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八月十一日 肆【一方通行編】

朝、雲雀がテーブルの下にあるのを最初に見つけた。

「おねーちゃーん。シライのおねーちゃん忘れ物してる~」

「えー?じゃぁ今度綾峰に渡しておくじゃんよ~」

キッチンから聞こえる姉の声を聞きながら居間に移動した雲雀は白井が忘れていったと思われる雑誌を開いていた。
雑誌はファッション誌で、基本的にジャージである雲雀の姉にとっては完全に縁の無い物だった。
雲雀は雑誌を開きながら今まで見た事のない服装などに心を躍らしていく。
チャイルドエラーの頃が原因で漢字などはあまり読めないので、基本的に絵と図とひらがなやカタカナを使ってどうにか意味を理解している程度であった。
そして雲雀が普段は見ないような奇麗な服装に心躍らせていく中、ふととある1ページを開いた。
そこには付箋が貼られており、かなり重要な意味があるのだろう。

「『好…の相手を…とす方法!』?」
「好意の相手を堕とす方法!」と怪しい言葉と絵で書かれたそれは明らかに内容が大人向けであり、少なくとも13歳の白井が読むべき物ではなかったが、そもそも文字がしっかり読めない雲雀はあまり意味がわからぬまま読み進めていく。
その内、この内容が好きな男性が気持ちよくなる方法らしいことをなんとなく理解した雲雀はそこに書かれている内容をふむふむと読み進めていった。
ちなみに保護者である姉は気づかぬままにキッチンで皿洗いをしていた。








とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第39話








「『上位能力』…か」

ひょんな所から出た新たな情報に隠れ家から出て考えを巡らしながら歩いていた帝督は第七学区の表通りの歩道を歩いていた。
既に時間は昼を過ぎており、片手には先ほどそこらのコンビニで買ったパンの入った袋があった。
好物であるカレーパンを食べながら歩く帝督の表情はあまり明るくない。
先ほど『心理定規(メジャーハート)』から得た『上位能力』の情報から『多重能力者』の能力の秘密の一端を垣間みた気になっていたが、
(結局わかったのは『上位能力』そのものがどういうものかということだけ、か。『多重能力』っつーもの自体がそれに近いものであるのは間違いないんだが…また振り出しか)
実際、『多重能力』というものは『上位能力』の一種なのかもしれない。
それならば実際にあれほどの数の能力を使えていたことも納得できるし、「『多重能力』が存在しないという科学者の結論」に反することはない。
だが、もしそうなのだとしてもどのような『上位能力』なのかがわからなければ意味はない。
第一にそれほどの能力(ちから)があるならば何故表に出る事はないのか。
その正体である綾峰唯鷹という能力者は『多重能力』とは縁のないただの風紀委員とされていた。
一時は帝督と同じく学園都市の暗部に身を置く人間かとも思ったが、
『多重能力者』の行いは学園都市の噂になるほどに反学園都市的な動きだ。
この学園都市では『置き去り(チャイルドエラー)』の待遇はあまり良くはない。
人権という考えそのものがないと言っても良い。
実験の材料として扱われ、いらなくなればすぐに秘密裏に捨てられる。
それを学園都市では暗黙の了解としている節はある。
だというのに、それを良しとしていない『多重能力者』の行動、これは完全にこの都市の暗部に所属する人間の動きではない。
だと言うのに、それを学園都市は許している。
通常ならばすぐに帝督や帝督と同じレベル5の麦野沈利が呼ばれてもおかしくない。
いや、本来ならすぐに消されているはずだ。

なのに……「おーにーぃーちーゃーんー!!!」

「っんな!?って、あ!」

突然の背後からの衝撃に慌てて体勢を立て直そうとする帝督だったが、手に持っていたカレーパンが同じく衝撃によって手から滑った。

「くっ」

慌ててそれを取ろうとするが、とっさに出せたのは片足だけでもちろん落ちていくパンを片足で取れるはずもなく、地面に無惨な結果と靴に微妙にこびりついたカレーだけが残った。
怒りを抱きながら背後を見る。

