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とある魔術の魔術殺し 第一話






彼女に出会って初めに考えたのはこれから起こる様々な『悲劇』を起こさない方法だった。










とある魔術の魔術殺し(リアリスト)第一話








イギリス、某所。

「~♪~~♪」

軽やかな口笛と共に、

ぐちゃ、ぐちょ、ぬちゃ、

水気のある肉をいじる音が聞こえてくる。

音の発生源がある小さな部屋は独特の臭いが溢れ、常人ならば吐き気を催すような腐臭が充満している。

部屋の中にいるのは少年で、年は13~14程。

短く切られた黒い髪に浅黒い肌、顔立ちからアジア系の人間であることがわかる。

「~~♪~♪」

口笛を止める事なく少年が行っているのは固いコンクリートでできた寝台に乗せられた死体だった。

少年はその死体の臓腑をある程度切り分けてそれらをタッパーに入れていく。

「~♪~~~♪」

鼻歌が壮大なクライマックスと共に終わると少年は解剖した死体を袋につめた。

小さい部屋に扉の付けられた冷凍保存用の冷凍室に先ほどまで解剖した臓腑を入れると少年は死体を担ぎながら部屋を出た。





「ミンゴぉ、コフラぉ?処理終わったよぉ」

二次成長で少し声が太くなり始めている声が地下通路に響く。

「あ~ん?終わった~?」「だったら~さっさと中身を冷凍室に保存~」

階段状になった地下通路のより深い部分から間延びした2つの声が響いてくる。

「それも終わったぁ。てかぁこれで今日の分は終わったからぁ、残り物見に行っていいぃ?」

「終わった~?そうか~?」「わかった~金はいつものとこ~見るのは良いけど~」

「わかってるよぉ。盗むなってんだろぉ?」

「あ~ん?」「その通り~」

声はそれっきり聞こえなくなる。

少年は地下通路の上に向かって歩いていく。

地下通路から外に出るとまだ高い陽が天窓から少年の目を刺すように輝いていた。

「~~~~~~」

少年は日差しから逃れるように天窓から目を離す。

地下通路から出た部屋はどこにでもありそうな事務所だが、そういう職業であるためか、出口のすぐ横にはシャワールームが付いていた。

少年はすぐにシャワーを浴びて服や体に付いた腐臭を落とすことにした。

髪も、顔も、手も、腕も、足も、背中も、全身を丹念に洗って腐臭を落としていく。

前に適当に洗って帰った際に姉にこっぴどく叱られたからだ。

「それにしたってぇフライパンは酷いだろぉ」

頭の痛みを思い出しながら呟くと少年は全身の石鹸の泡をシャワーで流していく。

完全にきれいになった状態で、少年は新しい服に着替えると、元の服をジッパーの付いた特殊な袋につめる。

服にも臭いが付いているからだ。

少年は袋に詰めた服をバックに入れると、事務所の奥に置かれた机を見る。

いつものように名前の書かれた封筒があった。

「…1.2.3…………8.9.10.11っとぉ」

封筒を取り、中身を確認しながら少年は机の上にある鍵を取り、事務所のもう1つの部屋へと向かった。

部屋の入り口のドアには『拾得物置き場』と書かれたプレートが磨りガラスの窓に付けられている。

封筒をそのままジーパンのポケットにつっこみ、少年はドアの鍵を開て中に入って行った。

その中にあるのは皆奇妙な物ばかりだった。

何やら常人では読めない文字の書かれた剣、奇妙な形をした髪留め、あるいは日常品のように”見える”物やら、ここにあるのは曰く付きの物ばかりだった。

「さぁて、今日はどぉんな霊装があるかなぁ?」

少年はにんまりと笑いながら部屋の奥へと進んでいった。




少年がバイトとして働いているのはとある事情で普通の墓地に入る事ができない者達のための『墓地』だった。

そこに運ばれてくるのは、何かしらの都合で死亡した魔術師、魔法使い、魔女などなど。

そして彼らが死に際に持っていた霊装はそのほとんどが持ち主以外が使うと危険のある物だったり、使い道がわからず下手に捨てても厄介なため、”とりあえず”置かれているのがこの『拾得物置き場』だった。

少年はそう言った霊装と魔術師の過去の記録を見て、どういう使い方をされたのか、どういう素材で、どのような概念をもとに作られたのか、ということを学んでいるのだ。

それ故に当然、少年は魔術師だ。

本来、このような方法は魔術師として効率が悪い。

魔術には系統がある。

学問と同じように、他人に教わり、自分で学ぶ。

そうすることで魔術師となれるのだ。

もちろん、少年にも師がいなくはない。

ここイギリスにはピンからキリまで魔術師なんてのはたくさんいる。

少年の師はそんな魔術師の中でも東洋、西洋の両方の師がいる。

だが、それだけでは足らないのだ。

それだけではあの娘を救い出すのには足らないのだ。

だから、こうして魔術師達の遺作を手に取って見て危険を承知で学ばねばならないのだ。






少年が気がつくと、既に陽が沈みかけていた。

どうやら昨日追加された霊装を研究しているうちに時間が過ぎてしまったようだった。

「やば、姉さんに買い物頼まれてたんじゃなかったっけぇ?」

そんなことを今更のように思い出した自分に腹を立てながらも慌てて部屋を出る。

事務所は先ほど少年がいた時とたいして変わっていない。

ミンゴもコフラもまだ地下通路から出て来てないようだった。

「お疲れさまぁ」

届きはしないだろうが、一応挨拶だけして事務所を出て行った。




少年は急ぐ、急がねば姉にフライパンで殴られ、空腹に飢えた妹に噛み付かれるからだ。

急がねばならない。

そう、急がねば。

少年に残されている猶予は後半年もないのだから。

『妹役』の『禁書目録』が記憶喪失になるまで後半年もないのだから。





『物語』が始まるまで後四年。

今は『幻想殺し』と『禁書目録』が出会い始まる『物語』の四年前の舞台。

少年はそれまでに起こる『悲劇』を起こさないために一人、『首輪』を壊す手段を考えていた。

それがこの『世界』の事を知って生まれ直してしまった少年にできる今の所最高の改変なのだから。

少年の名はアウル・バードン。

後に『魔術殺し(リアリスト)』と呼ばれる少年である。
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