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八月十四日 弐【一方通行編】

例えば、とある人間の死を自らが知っていたと仮定しよう。
どう死ぬのかは知らない。
でも、死ぬ事はわかっている。
そしてそれを防ぐ手段、能力、時間、それらが自分にあるとする。
もしも、そんな状況に置かれた時、自らはどうするか。
綾峰唯鷹にとってそんなことは簡単な答えだった。
とても、簡単で、考える必要すらないくらい、なはずだった。

あの記憶を思い出すまでは。
とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第44話








路地裏に真っ赤な華が咲いた。
それは赤く、絵の具をぶちまけたように赤く、赤薔薇を敷き詰めたように赤く、生温い液体で、路上に描かれた。
その中心に立つのは、あまりにも白過ぎる花弁。
白い髪に、黒い服、その袖からは白すぎる肌が見えている。
そのどれもがまっさらに奇麗なのは血に浸されたその空間において異常で、あまりにも圧倒的だった。
そして『一方通行』はにたりと笑うと。

「実験しゅーりょー」

と呟く。
その横に、肉塊となった物体が転がっている。
それはかつてミサカと言われ、研究者からは番号で九九七九号と呼ばれた少女。だったモノ。
それから背を向けてコーヒーでも買うか、と『一方通行』は当たり前のように日常へと帰って行く。
『一方通行』が去った後、ミサカ達が訪れた。
彼女達は皆、同じ服装、同じ髪型、同じ髪色、同じ手、同じ腕、同じ足、同じ靴、同じ顔に、同じゴーグルだった。
彼女達は淡々とその場の『処理』を開始する。
誰から指示されるでもなく、誰かが仕切るわけでもなく。
まるで言葉以外で、すでに考えが伝わっているかのように動く。
その様は人形と言っても過言ではないかもしれない。
そして数十分後。
少女達は処理を終えたのか自分たちと同じ大きさの黒い袋を担いで帰って行った。
その後には何もなかった。




それを見ていたのは、黒い影。
黒いカッパに同じくらい黒いマスク。
ただ黒いそれは、さきほどまで路地にいた少女達と同じ少女を右肩に担いだまま、その場を後にした。









「ねぇ、あなたってそんなにカレーが好きだったっけ?」

なんかもう半分というか500%ぐらい引いてる『心理定規』がいた。

「何がだよ?」

「だって、あなたのそれって…何?というかカレーなの?」

「あ?麻婆カレーっていうんだが、知らないのか?」

「麻婆カレー?それが?」

『心理定規』は涙目になりながら横で普通のカレーを食べていた。

いや、食べているはずなのに、辛い。
横に座っているだけで辛いのだ。
それもこれも帝督の食べている『激辛麻婆カレー・真絶・極!伝説は2度蘇る!』というなんかサブタイトルの方が長い料理のせいだった。
帝督の手元にある、”それ”は赤い。もうこれ以上ないくらいに赤い。むしろ赤以外の言葉が思いつかない。
そしてもう既に麻婆でもカレーでもないそれはまるで自らの辛さを自己主張してやまないかの様に辛さを表現していた。
その辛さは空気中を通して、横に座っている『心理定規』の目に非常に重大なダメージを与えているのだ。
そのせいで涙で化粧が落ちないか本当に心配だった。
ふと、『心理定規』は疑問を口にした。

「あなたって確か辛いのだめなんじゃなかったかしら?」

前に一度、バイト先でもらったキムチを『スクール』のメンバーに配った際に帝督だけ手をつけなかったからだ。
確か、あの時帝督が『俺こういうのはダメだから』って言っていたはずだ。

「ああ?カレーの辛さは別腹なんだよ」

「別腹?デザートなの!?」

「馬鹿言うな。これがデザートなわけないだろ」

何言ってんだ、呆れたような表情をしている帝督に『心理定規』は安堵した。

「これは只のおかずだっつーの」

「おかず!?ねぇ、何があったの!?どうしたの?」

「いや、一昨日の夜にな。神父にこれを勧められてよ。すげー美味くてさ」

「神父?」

「ああ、なんか黒いマントに黒い修道着。あと、名前が確か言みn…」

「とにかくその神父さんに勧められたと」

「いやぁ、俺は何か勘違いしてたんだな。やっぱカレーは麻婆と共に食ってこそ意味があるんだな…」

え?何この人語っちゃってんの?大丈夫かしら?と本気で心配していた『心理定規』だった。







病院の一室、その中でも特定の人物によってのみ使用される特別な部屋がなかにはある。
VIPルームではない。
この学園都市において病院と名が付くのであれば必ずある部屋。

