「once 私なりに勉強して入れてみた紅茶だから、一口くらいは飲んで感想をもらいたいのだけど?」

布束の言葉に促され、相手は紅茶のカップに口を付ける。

「……おいしいわ」

相手の素直な感想に布束は僅かに微笑む。

「そう。なら良かったわ。それで、どうするの?」

カップをテーブルに置き、真顔に戻った布束は尋ねる。

「あなたは『実験』について全貌を理解したはず、そしてあなた自身の力では直接解決はできないことも…その上であなた、オリジナルである御坂美琴はどう行動するつもりなの?」

「………止めるわ」

俯いた御坂の問いは簡潔だった。

「実験を、ということ?」

「……私、『妹達(シスターズ)』と話したわ」

御坂は問いには答えず、語りだす。
15日の夜、一方通行も、多重能力者も消えた後の御坂とミサカ達だけの会話。
そこでの会話は御坂にとっては到底理解できないものだった。

「あの娘達は実験動物ってのがどんなものかを正しく理解してる。そして、分かっていながら、それでも平然と自分達の事を『実験動物』って呼んでるのよ」

「……………………」

「私は…クローンを人間としてなんて見れないし、殺される事を受け入れてる連中を助けようなんて思えない」

俯いていた御坂は視線を布束に向ける。
予想以上に鋭い視線に一瞬布束は背筋を凍らせる。

「でも、他人のDNAマップをくだらない実験に使うヤツらを見過ごす気もないわ」

「あなたの考えはわかったわ。で?具体的にはどうするつもりなの?」

「…………………『実験』の研究所にある機材を私の能力で破壊する。機材さえなければ実験だって不可能のはずだもの」

それが御坂が考えた末にたどり着いた結論だった。
御坂の答えに満足そうに聞く布束は尋ねる。

「so、良い線ね。でも1つ聞くけれど、研究所の場所はわかっているの?」

「だからここに来たの。あなたなら、研究所のリストぐらいすぐに手に入るでしょ?」

御坂に『妹達』について知るきっかけを作ったのは布束だ。
ならば、布束も前々から『実験』について知っていた事になる。
つまり布束なら研究所について知っていてもおかしくない、と踏んで御坂はここに来たのだ。

「リストなら、ここにあるわ」

そう言って、布束は一枚のレポート用紙を取り出す。
白い紙には20を超える研究所の名前が連ねてあった。
流石に既に用意されているとは思っていなかったのか、驚きを隠せずにいる御坂に布束は言う。

「言ったでしょ。いずれこういう日が来ると思ってたって」

「…貰っても良いの?」

「いいわよ、データならあるし」

「そう…」

御坂はレポート用紙を受け取ると折り畳んでポケットにしまう。

「それに、これはかつて実験に参加していた私の責任でもあるんだから」

かつて、布束は『量産型能力者計画』を行う研究所にいた。

それが自分の意思によるものか、それとも強制か、どちらにせよ参加していた事に変わりはない。
布束の想いを理解し、御坂はそれでも言う。

「…………そうね、でも、これはもともと私が撒いた種だもの」

そして御坂はここに宣言する。

「自分の手で片をつけてやるわ」

御坂は立ち上がり、玄関に向かう。
紅茶のお礼を言った後、御坂は靴を履きながら尋ねた。

「ねぇ、あなた綾峰唯鷹のこと知ってる?」

「ええ、昔の実験仲間よ」

御坂の問いに対する布束の答えの中で御坂は気になる単語を返した。

「『実験』?」

「ええ、学園都市でなら、いつでもどこにでもあるような下らない実験よ」

「じゃぁ、綾峰さんの目的って知ってる?」

御坂の問いに布束は首を振る。

「さぁ、彼とはあの日の後、1回だけ会っただけだしよく知らないわ」

「そう。ありがとう。邪魔したわね」

ため息を吐くと、御坂は帰っていった。

「…さて、私も準備を急がないといけないわね…」

玄関で見送った布束が呟いた。







(ああ、あと2日か)

