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八月十四日 壱【一方通行編】

木山と話をした翌朝、水穂機構病院に帝督は来ていた。
研究のために資料を探したいと言って学生証を見せるとすぐに書庫資料室という部屋に案内された。
もちろん、学生証はニセモノで『スクール』の下部組織が作りあげた物だった。
電子情報化待ちの書類……その発想はなかったな、と帝督は思いながら埃だらけの書庫室を見渡した。

「それじゃ、研究頑張ってくださいね。学生さん」

書庫室の入り口から事務服を着た案内のおばさんが笑顔で言ってきたので、

「はい、ありがとうございます」

帝督はホストのような笑顔で返した。

「…………………………」

「………何だよ?」

帝督は、キモチワルイ物を見た、とでも言うような表情をしている『心理定規(メジャーハート)』を、じとりと睨むといつもの表情に戻る。

「別にー」

『心理定規』はそっぽを向いて答えるとそのまま書庫の方に向かう。

そして無造作に1つのレポートを手に取ると、舞い上がった埃を吸い込んだのかけほっけほっ、と咳をしはじめた。

「おいおいさっき貰ったマスク付けとけよ」

言いつつ帝督はさっさと自分だけマスクを付けて埃まみれの書庫へと向かって行った。
とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第43話








「それで?なんで私を呼んだのよ」

むすっという音すら聞こえてきそうな様子でむくれている『心理定規』が書類を読みながら尋ねて来た。
流石に『病院に来ている学生の付き添い』という形なので化粧はしつつも服装はシャツの上にワンピース型のスカートをはいている状態だった。
こいつは、ワンピースの服装以外持ってねぇのか?とそんな疑問を感じながら帝督は『心理定規』の質問に答えた。

「当たり前だろ。人手がいるんだよ」

ほれ、と言って帝督は目の前に広がる書類の山をあごで示す。
その答えに『心理定規』は、はぁとこれ見よがしにため息を吐く。

「わかってるわよ。それくらい。私が聞きたいのは、なんで『私』を呼んだかよ。こんなの下部組織の連中に探させれば良いじゃない」

バイトとかあるのに…、とぶつぶつと呟く『心理定規』に帝督は本棚の一段に入っている書類を全部出すとテーブルに運びながら答えた。

「この件は俺以外の奴には任せられねぇ。俺が見つけなきゃならねえんだ。だから必要以上の『スクール』の力は使えねえの」

テーブルに置いた書類の山から書類を取り出し1つ1つチェックして行く帝督の言葉に『心理定規』は慌てて尋ねた。

「待って、だったら。私は?私あなたに仕事だって言われて来たんだけど?」

「あ?暇そうだったから」

「暇じゃないわよ!」

帝督のあまりの答えに珍しく『心理定規』が激昂した。

「あなたの私用に手伝ってられる程私だって暇じゃないの?わかる?」

「じゃぁ、バイト代出すから手伝ってくれ」

「なっ!?」

「時給いくらが良い?」

「人を金さえあれば動くような人間とでも思ってるの?」

「じゃぁ、どうすりゃ良いんだよ」

帝督は適当に言いながらチェックした書類を違う山に置いて行く。

「それに、この前どっかの誰かさんのおかげで俺は代わりに仕事させられた訳だが?」

「…………………じゃぁ、昼食と夕食で手を打つわ」

「あいよ、交渉成立。というわけで頑張ってくれ」







所変わって、柵川中学の一室、第一七七支部。
白井は初春と共に明日の風紀委員夏期公募の準備をしていた。
そこに、白井の風紀委員の先輩の固法が尋ねて来た。

「白井さん、綾峰君知らない?」

「綾峰さんですの?最近は見てませんが…何かあったんですの?」

「ん~、ほらもう明日から夏期公募だから人手が欲しいのよ。それに彼の机の書類も溜まって来てるし」

固法の言葉に白井は綾峰の机に視線を向けると、天井まで届きそうな勢いで机の上、横、周り全体に置かれているもう書類の山っていうよりも紙のバリケードにしか見えない。

「あーあ、あれじゃまた、綾峰さん徹夜ですね」

初春が同情するように言い、白井もそれに同意するようにため息を吐いた。

「…そうですわね。でも最近連絡が取れないんですの。寮の方にも帰ってないようですし」

「そうなんですか?何か大けがしてるとか…」

初春が心配して嫌な憶測を立てるが、固法がそれをすぐに否定した。

「あ、ないない。きっと綾峰君のことだから夏期公募手伝わされるのが嫌でどっかに雲隠れしてるだけよ。去年とかもそうだったし…」

「そしてどっかでまたしょうもない事件に巻き込まれてるだけですわ」

「「そうね(ですね)、きっと」」

白井の言葉に2人が呆れた様子で同意し、3人でため息を吐いた。







「結局さ、サバ缶がキてる訳よ。味噌ね、味噌が最高」

そんな言葉がキャンピングカーの中から聞こえてくる。
金髪碧眼の女子高生であるフレンダはそんな事を言いながら見た目とは裏腹な和風な料理を食べていた。
その横では、

「んー、あれ?今日のシャケ弁と昨日のシャケ弁は何かが違う気がするけど?あれー?」

雑誌に出てきそうな夏物の薄い水色系の半袖シャツを着た女子高生、麦野沈利がシャケ弁をつつきながら呟いている。
2人の反対側には同じく少女が座っており、

「香港赤龍電影カンパニーがこの夏送る超ウルトラC級ホラームービー…様々な意味で絶叫しそうで逆に冷や汗が超出そうです」

前の2人などまるで気にせず、自らの世界(映画雑誌)に没頭しているのは12歳前後の少女、絹旗最愛だった。
ふと、横でテーブルに突っ伏しているジャージ少女、滝壺理后に絹旗が声をかける。

