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とある2人の初任務 弐

「あんた……………流石にそれはひどいんじゃん?」

綾峰の昔話に黄泉川は半分引いていた。

「だって、仕方ないだろ?突然襲いかかってくるんだから。反撃しなかっただけマシだ」

「それにしたってダイブしてきた女の子をスルーって。しかも額ぶつけて悶絶してるの無視とか……」

「はぁ、とにかくその時は見知らぬ少女Aだったの。それにこっちは卵ぶっ壊れたんだぞ!弁償してもらいたいぐらいだ(ていうかあの頃は原作キャラだって気付いてたら即座に行方くらましてたろうし)」

「ん?何か言った?」

「別に。つうか、文句つけんなら続き話さないぞ」

食器を片づけながら、メンド臭そうに言う綾峰の後ろから、

「おにーちゃん?おはなしやめちゃうの?」

寝ていたはずの雲雀が起きてきていた。

「ありゃ?雲雀起きちまったか?」

「うん、私もおにーちゃんのおはなし聞きたい」

「ほらほら、雲雀が頼んでんだからさっさと続きを話なさい」

「………………はぁ。メンドクセー。わーったよ。話す、話します、話させていただきますよーだ」












とある2人の初任務(ファースト・ミッション)~第弐話~









「まず君に初任務を言い渡そう。この人物を探してもらいたい」

女性の風紀委員は『風紀委員名簿』と書かれたファイルを開き、白井に見せる。
そこには、しかめっ面で写る少年の顔写真があった。

「この殿方が何か犯罪行為を?」

白井の問い掛けに女性の風紀委員は大仰な態度で頷くと、

「ああ、重大な犯罪行為を犯している」

と断言した。

「それも極めて重大な犯罪行為だ。この男のせいで現在第七学区の治安体勢は最低レベルにまで落ちている」

「なっ!?」

突然の状況に白井は驚き、写真の少年を見る。
見た目は普通、と言うよりもどこにでもいそうな少年だ。
黒い髪に黒い目。
これと言った特徴がない、ことが特徴とも言えた。

「こんなどこにでもいそうな殿方が、しかも風紀委員である方が……いったいどんな犯罪行為を?」

「それは………………」

「……それは?」



「『サボり』だ」



「………………は?」

「いや、こいつの名前は綾峰 唯鷹(あやみね ゆたか)と言うんだが、普段の彼はこの支部での事務全般を行っているんだが。

仕事をほっぽって逃げ出してな。そのせいで現在我々の支部では書類が山のように溜まってしまっているんだ。

彼1人がいれば半日も掛からずに終わるのだが、我々では全員が行っても一日掛かる。

そのせいで警邏に割く人員もなくてな、第七学区の治安は最低レベルに達しているというわけだ」

「………………………………」

この支部の書類処理能力の低さに白井は呆然としていた。

「どうした?」

「あ、いえ。1つ質問がありますの」

「うむ、何だね?」

「この方を追う理由はわかりましたが、それでなぜ私が選ばれるのですの?書類処理を任されるならまだしも経験も浅い私をこの風紀委員の方を捕らえるのに充分な能力があるとは思えませんが……」

「幾つか理由はあるのだが……そうだな。まず1つに、ヤツの能力に問題があるのだ」

「この方の能力?」

「うむ、やっかいなヤツでな。こいつの能力は『能力解析(AIMリーダー)』と言う」







「ふぅ、どうにか逃げ出せたな」

謎のツインテール少女との交戦?の後、戦術的撤退を選択した綾峰は人通りの多い商店街を歩いていた。
相手は『空間移動』の能力者。人通りの多い場所では障害物が多く、いくらレベル4であっても『空間移動』しにくいだろうという判断からの選択だった。
一旦家に戻りたかったが、相手には名前と顔が割れているのだから、住所など既に把握しているだろうと考えた。
買い物袋どうすっかなー、と呟いて綾峰はふと1つの失敗に気がついた。