18日の分のノルマである最後のミサカをカエル顔の医者に任せ、綾峰は病院の屋上に座っていた。

(これで90人近くは助けた事になるのか…メンドクセー)

綾峰は夜空に浮かぶ月を見ながらぼーっとする。

(まぁ、現状の問題点は1つ…か)

それは、

(黒子がこの『実験』の事を知っちまうとはなぁ)

白井は原作ではまだ知らないはずだった。
だが、この世界の白井は知ってしまった。
原因は『自分の存在』なのだろうと、綾峰は推測する。
今までもいくつかの細かい部分で原作と違う流れができているのは綾峰も知っていた。
まずい、と綾峰は思う。
綾峰は錆びた知識と言えど、原作の流れを知っていたからこそ、救えた命がいくつもあった。
だが、このままではいずれ綾峰にも想像の付かないところまで原作とかけ離れて行くのではないかと不安が脳裏を過る。
その原作と離れた展開からいずれ取り返しのつかない決定的な何かが起きるのではないか…、綾峰はそんな絶望に似た暗い想像が払っても払っても綾峰の頭の中で反響していく。

(そう、例えば、白井の死…とか)

首を振りため息を吐く。

「メンドクセー」

ふと、いつもの口癖が漏れる。

「そんなこと考えるのもメンドクセーや」

今更何を迷う、と綾峰は笑う。

”上条”を救った時点で、そんなことは覚悟しただろう。

(俺が考えるのは、ただ1人でも多く命を助ける事、か)

そして瞳に力がこもる。

(白井は何があっても死なせやしねぇ)

そこまで思考して突然、綾峰は咳き込み始めた。
口元を手で押さえ、数十秒咳き込み続ける。

「…………ハァ、ゲホッ…ハァ」

咳が落ち着くと、荒い息と共に綾峰は口を押さえていた手の平を見る。
月光に照らされた手は赤く染まっていた。
ハハ、と綾峰は自嘲気味に笑う。
覚悟と裏腹に体は既にぼろぼろだった。
学園都市において最強と言われる『一方通行(アクセラレータ)』からミサカを救出し、時にはミサカの代わりに戦う。
『変装能力』、『空間移動』、『電気使い』、『座標移動』、『視覚阻害』、『自動再生』…etc.
複数の能力をどれか1つは常に発動している状態が起きている間は続いている。
既に体も心もぼろぼろで、『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』からは『妹達』のことがなければ絶対安静を言い渡しているところだと言われた。

(やっぱ俺はヒーローじゃねぇな)

綾峰はため息を吐く。
ヒーローならこんな苦労をせずとも自分が助ける少女達の100倍の数をたった1日で救ってしまうのだろう。
しかも、その心も”救う”のだ。

(上条、お前はやっぱすげーよ)

未だ事実を知らない自らの親友を思い出す。
今頃、銀髪のシスターに噛まれながら不幸だとか言ってんだろうなぁ、と綾峰はそんな上条を想像しついついにやついてしまう。
ふと、綾峰は疑問を口にした。

「ヒーローでもねぇってなら、俺はいったい何なんだろうなぁ?」

その問いに答える者はいない。
答えられる者はいない。









あとがき(一方通行風)

かなり早足、というか飛ばしまくりと言う感じだったがなァ、これで16~18日は終わりだ。
この間、登場人物達が何をしていたのかだが、全部載せっと長くなるからなァ、これだけにしとくぜェ。
一応、19日、20日、21日にてそれぞれの登場人物達がこの3日間に何をしていたのかについて載せるかもしれンがなァ。
さて、綾峰の野郎がもうぼろぼろだな。
これから起こる激動の3日間でこいつは生き残れンのか?
死ぬンじゃねェぞォ、綾峰!まだまだお前には楽しませて貰うンだからよォ!
あと、綾峰の野郎も言ってるが、一方通行の物語ではヤツはヒーローじゃねェぞ。
それについても今後は本編で書けたら良いなァと思ってる。
じゃァな。次回も首洗って待ってろよ。




今回のおまけコーナーはお休みです。
質問については次回のおまけコーナーで。

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