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とある2人の初任務 四

「何て言うかっ!そのっ!不幸だーっ!!」

その少年はいつもの言葉を吐きながら地下街を走っていた。
正直、日にちが悪かったのだ。
少年は明日から高校生としての新生活を送ることになっていた。
今日は中学生最後の日だぜぇ!という普段はあり得ないぐらいのテンションの中、明らかに外れな漫画を購入したり、今まで入ったことのない地下街で食事をしてみようと歩き回ったりしていた。
気がつけば、

「待てやコラァ!」
「ぶっ殺すぞテメェ!」
「血祭りだオラァ!」

丁寧な脅し文句を聞きながら走っていた。
仕方なかったのだ。
少年が少し早めの夕飯を食べ終わり地下街を歩いていると、少女達が不良達に絡まれていた。
そこでたまには人助けみたいのもやってみるか、とついついいつもとは違うノリで彼らに話しかけてしまったのだ。
少年も喧嘩をしたことはある。
一対一なら相手の力量次第。
一対二なら良くて引き分け。
一対三以上なんて言ったら逃げるしかない。
現在少年を追っている不良達の数は8人。
逃げるが百計。
あるいは戦略的撤退とも言う。
少年はどうにか逃げ回っているが、何故か不良たちの足が異様に速い。
少年も足は速い方ではあったが、先ほど食べたイカ墨入りラーメン風納豆カレーライスが少年のお腹の中であり得ない共鳴を起こし腹痛を起こしていた。
追いつかれず、されど逃げ切れず。
そんな状況とお腹の激痛に少年は心の底から叫んだ。

「だーっ!もーっ!不幸だーっ!!」

少年の叫びは地下街に虚しく響いたのだった。








とある2人の初任務(ファースト・ミッション)~第四話~








「どうするんだ?見つかってたぞ」

「いや、見えてないはずだ。俺の能力が発動している間は俺を目視できるヤツはいない」

「だが、実際にこいつはお前を完全に視ていたぞ」

「そんな馬鹿な!たまたまだ。偶然に決まってる!」

「で、でも!『『偏光能力』か』ってこいつは言ってたんだ。俺は確かに聞いたんだ」

「まぁ、どちらにせよ。見つかったことに変わりはねぇか」

「……………どうするんだ?」

「………………燃やすしか、ないだろ」

「お、おい」

「バカ野郎。お前だっていつかはこうなるって分かってただろうが」

「た、確かにそうだけど………………」

「今まで見つからなかっただけでも運が良かったんだ。見つかったら俺は手段は選ばんと言ったはずだぞ」

「………………で、でも。こいつが確かに見たとは」

「甘ったれたことを言ってんじゃねぇ。お前も共犯なんだぞ?わかってんのか?」

「………………くっ」

「それに、こいつが俺を見てたって言ったのはお前じゃねぇか」

「そ、そうだが」

「わかったんなら、そいつをさっさとふん縛れ」

「わかった………………」







「いったい、何だったのかしら…………」

「さぁ」

地下街に来た白井と初春が大柄のお兄さんたちに道を訊ねられて答えていると何故か話しかけてきた少年によって全員どこかへ行ってしまった。

「新手の軟派じゃないですか?」

「そうは見えませんでしたけど……」

白井は初春の思いつきを否定しながら改めて端末を見直した。
端末のディスプレイに描かれた地図上では中心から少し離れたところに赤い光が点滅を繰り返していた。

「ほら、初春。急いで探しますわよ。時間もそろそろ迫ってますわ」

「はーい」

2人は白井が昼ごろ綾峰に遭遇した際に付けた発信機を頼りに追いかけてきたのだ。

「それにしても、綾峰先輩動きませんね」

初春は先ほどから綾峰を示す光点が地図上を動かないことに疑問を口にした。

「そう言われるとそうですわね……」

白井も疑問に思っていたが、逆にこれはチャンスだろうと考えていた。
なにせ、第一七七支部の風紀委員が一丸となっても捕まえられないという風紀委員。
その男が何の因果か、逃げずに一ヶ所に留まっているのだ。
白井の足が自然に速くなっていく。

