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とある2人の初任務 壱

「そう言えば、2人の出会いってなんだったの?」

「あ?」

突然の黄泉川の質問に綾峰はケーキにラップをかける手を止めて聞き返してしまった。
雲雀の誕生日会が終わり、雲雀は疲れて眠り、白井は門限で帰った後のことだった。

「だからあんたと黒子ちゃんの出会いだってば」

「何でそんなもんをお前に話さなければならないんでしょうか?というか俺としてはこのケーキの山をどうするんだと逆に問い質したい!!」

綾峰はキッチンを指差す。
そこには数十個のホールケーキの山が積まれていた。

「というか、黄泉川。どこでこれだけのケーキを買ってきたんだよ?」

「……………………?」

「何だその『何を言ってるんだこいつ。え?馬鹿なの?死ぬの?』っていう表情は!?」

「実際思ってるじゃん」

「酷いな、おい!!何か!?お前はこれらを全部自分で作ったというのか!!?」

「当たり前じゃん」

「嘘だ!!?この炊飯ジャーしかないキッチンでこれだけの、しかも1つも同じ種類がないケーキの山を作るなんて!!!不可能だ!!」

「でも、ほら。そんなことを言ってるうちに新しいケーキが」

ぴ、ぴっぴぴ。
電子音と共に先程まで稼働していた炊飯ジャーが止まる。
綾峰が中を見ると、

「なんでミルクレープができんだよ!!?湯気出てたよな!?それに何故新たに作った!?」

あり得ない現象につっこみをいれる。

「心意気?」

「首を傾げるな!!第一、お前が首を傾げても可愛くない!!!」

「んなっ!?………………誰が勿体ない女だぁああああああああ!?」

「そこまで言ってない!!」











とある2人の初任務(ファースト・ミッション)~壱話目~









四月某日。


春うららな日差しが窓から入る昼過ぎ頃。

『風紀委員活動第一七七支部』

すりガラスの窓がついたドアを見上げながら白井は真新しい制服に身を包んで立っていた。
目の前にある扉の先にあるだろう新しい職場に期待と不安に胸が高鳴っている。
白井はふと、視線を右腕にずらす。
視線の先にあるのは右腕の袖に付けられた真新しい腕章。
えんじ色を基調とし、盾をモチーフにデザインされたシンボルマーク。
銀行での強盗事件を解決し、地獄のような書類処理法の伝授と共に新人研修を終えた白井は担当されていた先輩から直接この腕章を受けとったのだった。
晴れて風紀委員(ジャッジメント)となった。

(己の信念に従い正しいと思う行動をとるべし!)

胸に思い浮かべた風紀委員としての心得を胸に、唾を飲み込んだ白井はきっと前を向くと目の前にあるドアノブに手をかけた。








「この度第177支部に配属された白井黒子ですの!まだまだ若輩者ですが、よろしくお願いします!!」

「そう。じゃ、これよろしく」

「あ、はい?え?」

精いっぱいの声を出して挨拶をした白井の手に置かれたのは書類の山だった。
白井は驚いて回りを見るが、事務所内では風紀委員達が男女関係なく机に向かっていた。
白井はあまりの状況に唖然として近くにいた風紀委員に声をかける。

「あ、あの…………これは?」

「ん?ありゃ、新人さん?」

「はい」

頷く白井を見て、黒髪ショートの女子高生の風紀委員は腕を組んで考えるポーズを取ると、

「能力は?」

と訊ねてきた。

「て、『空間移動』のレベル4ですの」

「うむ、素晴らしい!!」

大仰な様子で頷くと、女性の風紀委員は満面の笑みで他の風紀委員達の方を向くと、

「おい、皆!!我々にメシア(救世主)が現れたぞ!!」

とんでもない事を口にした。

「なっ!?えっ!?」

驚く白井にその場にいた風紀委員達全員の視線が集中する。

「君、名前は?」

「し、白井黒子です」

「白井さんの能力は『空間移動』だそうだ。しかもレベル4!」

「「「「おおおおおお」」」」

一斉に感嘆の声が上がり、

「これで野郎を捕まえられる」

「あなたこそ、メシアだ!!!」

「ふっふっふっふっふ。今度こそアイツに………………」

などと、不穏な声が事務所の所々から聞こえてきた。

「よし、作戦を立てよう!!」

「まずは誘導、確保、拠点の3グループに分かれて」

「いや、買い出し班も必要だ」

「何でだよ!?お前は単に食いたいだけだろうが!」

「もちろんあんパンの支給もあるんだろうな!?」

「食いついちゃった!?」

口々に声を上げる風紀委員達に圧倒されながら白井が見ていると、

どんっ

と、机を叩く音に全員が静かになった。
音のした方を見ると、黒髪長髪の女性の風紀委員が机の上に立っていた。
きりりとした顔に、自信に満ちた表情、白井は一目見て彼女がこの支部の支部長なのだろうと理解した。
机の上に仁王立ちした支部長は、目を見開くと支部の全風紀委員に言い放った。