「ひ~ば~り~。テメェかぁ。いきなり何しやがる。このクソヤロー。テメェのせいで俺の昼飯がお亡くなりになっちまったじゃねぇか!」

「ごめんね。カキネのおにーちゃん」

わかってるのかわかってないのか笑顔の碓氷雲雀が帝督の背中に抱きついていた。
笑顔の雲雀に、ため息をして怒りを抑えつつ、自らが周囲への警戒を解いていた事に気がついた帝督は若干の反省をしつつ改めて尋ねた。

「で、なんでいきなりテメェは俺に抱きついてんだ?」

「えへへ~。こういうことをすると男の人って喜ぶんでしょ」

と言いつつ雲雀は帝督の首を絞めながらぎゅっと抱きついて来た。

「っぐ!色々間違えてる!っつーかテメェはそんなアホな事をどこで覚えた!?っつーか首っ!首が絞まる!」

「もっとこうした方がいいのかな?雑誌には確か…こう、かな?」

言いつつ、帝督の首の動脈を絞めてくる雲雀に命の危険を感じた帝督は雲雀の腕をどうにか引きはがしてそのまま持ち上げる要領で雲雀を肩に担いだ。

「ぶち…殺され…てぇのか…テメェは?ハァ…ハァ」

荒い息をしながら雲雀を担ぐ帝督に周りにいた子供達の視線が痛い事に気づいた帝督は、

「何見てやがんだ。テメェら。見せもんじゃねぇぞ?っ痛!」

睨みを効かせつつドスの利いた声で子供達に言うと、雲雀が帝督の頭に噛み付いてきたのだ。

「な、何しやがる。テメェ…」

「カキネのおにーちゃん、わたしの友達をいじめないで!」

「テメェの友達?こいつらが?」

「うん。さっき公園で遊んだの」

「そうかい、んで。なんで俺に対して突然の襲撃をしてくんだ、テメェは?」

「一緒に遊ぼうと思って~」

「あー、そうですかい。そんなもんで俺のカレーパンの恨みが晴れると思うな、このヤロー」

「え、えっと。『な、何でもしてあげるからユ・ル・シ・テ』?」

「だから、そういう変な言葉ばっか覚えてくるんじゃねぇ!!」

ヒソヒソと会話をする子供達が何か軽蔑の目線で帝督を見ていた。

(……変態…)

(ロリコン…)

(…真性……)

不穏なワードが子供達の間から聞こえてくる。

「俺は普通だああああああああああああああああああああああああ!!!!」

第七学区に第二位の叫びが響いた。







「い、妹さん。どうですか?ここの紅茶は」

「はい、おいしいです。とミサカは感動のあまりに口が動かない事を悔やみながら感嘆の意を示します」

「そうですの、良かったですわ」

そう言って白井はミルクティーを飲みながら、レモンティーとケーキにいちいちリアクションを見せるミサカに心を和ませていた。
昼過ぎにミサカの後を付いていくと、最初はこれといったリアクションを見せる事は無く、淡々と歩いていくミサカの後ろ姿を見ていただけだったのだが、スープショップの前を歩いた時に突然ミサカのお腹から「くぅ」という音が聞こえて来たのだ。
尋ねると特にこれといった物を朝から食べていないらしく、

「ミサカのエネルギーがそろそろ限界であると胃及び内蔵各部が悲鳴を上げているのです、とミサカは少々恥辱を感じながら告白します」

と真顔のまま説明してきたのだった。
そこでスープに始まりアイスにクレープ、ハンバーガー、コーヒーショップにと様々な飲食店を移動しながら案内してきた。
そして現在カフェで二人分のケーキセットが届いた所だった。

「それにしてもよく食べますわね」

ミサカの食べっぷりについついそんなことを言ってしまう。
白井の言葉にミサカは特に表情を変える事なく、

「ミサカは基本的に栄養接種は点滴や錠剤だったので、食べるという行為そのものに興味があるのです」

と、クローンであるが故の施設育ちを隠す事無く説明した。

(きっと何か大きな病気を煩っていたのでは?だとするとお姉さまが妹さんの事を黒子にも話さなかったのも納得いきますし、この独特の喋り方もきっと病院育ちだからこそですわ)