『実験室』。

その中心に置いてある椅子に座りながら机に向かっているのはカエル顔に医者だった。
実を言うとカエル顔の医者はあまりこの部屋が好きではなかった。
いつもならばあまり使わず、埃をかぶっているだけのこの部屋にはここ数日でたくさんの”患者”が収容されている。
これが、あの男が行っている事の末端だと言う事か…。
そんな思いがふと、カエル顔の医者の脳裏に走った。

「連れて来た」

厳重にロックされている筈の入り口から声が聞こえて来た。

『空間移動』で侵入してきたのだろう。

黒い仮面に黒いカッパ。

『多重能力者』だった。

その右肩には常盤台中学の制服を着た少女が担がれている。
遠目で見るにぐったりとしているようだった。

「準備はできてるよ?容態は?」

「一応、致命傷を受ける前には連れて来た」

なら良い、と言ってカエル顔の医者は『多重能力者』から少女を預かると細かな機器を取り付けて行く。

「大丈夫かい?」

途中、医者が『多重能力者』の姿を解いた綾峰に尋ねる。

「大丈夫大丈夫。今の所はアクセラレータにもシスターズにもバレてない。俺の変装技術と演技、それに分身への入れ替えのタイミングがうまいんだろうな。それにやっぱこの部屋が電磁波や電波を通さない構造ってのもあるんだろうけど…」

まくし立てる綾峰の言葉を遮り、

「そういうことじゃない、その左腕だよ?」

そう言って、綾峰の左腕(肘より上)を掴み、電灯の下にさらした。

「…くっ…………」

綾峰の顔が歪む。

「やはり折れているね?」

「大丈夫だ。これくらい。『肉体再生(オートリバース)』を使ってればすぐに治る」

「君はこの子が終わったら診るからね?そこに座っててくれるかな?」

「……………………わかったよ、メンドクセー」

医者の言葉に綾峰は従い、中心に置かれたパイプ椅子に座る。
そして綾峰は部屋を見渡すと、呟いた。

「まだこれくらいか…」

周りには培養機に入れられて静かに眠っている『妹達』がいた。
そのナンバーは9930から先ほど連れて来た9979号の1つ前、9978までだった。
それでもまだ足りない。
まだこれから救わねばならない。
それを思うと綾峰は気が遠くなるように感じた。

「それにしても、君も面倒なことをするねぇ?計画がまるで”成功している”かのように見せかけるためにわざわざやられに行くなんて?」

「………それ以外思い浮かばなかったんだ」

綾峰がここ数日行っていたのは言うだけならば簡単なことだった。
『シスターズの代わりに『一方通行』と戦い、”殺される”』ということ。
途中で入れ替わったり、始めから入れ替わったり。
時には死ぬ直前で黒い物体で作った分身を『座標移動(ムーブポイント)』で入れ替えたり。
それぐらい。
もちろん、本当に殺されるのではなく、黒い物体での分身が殺されるのだが。
その分身がまるで本物であるかのように見せなければならないのだ。
少しでもミスればバレる。
少しでもミスれば一方通行に殺される。
少しでもミスれば、全てがおじゃんだ。

「ま、この前ミスって右手もぎ取られた時はあやうく変装が解けるところだったよ。はは」

「笑い事じゃないと思うけどね?」

「まー、良いじゃない。良いじゃない。生きてんだからさ」

あはは、と疲れた笑いをする綾峰を見て、医者は呟いた。

「……君はまだあの子達のことを…」

「?」

「いや、何でもないよ?」

少女を培養機に入れて、医者は改めて綾峰の方を見た。

「さて、君の腕を診ようか?」








カレーをどうにか食べ終えた後、帝督と『心理定規』は駅前に向かって歩いていた。

「そう言えば、朝から気になってたんだけど…あなた最近精神系の能力者に会った?」

「ああ?どうした急に?」

帝督は訝しげな表情で『心理定規』を見る。
『心理定規』は初め、うーんと唸っていたがすぐに1人で合点して頷くと言った。

「やっぱり、なんかあったんじゃない?そんな感じがするわ」

「何だ、そりゃ?」

「ちょっと見せなさい」

そう言って『心理定規』が一気に近づいてくる。

「待て待て。どうした急に!?」

帝督は慌てて後ずさるが、背後は壁。
すぐに追い込まれた。
そして『心理定規』は帝督の顔の直前まで近づけて瞼を閉じた。
それが一瞬、キスを待つようにも見えて…

「うん、やっぱり記憶をってどうしたの?顔赤くして…」

すぐに瞼を開けた『心理定規』が訝しげに見ていたが、帝督はすぐに横へと逃げるように移動した。

「な、なんでもない!…って記憶?俺の記憶がどうかしたか?」

「私の分野じゃないし、明確には言えないけどあなた何かしらの記憶操作を受けてる感じね。しかもここ最近、かしら?」

「覚えがねぇ……いや、待てよ?あれ?」

帝督は考えるように目を閉じたが、突然の頭の痛みに呻きながら頭を抱えた。

「どうしたの!?」

「いや、まさか…ぐっ…あああああ」

そのまま倒れた帝督に『心理定規』は一瞬下部組織のメンバーに電話をしようとして、止めた。
そしてすぐにタクシーを呼び止めた。









『ぐっ!』

しかし気がつけば、帝督は倒れていた。
綾峰が帝督の背後に立った事に帝督が気づいた時には既に終わっていたのだ。
何をされたのかもわからず、いつの間に背後に立たれたのかもわからず。
帝督が周りを見ると既に他の2人も倒れていた。