「滝壺さんもどうです?一緒に超見に行きませんか?」

滝壺はぼーっと、窓から外を眺めながら、

「………北東北から信号が来てる………」

とこれまた電波なことを言っている。
そんないつもの『アイテム』メンバー達がキャンピングカーに集合しているのはたった1つの理由だった。
trrrrrrrrrr
麦野は一瞬、呼び出し音を鳴らす携帯を胡乱な目で見て、またシャケ弁を食べ始める。
しかし、携帯はいっこうに鳴り止む気配は見せず、
trrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
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rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
rrrrrrrrrrrrrrrrrrpi「あー、もうやっかましいのよ!クソ馬鹿!!シャケ弁くらい静かに食わせなさいってのよ!」

『こいつときたら!こっちだってねぇ!連絡したいわけないでしょ!仕事よ仕事!!』

スピーカーフォンでもないのにテーブルの真ん中に置いとけば全員に声が届きそうな大音量だった。
女性の声だが、これが彼女達『アイテム』を管理する指揮官なのだ。

『最近、色んな研究所から大型の機器を盗み出してる奴らがいるから、そいつらをどうにかして解決しなさい!!』

「えー」

『えーじゃないっての!メンバーちゃんと集合してるの?集まってんだったらささっと行って来なさいよ!』

「してるわよ。とっくに。あんたの連絡遅いからもう帰ろうかと思ってたところよ」

『勝手に帰んなっての!あーもー、あんたら自分の仕事わかってる!?』

「わかってる。わかってる。学園都市内の不穏分子の削除・抹消でしょ」

『わかってんならちゃんと仕事しろー!!怒られんのはこっちなんだからね!』

「はいはーい。それじゃ仕事イッテキマス」

『だー!またやる気ない口調でこいつはーっぶつ……ツーツー』

適当な所で通話を切ると、ああ、うるさいと言った表情で携帯をポケットに仕舞った。

「そいじゃ、ちょっくらネズミ探しでもしますかね」

そう言って麦野は今度はテーブルに第一〇学区の地図を出した。
犯行現場は第一〇学区が中心に行われていて、研究所が多い。

「結局さ、これって単独犯?それとも組織の犯行?」

フレンダの疑問に絹旗が横に並べられた資料を見ながら言った。

「現場の様子だと複数の能力が使用されている形跡が超ありますし、たぶん組織の犯行じゃないですか?」

「……きぬはたに賛成」

「ま、次に狙われるとしたらここと、ここと、ここの三カ所かな?」

麦野はテーブルに広げた地図の三カ所を指した。

「じゃぁ、結局。麦野と私と絹旗の三人がそれぞれを守って、一カ所に異変があったら残りの三人が急行する感じで良くない?」

「ま、そんな所ですかね。三カ所の中心に滝壺さんを超待機させとけば、最悪他の2人が間に合わなくて逃げられても滝壺さんが来るまで時間稼ぎすれば超追跡できますし」

「…うん、がんばる」

「おーし、それじゃそう行こうか」

「それにしてもさ、結局。こんな大きな機械盗んで何するつもりなのかな?」

地図の横に置かれた資料、その中に写っている盗品と同じ種類の機械を見てフレンダが疑問を口にする。
その機械は人間が1人入れるぐらいの大きさのカプセルを有しており、説明文には「培養機」とだけ書かれていた。








「あ、これじゃない?」

「ああ?」

『心理定規』の声に帝督が書類から顔をあげる。
既に昼を過ぎ、夕刻と言っても良い時間帯だった。
空気の入れ替えのために明けられた窓から西日がさしてなかなか眩しい。
見せてみろ、と言って帝督は『心理定規』の手から書類をかっさらった。

「どれどれ?『仮想パーソナルリアリティ』?なんだこりゃ?」

「そこの被験者ってところに『綾峰唯鷹』って書いてあるんだけど」

「おお、本当だ。良し、こいつを貰って帰るか」

そう言って帝督はバックのクリアファイルに書類をしまった。

「今見ないの?」

「疲れたからな。とりあえず、どっかで休憩してからだ」

「ちょっと、夕飯は?」

「ああ、あれか。お金出してやっからどっかで適当に食え」

「なっ!?私はあなたと………」

何かを言おうとして慌てて口を閉じた『心理定規』に帝督は訝しげに尋ねた。

「? 俺と何だよ?」

「な、何でもないわよ。あなたは夕飯はどうするの?」

「ああ?そうだな…適当にカレー屋ですませるわ」

「じゃ、じゃあ。私もそれにするわ」

「? そんなんでいいの?」

「ええ。今日はそんな気分なのよ」

「………変な奴」

そう言って帝督はバックを肩に担ぐと書庫室の外へと出て行った。
『心理定規』もそれに続いて出て行った。

「………バカ」

『心理定規』の呟きが漏れた。








後書き!
今回は二話同時更新なんだぜ!
やっちまったぜw
史実よりも少し早く動き出した『アイテム』
帝督が見つけた書類の内容は?
そろそろのんびりテンポはおしまいで、これから一気に加速行くよ!
皆ついて来れるかな?
と、ハイテンションな作者が申しておりましたw



では、また次回!
ノシ

2/13 水からの世界→自らの世界
リョウ様、誤字発見ありがとうございます^^

3/17 はき様のご指摘から誤字や表現の違いを修正。
はき様、ありがとうございます^^

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