しかし、勝手に早合点した白井はほろりと涙をこぼしながら、自分の分のケーキもミサカに譲った。

「良いのですか?とミサカは期待を込めながら差し出されるケーキに手を出します」

無表情なミサカだが、白井はその瞳に若干の輝きがあることを感じた。

「ええ、良いですわ。私先ほどお姉さまとお昼にデザートを食べたことを忘れていましたの」

「ですが、先ほどから奢ってもらってばかりなのはさすがに申し訳ないです、とミサカは自身の持ち合わせが足りないことも意識しつつ伺います」

「別に良いですわよ。それに友人同士でお茶をするのにお金の貸し借りなんて気にするべきではありませんわ。今度お茶をする時にでも奢ってくださいな」

「友…人ですか?とミサカは意外な言葉に目を見張ります」

「あら?一緒にお茶してお喋りする。そんな関係が友人以外の何物ですの?」

「なるほど、ではミサカは遠慮せずに頂きます」

ぱくぱくとケーキを食べていくミサカを見る白井はどことなく幸せそうだった。






「だーはっはっはっはっはっは!!!!」

くぁん、と帝督に蹴られた缶はみるみる公園の端っこへ飛んでいった。

「そら、逃げろ。ガキども!」

帝督は子供達に混ざって缶蹴りの真っ最中だった。

「くっそー、またやられた!。連続15回目…」

鬼である少年は悔しそうに蹴り飛ばされた缶を取りに走りに行く。
その途中、鬼役の少年は悔し紛れに帝督に悪態をつく。

「小学生相手に本気出してんじゃねぇ!」

「俺は外道だからな、俺の敵には容赦しねえんだよ」

「オニ、アクマ、ヒトデナシ!!」

「はっ。なんとでも言いやがれ」

「このロリコン!」

「何ツッタ?クソガキ!!」

瞬間、缶蹴りというゲームは鬼ごっこに変わった。
どどどどどどどど、という音と共に帝督が少年を追いかける。

「俺のことを変態呼ばわりするのはこの口か!」

すぐに少年を捕まえ口をつねる帝督。

「ふふふぇ~、ふぉのふぉふぃふぉん~」

「まだ言うか!」

ぎゃあぎゃあと少年と戯れるその姿にレベル5の威厳はまるで無かった。

「いつかレベル5になってゼッタイ仕返ししてやるからな!」

「はっ。潰されても良いってなら、いつでも相手になんぜ」

「そう言えば、お兄ちゃんってレベル5って言うけど具体的には何ができるの?」

「アァ?」

「そうだそうだ!そもそもロリコンの能力ってなんて言うっ痛たたたたたたたた!!」

しつこい少年のこめかみをぐりぐりと拳で挟むという処罰を与えながら帝督は答えた。

「俺の能力か。『未元物質(ダークマター)』っつー変換能力だな」

「へんかん能力?」

「あぁ、本来の物体の持つ働きを変えちまう能力って言えばいいか」

「「「「「「「?」」」」」」」

子供達はまるでわかっていないようだ。

「あー、例えば火っていうのは水をかけると消えんだろ」

「うん」

「俺の能力は水に働きかけることでその水で火を更に燃え上がらせる能力だ」

「それって使えないじゃん」

「なっ!?」

少年のあまりの結論に帝督は絶句した。

「だって水で火消せないとか水の意味がないよ」

「そーそー、第一火が更に燃え上がったら火事になっちゃうじゃん」

「うわー、帝督つかえねー」

「帝督って本当にレベル5~?」

「ロリコンだしなぁ~」

「うわー、変態か~」

小学生達の言葉に帝督の血管が一本、ぶちっという音を立てた。

「ふっふっふっふ。そうか。テメェら俺の能力が見たいっつってたなぁ。良いだろう今すぐテメェらの体で俺の『未元物質(ダークマター)』がどういう能力か教えてやるよ。っつーか、俺は変態でもロリコンでもねぇ!!」