「貴様等!!もちつけ!!」

「「「「「………………………………」」」」」

「………………貴様等!!落ち着け!!」

支部長の顔から耳まで真っ赤に染まっていた。

「支部長、恥ずかしいなら微妙なネタをふるのやめてください」

「てか、支部長!!机の上に仁王立ちするのやめてくださいっていつも言ってるじゃないですか!!」

「あんたそれでも風紀委員なんだから風紀を乱さないで下さいよ」

「スカートの中が丸見えなんですが…」

「………………べ、別に見せたくて見せてるわけじゃないもん!!」

「「「「「当たり前です!!」」」」」

「うぅ、皆がいじめる~」

いじいじと、椅子に座り直した支部長は机に倒れ伏した。

「とりあえず、冗談と支部長はおいといてどうする?」

「白井さん、だっけ?に説明したら~」

1人の提案に全員の視線が白井に向いた。

「あ、あの?」

突然の状況に白井は後ずさる。
先程、白井と話していた風紀委員が声をかける。

「えーと、白黒さん?」

「白井です!!」

「ありゃ、間違えたか。失敬失敬(笑)」

笑いながら女性の風紀委員は近くにあった棚から、『風紀委員名簿』と書かれたファイルをとり出すと、ぺらぺらと捲り、目的のページを開いた。

「まず君に初任務を言い渡そう。この人物を探してもらいたい」

そしてページの右上に貼られた写真を見せて任務を言い渡した。











「くっあ~」

欠伸をしながらのんびりと綾峰唯鷹はスーパーからの帰路についていた。
今日は卵が安かったなー、などと主婦なことを呟く。
服装は黒のシャツに濃い緑色の学生服。
中学のもので、高校の入学式がある明日からは着ないので着収めとして着ていたのだ。
それにしても、高校の入学式か………と綾峰は呟いた。
その呟きにはどこか感慨のようなものが含まれていた。
突然だが、綾峰唯鷹は転生した人間だ。
生前は二十代前半で死んだこと、その人生が暗く下らない人生だったことは覚えている。
前の高校の入学式では新鮮な気分で楽しめたのだが、今回はどうにもそんな気分ではなかった。
2度目の入学式、どうせ前回の焼き増しとさして変わるまい。
その思いにはこの世界のことが小説として書かれている世界から来たのも理由の一つかもしれない。
起こりうる未来が分かっている世界。
そんな世界で貧乏くじ(原作介入)などまっぴら御免だった。
幸いな事に原作のキャラで関わったのはたったの2人。
それも黄泉川愛穂と、カエル医者という脇役も脇役のキャラクター達。
このままうまくいけば原作と全く関わらずにイケるんじゃないかとも思えた。
第一、原作に関わったらきっと綾峰では死ぬだろう。
いくらAIM拡散力場が見えたり、『多重能力』まがいの能力があるとはいえ、唯のレベル3。
原作のレベル5やレベル4なんてやつらに立向ってしまったら勝てるはずはない。
ましてや、AIM拡散力場を放出しない魔術師なんて瞬殺されるのがオチだ。

(とりあえず、平穏無事に生きたいなぁ)

これが綾峰の思いだった。
それに綾峰にとって学園都市の裏側など、チャイルドエラーだけで充分だ。
『多重能力者』としてチャイルドエラーを救う。
それだけでも充分疲れるのだ。
魔術やら原作やらに関わってる暇なんてない。

(ま、どうでもいいか)

いつもそこで綾峰の思考は止まるのだった。



その時、後ろから声が聞こえた。

「やっと見つけましたわ」

特徴的な口調に妙な感覚を覚えつつ、それを明確にしないまま綾峰は振り返る。
そこには常盤台中学の学生服に身を包んだツインテールの少女がいた。
まだ小学生か、中学生にでもなったばかりだろう。

「………………どなた?」

「私、この度ジャ…ってそんなことはどうでも良いですわ!!」

何か言いかけて途中で少女は慌てて言い直す。

「綾峰唯鷹さんで良いですわね?」

少女の自信満々の口調での問いに、

「いいえ、違います」

即答した。しかもまるっきりの嘘を。

「え!?ち、違いますの?」

予想外の返事に少女は動揺する。

「俺は山田一郎という普通の一般人ですよ」

「そ、そうでしたの。引き止めてしまって申し訳ありません。顔写真しかなくて、間違えてしまいました」

「気にしてませんよ。それじゃ」

そう言うと綾峰は堂々と、ダッシュで逃げ出した。
少女は初め驚いた表情だったが、慌てて顔写真をとり出すと。

「ま、待ちなさいですのー!!」

綾峰を追いかけ出した。

「騙される方が悪いんだよ、バーカ」

夕方の人が増え出した路上を走りながら綾峰が挑発する。

「んなっ!?きーっ!とりゃああ!!」

少女は感に障ったのか大声を出すと瞬間的に綾峰の真上に飛び込んできた。

「げっ!?『空間移動能力者(テレポーター)』!?」

綾峰は慌てて落ちてくる少女を避けようとするが、回りにいる通行人と両手に下がった買い物袋が邪魔で思うように体が動かせなかった。
それを見逃す少女ではない。
即座に上空から綾峰の背中にダイブしてきた。
しかし綾峰も馬鹿ではない。
即座に買い物袋を手放すと人ごみに飛び込んだ。

「なっ!?はぅ!!」

そのままゴツンという良い音と共に少女は地面に額から落ちてしまった。

「~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

声にならない悲鳴を上げて転げ回る少女を他所に綾峰は買い物袋を持つとそのままダッシュでその場を後にした。

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