「行きますわよ、初春。あの男を完全に捕らえて(私たちの)仕事をさせますわよ。ウッフッフッフッフッフッフ」

「は、はい」

白井の黒い笑みにびくりながらも初春は白井に続いて走り出した。







ぱちぱち
何かが爆ぜる音と共に綾峰は目を覚ました。

「………………ん?痛ててて」

覚醒と共に後頭部に鈍痛が走る。

「どこだここ?てか燃えてる!?」

綾峰が目を覚ました部屋は狭い部屋で物置のようだったが、そこは今全てが紅蓮の炎に飲み込まれていた。

「っくそ。これは流石にヤバいっしょ!?」

綾峰は慌てて体を起こそうとするが、体がロープでぐるぐる巻きにされていて動けなかった。

「誰もいねぇな……よし」

綾峰は『風力使い』の能力で体に巻き付いていたロープを切断した。
立ち上がると後頭部を手で確認して綾峰は頭にこぶができていることに気がついた。

「いてて、後ろからはねぇだろ。それにしても、レベル0か?………………やっぱ無能力者が感知できないってのはきついな」

気付ければ後ろから不覚をとることはなかっただろうに。

「ま、今はここから逃げ出すことが先決か」

綾峰はそれだけ呟き、物置の扉を蹴破り外に飛び出した。
しかし、そこも炎に包まれており綾峰の身に熱風が襲いかかった。
場所はどうやらどこかの事務所の入ったビルのようだ。
事務机や書類らしき物が燃えて部屋の中で舞っていた。

「どこまで燃えてんだ?確か『連続放火事件』ってぼやがほとんどだったんじゃねぇのかよ?」

綾峰は呟きながら出口を探して走り出した。








「お、おい。火が強過ぎないか?」

「いや、この地下街にはちゃんと防火設備が整ってるから目的の部屋以外はスプリンクラーが作動して燃えないはずだ」

「しかし実際このフロア全体が暑くなってきてるぞ」

「俺の計算に狂いは無いはずだ」

「おい、見てみろ。この張り紙」

「ん?『防火設備点検のお知らせ』?ってこれ今日じゃねぇか!!」

「ってことは、何か?もしかして防火設備が動いてないから……」

「ああ、本来燃やさないはずの部屋も燃えちまう!!」

「に、逃げなきゃやべぇじゃねぇか!!」

「く、くそ!!」

「ってエレベーターが動いてねぇ」

「どうするんだよ?」

「知るか!!」

「か、階段だ!!」








同時刻。

「この辺りなんですけど…………」

「建物のどれかに潜んでるんですわ。もっと索敵範囲を狭めなさい」

初春と白井は綾峰の閉じこめられているビルの前に来ていた。
そして、白井が端末のディスプレイに映った綾峰を示す光点の位置から、綾峰が目の前のビルにいることに気がついた。

「ここですわ!」

白井がビルを指した瞬間。
突然の破裂音と共に、ビルから炎が溢れてきた。

「なっ!?白井さんって『発火能力者(パイロキネシス)』でしたっけ!?」

「違いますわよ!!火事ですわ!」

初春の見当違いの言葉に白井はつっこみをいれつつ、状況を確認する。
先ほどの破裂音を皮切りに、ビルの各階からは炎と黒煙が溢れ出して来ていた。
その時、白井と初春の耳に着信音が聞こえてきた。
trrrrr trrrrr
白井がポケットから携帯を取り出して電話を取る。

「はい!白井ですの!」

『こんな時間で申し訳ないけど、白井さんって今地下街の辺りにいたりする?』

電話の相手は昼間から白井と連絡を取り合っている女性の風紀委員だった。

「はい、初春と一緒に綾峰先輩を探して地下街まで来てますわ」

『え?何で!?っていうか綾峰も地下街にいるのか!?』

「その書類があまりに多過ぎて、仕方なく綾峰先輩の力を借りることになりまして」

『そんなに書類置いといたかな……。確かに支部長と綾峰のところにたくさん置いといたけど…………ま、理由はいいや。とにかくその辺りで大規模な火事が起こって「今、目の前にいますわ」……え!?本当に!?だったら人の誘導をお願いしていいかい』