「そうだよ!おにーちゃんは変態という名の紳士だよ!」

「違ぇ!つーか、雲雀テメェはそういう言葉をどこで覚えてくるんだ!?」

雲雀の間の手に突っ込む帝督に周りの小学生達は笑うのだった。









「そう言えば、妹さんってそれ以外の服は持っているんですの?」

カフェで一休みをしていた白井はふとミサカに尋ねてみた。

「いえ、ミサカにコレ以外の服は特に必要はないのでこの服はミサカの一張羅ですが、とミサカはホットケーキなるものを頬張りながら答えます」

「とりあえず、口に物が入ってる状態で喋るのははしたないですわよ」

「それで、何故とつぜん服の話を?とミサカは口を拭きながら注意をスルーしてみます」

「自分で言ってる時点でさり気なくないですわよ!?って食べるの早っ!!せっかくですし服を見たらいかがですか?」

「しかし、私には必要ないものですので、とミサカはお腹を押さえながら満腹であることをアピールします」

「まぁまぁ、そんな事言わずに。黒子の趣味につきあうと思って。あ、もしかしてこの後用事が?」

「いえ、ミサカは夜の八時まで特に用事はありませんので大丈夫です、とミサカは脳内スケジュールを確認して答えます」

「そうですの、では是非に!行きましょう!」

そう言ってミサカを連れていつもなら来ないような大人向けのランジェリーショップに来たのだが、

「まさか、ここまで無抵抗に着て頂けるとは…ぶふっ」

下着姿でモデルをしているミサカ妹を見て白井は赤い液体を鼻からたらしていた。

「あの、あなたの鼻の血管には欠陥があるのでは?とミサカは若干というよりかなり心配になって声をかけます」

「いえ、大丈夫ですの。あの、次はこれを着て頂けません?」

「はぁ」

しぶしぶと頷きながらミサカは新たに渡された下着と共に試着室に消える。
その間、白井の脳内会議が次のような審議に入っていた。

(これは浮気じゃないですの!?)

(いえ、今回は妹さんとの親交を深めるためのもの、他意はありませんわ!)

(その割に鼻血を盛大に吹いているようですが?)

(こ、これはお姉さまとのランジェリーショップでのデートを想定した下調べのようなもの。第一、お姉さま相手でしたら一発目でKOですわ!)

(なるほど、確かに…ぶふっ!)

(お姉さまのランジェリー姿…ぶふっ!)

(す、すばらしい!ぶふっ!)

(くっ、そんなものを持ち出すとは…ぶふっ!)

(く、待ちなさいですの、確かにお姉さまのランジェリー姿はすばらし…ゴホン、そういうことではなく、私達が審議にかけているのはお姉さまや唯鷹さんというものがありながら、お姉さまにただ似ているというだけの妹さん相手に鼻血を出すことがどうかということで)

「どうでしょうか、とミサカは新たに渡された下着に少し抵抗を覚えつつも着てみました」

そこには黒を基調としたすけすけランジェリーを着たミサカが立っていた。
羞恥というものが薄いせいかどうどうと着て、立ち尽くすその姿に黒子の脳内会議は、

((((((GJ…ぶふっ!))))))