『実験は…”成功”させる。どんな手を使っても』

『多重能力者』のその一言だけが耳に響いた。

だが、それでも帝督はレベル5だ。
しかもこの学園都市において二番目と言われるほどの能力者。
だからこそ、立ち上がった。

『おい、どういうつもりだ。『多重能力者』』

『お前達には関係ない』

『多重能力者』の返答は簡潔だった。

『そこの女はお前のことを知ってるみたいだったが?』

『お前も含め、ここにいる人間は全員俺の事を知ってるさ。だからこそ、忘れてもらう』

『さっきの”成功”させるってのはどういう意味だ?』

『だから、何度も言わせるな』

そう言って『多重能力者』はため息を吐き、仮面を取った。
そして帝督に顔を見せる。

『多重能力者』の顔、そこには、

『これから忘れるお前に言っても仕方ないだろう?』

2つの漆黒の瞳があった。
そこで帝督の記憶は飛んだ。







「……………うっ」

帝督は覚醒した。
目の前には天井があった。

「どこだ?ここ?」

「やっと目を覚ましたの?」

『心理定規』の声に帝督は顔を上げた。

泥パック星人がそこにはいた。

「うおっ!?」

驚いて帝督はソファから転げ落ちた。

「なによ?人の顔見て驚くなんて」

むすっと言う音が聞こえてきそうな感じで『心理定規』が言った。

「いや、そりゃ驚くだろ。そんなパックしてたら…」

「夜はお肌の天敵なの…わかるかしら?」

「はい」

すいません、とフローリングの上で謝る帝督だった。


閑話休題


どうやら気絶した帝督を『心理定規』が自分の部屋に運んでくれたらしい。
『スクール』の持っている部屋でない、という事は、『心理定規』が気を利かせて、『スクール』の下部組織を使わないでいてくれたのだろう…。

「それで?記憶は戻ったの?」

「おかげでな…にしても『多重能力者』の野郎……」

「何があったのかしら?」

『心理定規』の疑問に帝督は答えない。話すことで『心理定規』を巻き込むわけにはいかない。

「てめぇには関係ねぇよ。とりあえずサンキューな」

それだけ言うと、帝督は部屋を出ようとする。

「何でも良いけど、仕事はしっかりやってよね」

「ああ?わかってるっての。じゃあな」

帝督は玄関から出て行った。

「……やっぱりガキね」

もう少し女性の家に来たんだから何かしら反応ぐらいすりゃいいのに…と小声で呟いた。







「そろそろ、また培養機も足らなくなってきたねぇ、頼めるかい?」

「わかった。明日調達してくる」

「悪いねぇ、僕の方で調達できれば早いんだけど…流石にバレるだろうからね」

「ああ、かまわない。明日、か」










後書き?

一挙2話掲載という無理をした作者だぜ!
ぐはっ!
という魂の吐血をしながら更新するんですけど。
もし、何か誤字脱字あったら連絡よろしく!
とりあえず、これで14日までの話は終わり、残り1週間。
綾峰は『妹達』を救いきれるのか!?
あと、アイテムも動きだしたようだし。
帝督も記憶が戻って、さぁ大変。

ま、頑張れ綾峰(イイ笑顔)
(注:作者はDSです。)







今回は疲れたのでおまけはなし。
すいません。
では、また次回!







今日のひまがみ(幼児風のナレーション)

「ふと。おもったのだけれど…」

「どうしたんですか~?姫神ちゃん?」

「私みたいな家なき子を泊めてくれる小萌は本当にいい人だと思う。ありがとう」

「嬉しいです~。まぁ、別に感謝されたくてやってるわけじゃないですから良いですよ~。気にしなくても」

「でも。小萌ぐらいの年代の女性なら。家出少女とかじゃなくて彼氏とかを泊めるのが普通…」

「ぶっ!?そ、そっそんなことは無いとも先生は思いますですよ~」

「日本語がおかしくなるほど動揺してる?」

「ち、違いますよ~。あはは。あははははあはは~」

「……………私はそんな小萌を応援してる」

「……ありがとうです」



2010/11/3 はき様のご指摘により誤字の修正

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