「はい!了解しましたですわ」

『近くにいる人員は出きる限りそっちに送るから、それまで2人で頑張ってくれ』

「はいですわ!」

『これが君ら2人の初任務ということになる。気を抜かず、しっかり誘導に当たってくれ!』

電話を切ると、状況をまだ理解しきっていない初春に向かって白井は指示を出す。

「初春、これから一般人の誘導に当たります!あなたはあちらの方を……「白井さん!綾峰先輩はどうするんですか!?」……!!そう言えばまだこの中にいるんでしたわね……」

先ほどより火の手は増し、よりいっそう強くなっていた。

「これって連続放火事件ですよね。もしかしてさっきから綾峰先輩の点が移動しないのは……犯人に捕まってるとかじゃ…………」

最悪の想像が2人の頭の中を過る。
白井は一瞬の逡巡の後、首を振った。

「あの方だって自覚云々はともかく風紀委員としての試験を受けたはずです。これくらいなら逃げ出しますわ。それに、私達は先輩に誘導を任されて「本気で言ってるんですか!?」…!!」

白井の言い訳の言葉は初春の糾弾の言葉に掻き消された。

「さっきから白井さん、どうしたんですか?綾峰先輩と何があったのか知りませんけど、もしかしたら綾峰先輩掴まってるんですよ!!それにどんな状況だったとしても救出に向かった方がいいんじゃないですか!?」

「で、でも……」

白井は迷っていた。
実際、綾峰の位置を示す光点はさっきから動いていない。
明らかに異常な状態だった。
しかし、綾峰は風紀委員としてあり得ないことを口にした。
そんな男を救う価値があるのだろうか…………。

「己の信念に従い正しいと思う行動をとるべし!」

聞きなれた文句に白井は顔を上げた。
そこには迷い、動かない白井とは対称的に己の信念を信じる初春の目があった。

「白井さんが前に私に言ってくれた言葉ですよ」

初春の目が見れず、白井は目をそらした。
白井から目を離すと、初春はかけ出した。

「私が見てきます!白井さんは誘導をお願いします!!」

「なっ?初春!?」

白井が止める間もなく、初春は炎に包まれたビルの中に走っていってしまった。

「………………………………私はどうすれば良いんですの?」

1人呟く白井がビルの前に取り残された。









「俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利をつかめと轟き叫ぶ!

 爆熱!ゴッドォォ フィンガー!!」

轟音と共に炎に包まれていた壁が吹き飛んだ。
そこには、神の名を持つ機体の技を『発火能力』と『念動力』の応用を使って再現した男がいた。
綾峰は回りに誰もいないのを再度確認すると、

「………………ふぅ。こういう場所にいるとつい、やっちゃうよな」

と呟いた。
普通に階段から避難すればいいものを、楽しくなってきたのか先ほどからずっと床と言う床、壁という壁をこの方法で無理矢理通ってきたのだ。
よし、と次の目の前の床を貫こうと手を振り上げた。

「俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利をつかめと「はぁ~。すっきりした~」!!」

予想外の言葉と共に、綾峰の横の扉から黒髪ツンツンの少年が現れた。

「っ!!」

綾峰は予想外の人物の登場にものすごいびびっていた。

(また!?また無能力者なのかよ!?)

しかし相手は綾峰の事には気付かず、回りの火事の状況に叫び出した。

「不良から逃げられたと思ったら腹痛で強制トイレイベント発動で、しかも出てきたら火事って………………不幸だああああああああああ!!!」

………………原作の主人公が目の前にいた。



オワタ\(^o^)/



「………………とにかくここから逃げなきゃ…………ってお前、何してんだ?こんなところで」

メーデー、メーデー。
敵軍、自軍を発見した模様。
逃げろ!逃げろ!