全員一致のもと幕を下ろしたようだ。
そしてまたもぼたぼたっと白井の鼻から大量の血がこぼれたのだった。

「そもそも、服を見に来たのでは?とミサカは根本的なところに間違いがある事を指摘します」







缶蹴りもある程度収拾が着いた頃、子供達が突然帝督に群がって来た。

「帝督~、お腹減った~」

「帝督、ご飯奢って~」

「帝督奢って~」

「レベル5ってお金持ちなんでしょ~?」

「テメェら、軽いノリで初対面のやつにおやつを要求すんな」

「だって、俺ら育ち盛りだし~」

「帝督、帝督、こっち見て~」

「アン?」

子供達の一人に背後から呼ばれ、そちらを向くと。

「カキネのおにーちゃん、何でもするから、お・ね・が・い♡」

雲雀がどこからか得た知識で帝督にお願いして来た。

「………………テメェら、俺をなんだと思ってるんだ?」

「「「「「「え?ロリコンのレベル5でしょ?」」」」」」

「ハハハ、ちょっとそこでその認識について話し合わないか?クソガキども」

いい加減、なんでこんな認識ができてしまったのか真剣に聞いてみたくなった帝督だった。

「帝督~。駅前のカレー屋行こうよ~」

「カレーってテメェ。さり気なくヘビーなもん要求してくんな」

「だって帝督カレー好きなんでしょ?」

「そりゃそうだけどよ…ってなんでそれ知ってやがる」

「さっき碓氷さんが教えてくれた~」

「うん、帝督はカレーが好きで毎日三食カレーが基本のカレー好きで、カレーうどんをおかずにしてカレーライスを食べるんでしょ?」

「そんな食い方はしねぇ!つーか、両方主食じゃねぇか!おかずになるか!」

「とりあえず、駅前のカレー屋に行こうよ~」

「カレー。カレー」

「そもそもなんで、駅前のカレー屋なんだよ」

学園都市にはもっと子供向けのメニューのある店はたくさんあったはずだ、と帝督は考えながら首を傾げた。

「駅前のカレー屋で早食いを成功すると連れの人も全員無料になるんだけど~」

「失敗すると全額倍になるんだって」

「それで今まで誰も成功してないんだって」

「んで?」

「帝督ならきっとできると思う、レベル5だし!」

「なんだその三段論法にもならねぇ論理は!?」

「え~、帝督できないの~?」

「やっぱ、帝督じゃだめか~」

「仕方ないよ~、帝督だもん」

「レベル5っていうのも怪しいもんね~」

「まぁ、ロリコンだしね~」

「変態だし」

次々に言われる子供達の言葉に帝督は、

「やってやらああああああああ!!」

怒りと共に雄叫びをあげた。




その10分後、カレー屋の前で堂々と立つ7人の子供達と、帝督の姿があった。
看板には、「特大カレー早食い15分、参加可能人数は大人2名まで。15分以内に完食された方、及びそのお連れの方の料金は無料です」と書かれている。

「よーし、テメェらやるぞおおおおお!!」

「「「「「「「おおおおおお!!」」」」」」」

行き交う人々の視線などなんのその、8人は士気を高め、カレー屋に入って行った。
からんからん、と入店を知らせる鐘の音が店内に響く。

「ちくしょおおおおおおおおおおおうううえええええええええ」

どさりと、店に入った8人の前でカウンターに座っていた男性が崩れ落ちた。
カウンターには早食い用と思われる特大カレーが半分以上残っている。
少なく見積もっても3人分はあるそのカレーを見て、ごくりと一瞬気を呑まれそうになるが、それでも帝督は声を張って言った。

「特大カレーを1つ!後、半カレーを7人分!」

「あいよ!」

そう言って帝督達は席に着いた。






「まぁ、改めまして」

ランジェリーショップで血を噴き出しすぎて少々貧血気味の白井と元の常盤台の制服に戻ったミサカは今度こそブティックへと来ていた。

「ミサカは服を買う必要性がないことを再度主張します」

「良いんですのよ、こういうのは見るだけでも楽しいものですわよ」

「そうですか、とミサカは頷きながら店内を見渡します」

「あの、もしかしてですけれどお姉、いえ美琴さんみたいな子供向kごほん、かわいらしい方が良いですの?」

「? 特にミサカに嗜好はないので何でもかまいません」

「そうですの。じゃあまずは適当なとこを見て回りましょうか」

「はぁ」






「あいよ!特大カレー一丁お待ち!!」

ドン、と帝督の前に特大カレーが置かれる。
全体を見ると、こんもりと盛られたカレーとライスは少なく見積もっても3人分はあった。
見た目は基本的なチキンカレー。
周りの客達や子供達が興味津々という表情と共にこちらを見ている。

「それじゃぁ、最初の1口目からストップウォッチを動かします」

「帝督がんばれ~」

「帝督大丈夫?」

等と、口々に子供達が帝督に声をかけてくる。
雲雀は若干ながらも心配そうだったが、

「おにーちゃん、頑張ってね!」

という声援に、帝督は

「おう」

と答えた。
そして帝督はスプーンでカレーをすくうと最初の1口目を口に入れた。

「スタート!!」

「ぐ…う!?」

カレーを口に入れた瞬間、帝督の表情が歪む。

「どうしたの、おにーちゃん?」

帝督の表情を見て雲雀が心配そうに声をかける。

「が、がれ~~~~~~~~!!」

帝督は間近にあった水を口に含む。

「な、なんだこの辛さは…」

言いつつ、そのままカレーを口に含んで行く。
その度に帝督の顔が歪んでいく。
それもそのはず、このカレーが幾人もの挑戦者を叩きのめして来たのはこの辛さが最大の原因だった。
学園都市が開発した調味料の一種で、人間の感じられる辛さの限界を突き詰めたものだ。
ただ辛すぎるのではなく、”感じられる”辛さなので辛すぎて舌が麻痺するなんてことはない。
つまり、どんなに辛くても舌は麻痺せずにその辛さを常に伝えていくというものなのだ。