「やべぇ、やつのAIM拡散力場を解析してねぇ」

綾峰は買い物袋を持ったまま「はぁ」、とため息を吐きつつ頭を抱えた。
綾峰の能力『能力解析』は他人の能力のAIM拡散力場を感知、解析、干渉する能力だ。
そのため、一度でも解析した相手はすぐに判別できる。
さながら指の指紋や手の静脈のように個人によって違うものと同じように同じ能力者でも同じAIM拡散力場を持つ者はいない。
それを利用して、半径数十m以内にいる人間のAIM拡散力場を感知することで綾峰は同じ風紀委員達のAIM拡散力場を発見し器用に逃げていたのだ。
だが、今回は突然の奇襲であった事でついそのまま逃げ出してしまった。
そのため解析をしていないので相手が近くにいてもわからない。

「ったく、メンドクセー」

とにかく相手がいつ現れるのかわからない以上、下手に動くのはまずい。
相手の動きをどうにか特定できれば良いのだが………………
と、そこまで考えていた綾峰はぽんっと手を叩くと考えた事を実行するために方向を変えた。







「なんとも、無駄な能力の使い方と言いますか……」

綾峰の能力の説明を受けた白井は呆れたようにため息を吐いた。

「だが、実際やっかいなんだよ。相手にはこちらの動きがバレているから下手に近づけば逃げられるし。感知範囲外から一気にやつに近づければ話は別なんだが……」

女性の風紀委員の言葉に白井ははっとした表情になると、脳裏にひらめいたことを訊ねた。

「もしかして私が選ばれた理由のもう1点というのは『空間移動』ができるからですの?」

「お、話が早くて助かる。その通りだよ。君の能力ならヤツの能力の感知範囲外から一気に近づいて捕らえることができる。彼は感知タイプとしてやっかいな能力は持っているがそれだけだ。一度でも彼の動きを把握できればすぐに捕らえられるだろう」

「でもどうやってその動きを把握するんですの?」

「んっふっふ~。それはね~」

女性の風紀委員は楽しそうにその作戦を発表した。






激痛に額を押さえていた白井がどうにか回りを確認すると、既に綾峰はいなかった。
逃げられたか、と判断し白井は額を押さえながら風紀委員で渡された端末のディスプレイを確認する。
そこには第七学区の地図上に赤い点がピコン、ピコンという音を立てながら移動しているのが見てとれた。
trrrrr trrrrr
着信音が鳴ったのでポケットから携帯を出すと白井は通話ボタンを押した。

「はい、白井ですの」

『ご苦労様。君のおかげでどうにか綾峰に発信機をつけることができたよ』

「うぅ。そうですか。それで私は次はどうすれば良いですの?」

『うむ、先ほど渡した端末は確認したかね?』

「はい、赤い点が音を出しながら移動してますわ」

『それを半径100m以上の間を保ちながら追いかけて欲しい。ヤツの感知範囲は半径約80m。それだけ離れていれば見つかる事はない。準備が出来次第、合図をするのでいつでも確保できるようにしておいてくれ』

「分かりましたわ。先輩達はどうするんですの?」

『彼の確保に全力を出そう、と言いたい所だが。最近連続放火事件が起こっているからな。学生の安全のためにも警邏に人員を割かねばならん。だから少数になってしまうが、大丈夫だろう』

「了解ですの」

『うむ、続報を待て』

白井は携帯を切り、端末のディスプレイを見ながら走り出した。







それにしても、と目的地に向かいながら考えていた綾峰は1つの推論について考えていた。
それは先ほどの少女のこと。
リボンで留めたツインテールに、茶髪、あのお嬢様口調、そして極めつけは『空間移動』。
一瞬言いかけていた言葉が『風紀委員(ジャッジメント)』ならば、あれは白井黒子の可能性が高い。
もしあれが白井黒子なのだとすると、

「メンドクセーなぁ」

綾峰は思ったままを呟いた。
白井黒子と言えば、御坂美琴の後輩にして崇拝者。
そして原作でも主役を張ったほどのメインキャラクターだ。
そんなキャラに関わったら原作介入なんていうメンドクセーことをしなければならなくなる可能性もある。
もしかすると初っぱなの禁書目録の話から関わるハメになるかもしれない。