(いや、逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ………………って逃げなきゃ拙いって。原作主人公とか、白井黒子以上にまずいっしょ)

「…………えっと、そのくぁwせdrftgyふじこlp!!」

日本語でおk。
この綾峰、突然の状況についていけてないようだ。

「…………大丈夫か?」

上条らしき少年、完全に怪しいヤツを見る目である。

「あ、ああ。と、とにかくここから逃げよう!走れる?」

綾峰は精いっぱい誤魔化すと、自ら階段の方へかけ出した。

しかし、そんな普通の避難を許さないのが、原作主人公クオリティ。

「なっ。さっき縛っておいたのに!!」

階段の上の階から放火犯が現れやがりました。







綾峰&上条が放火犯に遭遇する少し前。
初春は手元の端末を確認しながら、建物内を1階から順に階段を登ってそれぞれのフロアに誰か残されている者がいないか確認していた。
突然の火事に1階、2階には初春が考えている以上に人が残っており、初春はそれを出口や階段へと誘導しながら進んでいた。
しかし粉塵の舞う建物の中では、中々思うように動けず、徐々に初春は焦りを感じていく。

「そう言えば、綾峰先輩の顔ってどんな顔なんでしたっけ?」

そもそも初春は綾峰に会ってないので顔を知らないのだ。

「………………た、端末を頼りに探せばきっと見つかりますよね…たぶん」

心もとない風紀委員である。
2階までのフロアに誰もいないことを確認した初春は、ついに3階にまで上がってきた。
1階2階がまだ火が強くないフロアだったのか、3階は下の階とは違い、熱波が吹き荒れていた。