「ぐ、ぐううううおおおおおおお」

帝督の額に次々と滝のような汗が吹き出て行く。
それでもそのスプーンを止める事はない。
敵(カレー)は必ず倒す(完食する)。
それが第二位なのだから。






陽がだいぶ落ちて来た頃、白井とミサカはやっと外へ出て来た。

「ふぅ。色々見られましたわ」

「疲れました。とミサカは正直な感想を述べます」

「それにしても結局そんなもので良いんですの?」

「はい」

白井達が言っているのはミサカの髪に止めてある髪留めのことだった。
小さなリボンの形をしており、白井の付けている髪留めと同じ色だった。
特に高い物でもなく、安物でそれもどこにでもありそうな代物だった。

「持ち合わせが足りないのでしたら今度返して頂ければ貸しましたのに」

「いえ、これで良いのです。それに友人と一緒に買う物はこれが初めてですので」

「そ、そうですの?何か照れますわね」

ふふ、と頬を赤くしながら白井は笑った。
駅前まで雑談をしながら(白井が話すのをミサカが相づちをうつだけだが)、駅前まで歩いて来た。
駅に着くと白井の方を向いてミサカが言った。

「今日はありがとうございました。ここから私は向かうところがあるので、これで失礼します」

「あら?そうでしたの。それは遅くまで引き止めてしまってすいませんでした」

「いえ、それでは」

「あ、あの」

「はい?」

立ち去ろうとするミサカに白井が声をかける。

「また、一緒にお茶をしましょう。今日は楽しかったですわ」

「……………私もです。さようなら」

「ええ。また」

そう言ってミサカは立ち去った。







残り1分となったところで、帝督の皿にはまだ1人分のカレーが残っていた。
店の誰もがそれを見てもうダメだと感じていた。
もちろん、帝督もその1人だった。
初めはどうにか食べていられたが、その内に辛さが痛みに感じられるようになってきていた。

「ぐ、くぅううううううう」

そんな帝督相手に店主が声をかける。

「無理しなくても今諦めちまえば料金2倍はなしにしてもいいよ。そこまでがんばったのはあんちゃんが初めてだ」

店主のまさかの声に店にいた全員が驚きの表情になる。
まさかここで料金2倍というペナルティーを無効にするなんて、なんて心意気の良い店主だ、と。
それこそが、悪魔の罠だった。
罠とは、初めに無理難題を与える際に、成功時の破格の報酬と失敗時のとんでもない要求を同時に与える。
これによって挑戦者は必ず成功せねばならないという脅迫観念にかられるのだ。
そして挑戦者が失敗しそうな際に、こっそりと声をかけるのだ。

「今あきらめれば初めの要求はなしにしてやってもいいよ」

言っている事自体はまとものように感じられるかもしれない。
しかし、本来成功すれば得られた破格の報酬はなく、今回の場合は本来の値段をそのまま払わされるという状態になる。
つまり結局店は得をするのだ。
しかもこれで本来2倍払わされるはずだった挑戦者はそれを半額にしてもらえたような気になり、店側に好印象を抱く。
本来の値段を払わされている、というのにだ。
これこそが悪魔の罠の正体だ。
そして帝督も店主の言葉を聞き、気持ちはぐらりと揺れ動いた。

「本…当か?」

「ええ」

にやりと店主の口の端が歪む。

「そうか、だったら」

帝督はうなだれて手を止める。

(勝った)