「ったく、メンドクセーよ」

つい、呟きがこぼれてしまう。
ぶっちゃけてしまえば、綾峰は原作介入なんてしたくないし、するつもりもない。
科学側はもちろんのこと、魔術側にだって関わりたくない。
それに上条という主人公がいればこの世界はどうせハッピーエンドに進んでいくだろう。
そもそも綾峰は『観客』なのだ。
そしてこの世界が『舞台』であり、そこで生きるキャラクター達は『役者』だ。
だからいくら『役者』が危なかろうと、『観客』は原作という『舞台』にあがってはいけないし、あがらない。
だから下手に『舞台』に上がってハッピーエンドが崩れてしまっては元も子もない。
だから、綾峰は常に『観客』だった。
もちろん置き去りの事以外『舞台』に上がるつもりはない。
どうせ、綾峰『観客』がいようがいまいが、誰か『役者』が解決するのだろうから。

ふと、その時だった。

近くにあったいそべ銀行から爆発音が聞こえてきた。







同時刻、綾峰の後方を歩いていた白井のポケットから携帯の着信音が聞こえてきた。
trrrrr trrrrr

「はいですの」

『緊急連絡だ!!いそべ銀行で強盗事件が発生した。学生によるものらしいが、近場にいる風紀委員は急行せよとのことだ。君は新入りだが、君の能力なら大丈夫だろう』

「は、はい!」

『綾峰がすぐ近くにいるはずだ。指示を仰いで行動するように。逃亡中とは言え、ヤツも風紀委員。仕事くらいはするだろう』

「分かりましたわ!!」

白井は勇んで応えると、ポケットから風紀委員の腕章を出して右腕の袖に付け、綾峰のいる方向に走り始めた。






「ったくメンドクセー」

綾峰は呟きながら、逃げ出す犯人達を眺めていた。
犯人達は停めていた車(盗難車だろう)を使い、逃げようとしていた。
強盗犯達の様子を見るに顔を出しているという事は防犯カメラにばっちり写っているだろう。
彼らがどこに逃げようともどうせいずれ警備員(アンチスキル)達に掴まるのだろうし、今ここで綾峰がすべきことはあるまい。
そう判断し、綾峰はその場を後にしようとする。
その時、

「綾峰先輩!!どこに行くんですの!!?」

「あん?」

聞いた事のある声に振り返ると、先ほどの少女がいた。
右腕の裾には風紀委員の腕章が付けられている。
どうやら白井黒子であっていたようだ。

「どこって帰るだけだけど?」

綾峰の平然とした回答に白井は驚愕を隠せないまま叫んだ。

「なっ!?目の前に犯人がいますのよ!」

「別に、もう逃げられちまうし。顔を隠してなかったところをみるとどうせ中で防犯カメラに写ってるだろ。第一、俺に彼らを止める手段なんてないしな」

「………………………………」

白井は絶句していた。
目の前の男が何を言っているのかわからないという表情がありありとそこには出ていた。

「それに、俺じゃなくとも、誰かが解決してくれるさ」

「!!」

それが決定打だった。

「………………………………………………………………ません」

俯いた白井が何かを呟く。

「ん?何か言ったか?」

綾峰が訊ねると白井は顔を上げて目に涙を溜めて言い放った。



「私は貴方を風紀委員(ジャッジメント)だなんて認めません!!」



「あっそ」

綾峰の答えはそれだけだった。

「え?」

言った白井の方が呆然としてしまう程に綾峰はその言葉を当然のように受入れていた。

「別に俺はなりたくてなったわけじゃねぇしな。お前みたいな新米にはそう思えるだろうよ」

それに、と綾峰は言葉を繋ぐ。

「俺、あの腕章無くしちまったしな。……あれ?どこやったっけ?」

「………………なっ……なっ………………」

白井は愕然とした。
怒りを通り越して呆れてしまったのだ。
この目の前の男が自分と同じ風紀委員だと信じたくなかった。
いや、信じられなかった。

「ほんじゃ、俺はこれで帰るから。奴らにもさっさと仕事終えて帰るように言っとけよ。ったく人を追い回す時間あったら仕事しろっての」

綾峰はそれだけ言うと去っていった。
白井は何もせず、それを見送った。

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