「………………急いで探さないと」








「こちらですわ!押さないでくださいですの!」

白井はビルの中から逃げてくる人の誘導をしていた。

「白井さん!」

声と共に女性の風紀委員が駆けてきた。

「大丈夫だったかい?」

「あ、はい」

「初春さんはどこにいるんだい?生憎、まだ会ってないので顔が分からなくてね」

女性の風紀委員は手を目の上に置き回りを見渡す。

「その、初春ですが。中に行ってしまいましたですの…………」

白井は俯きながら答えた。

「なんだって!?何かあったのかい?」

女性の風紀委員が驚くが、白井は逆に訊ねた。

「あの、1つ聞きたいのですの。もしも、心底気に入らない方が、命の危険でそれを自分が助けられるのだとしたら、自分はどうすればいいんですの?」

「と、唐突だね」

女性の風紀委員は困ったように頬をぽりぽりと掻きながら考え出した。
その様子に白井は慌てて頭を下げる。

「す、すいません、変な事を聞いて。初春が中に入っていったの「でもね、その答えは私の中にはないよ」え?」

女性の風紀委員の答えに白井は驚いた表情で上を見た。

「君のその質問に私は答えられる。でもこれは私の答えだ。君のじゃない。君が本当の答えを欲しいと思うなら自分で見つけないと」

「風紀委員なら、行くべきですの。それはわかってますの。公私混同などせず、救うべき命を救う。でも…………私は…」

「己の信念に従い正しいと思う行動をとるべし!!」

「!!」

「君は自分の行動に迷ってるんだろう?」

「……はい」

「なら、君の信念に尋ねてごらん」

「私の…………信念?」

「うむ、君の中にはあるはずだ。さぁ、尋ねて見たまえ。君のその行動は後で悔いを残すことはないかい?」

白井は俯きながら己に問いかける。
これが正しいと思えるのか、と。
後悔しないのか、と。

「………………」

しばらく経った後、白井が顔を上げた。

「………………良い目だ。決まったようだね」

「はい。すいません。これから初春と綾峰先輩を助けに行ってきます!!命令違反だとは分かってますが」

「うむ、行っておいで。ここは我々に任せるといい」

「はい!!」

白井は『空間移動』でビルの中に入っていった。







「顔を見られたからには、もう生かしておけねえな」

「またやっかいごとか、不幸だ」

「はぁ、メンドクセー」

階段の上から言う放火犯に、階下の2人は同時に呟いた。

「ん、もしかしてそちらもやっかいごとに巻き込まれるタイプ?」

「ああ、俺は何故か1週間に1回は必ず事件に巻き込まれてさ、俺は関係ないってのに。いつの間にか風紀委員になってた」

「おお、あるある。っていうか俺の場合はとにかく不幸体質でさ。今日なんて何度不幸に見舞われたこか……って風紀委員かよ!」

「不幸体質ねぇ~。だったら俺は事件体質とでも言うのかねぇ~」

「聞けよ、お前ら!!こっち見ろっての!!」

無視してお互い話し始めた2人に放火犯が切れた。

「ったく。やるしかねぇ「よし!逃げるぞ!」って、ちょっと待てぇ!!」

「げふっ!!」

ファイティングポーズをとっていた上条は、敵前逃亡をした綾峰を慌てて捕まえた。
上条に捕まれて綾峰はぶっ倒れる。

「お前、風紀委員じゃねぇのか?俺ら放火犯だぞ!?」

「逃げるに決まってんだろ。メンドクセー。お前らだってどうせこいつとか、誰かが捕まえるさ」

上条に掴まれ、倒れたままの格好で綾峰は放火犯に言葉を返した。
綾峰の言葉に放火犯も上条も唖然となる。
これが風紀委員なのだろうか、と。

「はっ。どちらにせよ。テメェを生かして返すわけにはいかねぇんだよ。今の所、唯一俺等の顔を知ってるんだからな」

「………………はぁ、メンドクセー」

「いい加減にしろ!!あー、もー。ペースが狂う。とにかくだ。こいつの命が惜しけりゃ逃げずに大人しく掴まりやがれ!!」

放火犯が言うと、もう一人放火犯が上から降りてきた。(便宜上、この放火犯達をA、Bに分ける)

放火犯Bは髪飾りを花束の様に髪に付けている少女を肩に担ぎながら見せてきた。
髪飾りを付けている少女はどうやら気絶しているようで、ぴくりとも動かない。

「有り体に言っちまえば、人質だ。上で捕まえたのがこんなところで役に立つとはな」

「くそっ!卑怯だぞ!!」

上条が吠えるが、状況はわかっているようだ。

拳を握り締めて、立っていた。

「………………勝手にすれば」

綾峰の言葉がその場に響いた。

「「「「「は?」」」」」

「だから、勝手にしろっての。俺には関係ないし。そいつがここで死ぬんだったらそういう運命なんだろ」

「お前、何言って…………」

「だーかーらー。勝手にしろっての!!俺は『観客』!!お前らは『役者』!!『舞台』に『観客』はあがっちゃいけねぇんだよ!!どんな事件が起きても関係なく事件は誰かが解決するんだ!!俺が何やっても無駄なんだよ!!」

綾峰の唐突な言葉に放火犯たちも上条も呆然と見ていた。

「………………っち」

綾峰は舌打すると、掴んでいた上条の手を振りほどき、階下に向かった。
階段を下りていく綾峰に放火犯たちは慌てて声をあげようとするが、

「バカ野郎!!」

「がっ!!?」

真っ先に動いたのは上条だった。
綾峰を追いかけ、その肩を掴み、振り向いたところを怒声と共に右手で一喝の拳をたたき込んだ。

「てめっ「だったら何で、お前はその手を握り締めてたんだ!!?」…………何?」

綾峰は上条の言葉に目を見張った。

「何言ってんだ、お前?」

「本当にどうでも良いなら、何でお前はその手をそんなに握り締めてるんだよ!!?」

「………………」

上条の言葉に綾峰は己の手を見た。
綾峰は拳を確かに握り締めていた。
真っ白になるまで、握り締めていた。
ままならない何かを悔やむように、
届かない思いが篭っているかのように、
心に溜めていた何かを代弁するかのように、

綾峰は両方の拳を握り締めていた。

己の拳を見て止まった綾峰に上条は言葉を繋いだ。

「おまえが何であんな事を言ったのかは知らねえよ!でも本当は救いたかったんじゃねえのか!?誰かに任せるんじゃなくて、自分自身で守りたかったんじゃねえのかよ!!?」

綾峰に背を向けて、放火犯たちの方を向いた上条。
綾峰にはその背が輝いて見えた。






一連の流れを白井は階段の下から見ていた。
初春が人質に掴まっていると知り、隠れていたのだ。
綾峰の言葉に一瞬驚いて、他の者と一緒に「は?」という声を上げてしまったが、どうやら誰にも気付かれていないようだ。
綾峰が立ち去ろうとして、それを黒髪の少年が止めた。
少年の言葉に綾峰は、目を見張って止まっていたが、ニヤリと笑うと言った。