店主は心の中でガッツポーズをとる。

既に残り45秒。
瞬間、帝督は言った。

「なぁ、参加人数の制限は大人2人だよな?」

「え、ええ。そうですが?」

一瞬、店主はここで誰かを助っ人にするのかと危惧するが、さすがに残り1分を切った今、大人が1人増えた所で残りの1人分を食べるのは無理だ。
そう考えた店主の顔は既に勝者の微笑みをたたえている。

残り30秒。
帝督がすっと顔を上げる。
そこには、敗者の目があるはずだった。
打ちのめされ、茫洋とした表情と共に惨敗の色を浮かべた敗者の目があるはずだった。
だが、帝督の目はまだ諦めていなかった。
店主相手に帝督は尋ねる。

「じゃぁ、子供は何人でも良いんだよな?」

「え?…ええ………え?」

一瞬頷いた後に店主は悟った。

残り25秒。
確かにルールには、大人の人数制限はあっても、子供の人数制限はない。

「そら、出番だ。ガキども!」

「「「「「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」

帝督の横に座っていた少年少女達の手が一斉に動き出す。
そしてそれぞれスプーンに1口ずつカレーをよそい、口に入れて行く。

「なっ!?」

店主もこの辛いカレーをまさか子供に食べさせるとは思っていなかったのだ。
それは店にいた皆も同じだったのか、全員が驚愕の表情で帝督を見た。
帝督は静かに言う。

「なに、確かにこのカレーは辛いが1口ぐらいなら子供でも食える辛さだからな」

そう、”常に辛くなる辛さ”であって”激辛”ではないのだ。
だからこそ、先ほどまでカレーを食べていた子供達にも食べられたのだ。

残り10秒。
最後の一口を帝督が口に入れた。

「完食だ」

店が静かになる。
皆が、誰もが店主の動きを見ていた。
なにせルールにはないとは言え、反則ぎりぎりの行為だ。
店主が怒って、ペナルティーをだしてもおかしくはない。

「…………………………………………俺の、」

ごくり、と皆が唾を呑む。





「負けだ」


がくりと店主が膝をついた。

「俺は俺の敵に容赦しねぇ。楽しかったぜ、店主。また来るわ」

そう言って帝督は子供達を連れて店を出ていった。






新年の後書き

新年明けましたね。
おめでとうございます。
作者は気がついたらハワイにいたため作品投稿ができずにやきもきしてました。
ということで前回の続きである第一位と第二位の戦いについて触れようと思い、その前の話、帝督がこの日何をしていたのか、
白井と出逢ったミサカはどんな一日をすごしたのか、
それを皆様にお伝えしようと思ったら、
三話分ぐらいになってましたorz

長いって、どう考えたって長いって。
とりあえず、現在『八月十一日 伍』を書き上げた後です。
これから『八月十一日 陸』を書き上げてきます。
俺、この日の話書き上げたら大学始まるんだ。(死亡フラグじゃないぜw)

あと、皆様は今年のクリスマスはいかがでしたでしょうか。
タイムリーなSSが上がったりと作者は楽しくクリスマスを自宅で過ごしましたが、何か?
では、改めまして皆様今年もよろしくお願いします。

追伸:リア充と、綾峰と上条はもげてしまえ。




「禁書目録とー!!」

「上条当麻のー!!」

「「とある質問のコメントコーナー!!」」

「はい、前回はお休みしてすいませんでしたー、文句や苦情は作者へどうぞ」

「今日はお手紙は何通来てるの?とうま」

「はいはい、今から出すからちょっと待っててな……あー、前回のからだけど、幾つかあるからそこから紹介するぞー」

「おー!」

「テンション高いなー。
まずは、はきさんからの質問。
『支部長に質問。
 黒子が支部長の存在に気づかずにとろけていた時のエピソードが他にもあったらちょっとしたことでもいいので教えてください』」

「じゃぁ、しぶちょうさんに聞いてみるんだよ。しぶちょうさーん?」

「あいよ~☆呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん☆」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「こらー、そこなんか悲しい物を見る目で人を見るなー☆」