「だったら、役目奪われても文句は言うなよ!不幸体質!!」

「やってみやがれ!事件体質!!」

その時の綾峰の目は鷹の目のように鋭くなっていた。
綾峰がそんな目をしているのを見て、白井はふと、こんな目をこの人もできるのかと思った。

「お、おい!!俺達には人質がいるんだぞ!!」

放火犯が慌てるのに対し、綾峰は堂々と、言い放った。

「白井、やっちまえ」

驚くが、綾峰の能力を思い出し、即座に上の階段に『空間移動』し、

「命令しないで欲しいですわ」

憎まれ口を叩きながら初春を掴んでいる放火犯Bだけを反転させて地面に叩きつけた。

「な!?」

放火犯Aが一瞬慌てるが、にやりと笑いながら綾峰たちの方にかけ出した。
その手にはナイフが握られていた。

「くそ!!」

上条が前に出る。

同時に綾峰は”後ろ”を向いた。

「なっ!!?」

「さっきからいたのは気付いてたんだよ。コンチクショーが!!」

”誰もいないはずの空間”を思いっきり殴った。

ばきっという音と共に、そこからもう一人の少年が現れた。

放火犯Cは倒れると、そのまま気絶した。

それに驚いた放火犯Aは『空間移動』した白井が前方に現れながら風紀委員流捕縛術で倒したのだった。

「あれ?」

予想外のことに出番がなくなった上条が呟いた。







「ったく、『偏光能力』での不意打ちとか、俺には効かねぇっつの」

翌日の第一七七支部で綾峰が不敵に呟いた。
放火事件は結局綾峰と白井の手によって解決したことになった。
ビルから避難した綾峰達はそのまま病院に運ばれた。
放火犯達の身柄は警備員によって引き取られ、現在事情聴取を受けている。
黄泉川が言うには、『急に成長した『偏光能力』を試したい』とかいう理由でやっていたらしい。
綾峰達は異常がないとすぐに診断され、寮に返された。

「そんな呟きはいりませんので、さっさと仕事を続けて下さいな。綾峰先輩」

「お前も手が止まってんじゃねぇか。こっち見てる暇あったら、さっさと続きやれっての」

「お、お二人共、喧嘩しないで下さいよ~」

現在、綾峰、白井、初春の3名は昨日の事件の始末書と溜まっていた書類の処理を行っていた。

「私なんて、これ以外に寮の門限を真っ先に破ったと言われて罰があるんですのよ!?」

「知らん。てかそれはテメェの責任だろ」

「キーッ!!いつかその鼻を明かしてやりますわ!!」

「はっ。やれるんならいつでもどうぞ?お嬢さん」

「あー、もー!!さっさと仕事してください!!」

なお、この日の綾峰は初登校で上条と感動的?な再会をし、強制的に原作介入ルートを悟り、自棄になっていたりする。

「てか、支部長はどうした!!?あの女、昨日仕事してなかったってことで俺等と一緒に書類仕事じゃねぇのかよ!!?」

「あ、そう言えば、支部長から綾峰先輩に手紙を預かってますよ」

「早く言えっての………………ぶっ血KILL!!」

「なっ!?どうしたんですの?」

「この手紙見てみろ」

綾峰の言葉に従って2人が手紙を見ると、

『今日ってエンジェルモートの新作スイーツの発表日なんだよねー☆というわけで、後よろしく☆』

「「「ぶっ血KILL!!!」」」

3人の心がここに1つになった。








「そして、最後はにっくき支部長を3人でぼこって、めでたし、めでたしですわ」

夜、白井はそんな言葉と共に昔話は幕を閉じた。

「………………それでいいの?」

「きゅ~い~」

「いやぁ~。私もまだまだ新米だったってことですの」

「………………支部長は?」

「お姉さま、知らない方がいいってこともありますのよ?」

「………………………………わかったわよ」










「風紀委員として認めてあげますわ」

「え?何か言ったか、白井?」

「な、何でもありませんの!」

「?」

こんなやり取りが病院であったのは白井だけの秘密だったりする。

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