「すいません、どうぞ続けてください」

「さてさて、白井さんが私に気づかずにとろけてるエピソード?え?細かいの入れたら普通に108式ぐらいあるけど?ここのスペースで足りんの?」

「えっと、とりあえずちょっとしたことで良いから教えてほしいかも」

「えーと、まずは綾峰が居眠りしてる時にこっそり寝顔を写メってたり☆綾峰がいない日に綾峰の机に頬擦りしてたり~☆後は~ぐぶでるしゃあああ!!?」

「おお、なんかものすごい勢いでしぶちょうさんが飛んでったよ?」

「ん?置き手紙だ。……………………ヨーシ、ハリキッテ次ノオタヨリ行ッテミヨウカー!」

「? どうしたの、とうま。片言になってるよ?」

「いいから、次行くぞ、インデックス。上条さんは命が惜しいのです。
次はq-trueさんから
『上条さんに質問です。
 お隣さんの綾峰が黒子と付き合っていますが、その内二人がプロレスごっこを始めようとしたらどうしますか?
 友人が中一に手を出すのを止めるべきなのか、それとも紳士的にそっとしておくのでしょうか?』」

「? プロレスごっこ?何でとうまが止めるの?」

「……ハハハ、気にするなインデックス。えっと答えはもちろん止めます。つーか、俺以外のやつらもほっとかねえだろうし。つーか、あの二人もうそこまで進んでんのか?」

「? 進んでるって?」

「はい、インデックスさんはまだまだ知らんで良いっつーか、q-trueさん、何でこんな質問を!?わざとだな!また俺を不幸に陥れてやろうとか、そういう系の質問だな!?だははははーそう毎回不幸になって堪るか!」

「どうしたの?とうま。急に叫んでびっくりしたかも」

「いや、とりあえずそろそろつっこんでおかないとこの手のお便りが止まらなそうだったからな」

「ふーん。えっととりあえずコメントは終わり?」

「おう、じゃぁ挨拶しておわっか」

「うん」

「「さよーならー」」





え、落ち?ないよ?






「ロリコン神父と~!!」

「年下好き女教皇の~!!」

「「とあるネタのカオスコーナー!!」」

「………………何なんだ、この空間は」

「さぁ、わかりません。とりあえずあなたの名前を呼ぶと『ロリコン神父』と変換されるのは確かなようですが……」

「誰かあのバカ作者呼んで来い。燃すから」

「落ち着きなさい、『ロリコン神父』。私なんて『年下好きの女教皇』ですよ」

「………まぁ、言い得て妙だな」

「何か言いましたか?『ロリコン神父』?」

「なぁ、『年下好きの女教皇』。さっきから妙にそれを連発してるけど、わざとじゃないよね?」

「いえ、単に私はあなたの名前をこうして『ロリコン神父』と呼んでいるだけですので……かく言うあなたもそれを言わないで貰えますか?」

「「……………………………」」

「さて、こうして睨み合ってても話は進まないようですし。さっさと仕事を終えて帰りますよ、『ロリコン神父』」

「……えっと『ナイムネシスター』について話すって何でこんな変換方法!?」

「『ロリコン神父』……いくら何でもその言い方はちょっと」

「違う!僕が言ったんじゃない!僕は彼女を名前で呼んだだけなのに!!」

「な、ないわけじゃないもん!!ちょっとはあるもん!!」

「『ナ、ナイムネシスター』!!?って違う!だから、名前を呼んだだけで!って何で君がここに!?」

「ゲストとして私が呼んだんですよ、『ロリコン神父』」

「グルだろ!?『年下好き女教皇』!!実は君、あの『すばらしい作者のスザク様』とグルってまたこんな変換!?無理矢理にもほどがある!!」

「『ロリコン神父』の『ロリコン神父』ー!!」

「ちょっと待って『ナイムネシスター』!!?」

「行ってしまいましたね。『ロリコン神父』」

「ふっふっふふっふっふっふふふふっっふ。燃す。いや、燃やすだけじゃ物足りない。消す。っていうかもう消し炭すら残さn「pipipipipipipi」………落ちは読めてたよ!ああ、読めてたともさ!!」

「さて、『ロリコン神父』、仕事です。さっさと行きますよ」

「結局この空間は何だったんだ?」

「さぁ、『すばらしい作者のスザク様』があなたをからかいたかったんじゃないですか?」

「………………次は絶対に燃す」





終わり。

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