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八月六日 四【狂乱逢引編】

正午、第五学区と第十八学区の境、第五学区側。
人通りの多い表通りから少し外れた路地裏に赤い車が停めてあった。
中には白衣を着た中年の男がいた。
外見は目立たず、どこにでもいそうなその男は憎々しげにその凡庸な顔を歪ませていた。

「くそっ」

悪態をつく男、蛇縞隼の視線は表通りに向けられていた。
表通りでは第五学区と第十八学区の間で検問が行われていた。

(誘拐のことがバレたのか?いや、だとしても何故第五学区と第十八学区の間に?)

考え込む蛇縞は、とある怪造タクシーの運転手がトラブルに巻き込まれ、車に乗れない警備員(アンチスキル)と共に学園都市内を法定規則を超えた速度で走り回って指名手配されていることを知らない。
もちろん、この話とは何の関係もないのだが…………。
そんな事も露と知らない蛇縞の頭の中では悲観的な想像が止まらないでいた。
その顔には焦燥が浮かんでおり、額や首回りには脂がてかてかと輝き滝のような汗が流れていた。
蛇縞は後部座席で静かに寝息を立てている少女を見て呟いた。

「こいつを第十一学区まで連れて行けば、元の立場に戻れるんだ…………」

欲望をそのまま表情に浮かべ、蛇縞は地図を取り出すと別の経路を考えだした。
そして多少遠回りにはなるが第七学区を通り抜けていく道を見つけ、車を発進させた。
蛇縞は、ガソリンのメーターを見て針がEに近づいているのを見て途中でガソリンスタンドに寄らねばと考えていた。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第29話









第五学区、ファミリーレストラン。

「まだ見つからないのか…………」

ファミリー席に座っていた半蔵が携帯の画面をにらみつけていた。
メンバーを第五学区中に散らばらせ、焦る半蔵を落ち着かせるために一度軽い食事をする事になった3人はファミリーレストランに来ていた。
携帯の画面に映っているデジタル時計は12:30と表示していた。

「……焦っても仕方あるまい。まずは仲間を信じて待つのみだ」

陰鬱な声で駒場が半蔵を諭す。

「実際、あの子を狙ってるデモンズは全員のしたんだから大丈夫だって」

浜面も半蔵を励ますように言う。

「………………それもそうだな…………それにしても浜面、その泡が固形物になっている液体は何だ?」

浜面の席の前にはコップが置かれており、浜面がドリンクバーを頼み自ら持ってきたものだった。

そしてコップの中には黒い液体が入っており、ぶくぶくと泡を立てながら泡が固まっていた。

「? 特製ドリンクだ。集中する時とかにいいんだぞ」

浜面はそう説明して、飲むか?とコップを半蔵に差し出した。

その顔に悪意はない、だが、

「いや、俺はいい」

何か、忍者的な何かが半蔵に警告を感じさせてコップを受けとるのを拒絶させた。

「……ならば、俺が頂こう」

駒場が陰鬱な声を出しながらコップを受けとる。
そしてコップの中身を口にすると、

「……ぐふっ!」

どさりと、駒場が倒れてテーブルに突っ伏した。

「な!?リーダー!!? おい!浜面!何を飲ませたんだ!!」

それを見て慌てる半蔵の問いに、浜面は軽く答える。

「え?いや、コーラとコーヒーを混ぜたものだけど?」

「まさかのカフェイン飲料同士ッ!?」

「……苦過ぎる…………これが人生の味か」

駒場は黒い液体を一筋口から垂らしながら、呟いた。

「リーダー、意外と平気だろ? つーか、これそんなに苦いか?」

浜面は首をかしげ、コップの中身をぐびぐびと飲む。

「……お前こそ次代のスキルアウトのリーダーに相応しい…………ぐふぅっ!」

駒場は今度こそ力尽きた。
その時、床に置かれた幾つかの携帯の1つから着信音が鳴った。
それに気付いた半蔵はすぐに出る。

「こちら半蔵。何か見つかったか?」

『第七学区で捜索してたんだが、ガソリンスタンドで写真の子と見られる女の子を発見した。運転してるのは白衣を着た男だ』

「スキルアウトではなく、白衣ってことは研究員か?」

『ああ、そうみたいだ。隙を見て奪還してみる』

「わかった。第七学区と言ったな。俺等もそっちに向かう」

『了解』

半蔵は通話を切り、立ち上がる。

「半蔵、第五学区はいいのか?」

黒い液体を飲みながら浜面が半蔵に問う。

「これだけ長い時間スキルアウトを使って探しても情報の1つも見つからないんだ。それなら少しでも情報があった第七学区に移動した方がいいだろう」

「わかった。おい、リーダー?起きろー」

「……ぐっ……俺は寝ていたのか? いったい何が……」

駒場は一瞬先ほどの記憶をなくしていた。

「移動だとさ。俺先に行ってアシ用意しとくよ。じゃな」

先に浜面が出て、それに続いて半蔵が出て行く。
駒場は金を払い2人に続いて出て行った。
それを見ていた少年達がいたのを3人は気付いていなかった。





10分後、12時40分。

prrrrrrr
紅い服の少年の携帯が鳴る。
少年はポケットから携帯を取り出すと、ディスプレイにある相手の名前を見て舌打をしながら通話ボタンを押した。

「おう、どうした?」

『私よ、指令だって』

携帯の向こうから女性の声が聞こえてくる。

「っち。今日はどんなゴミを掃除すりゃ良いんだ?」

『今日はゴミ掃除じゃなくて、ある物の回収らしいわ。対象については既にデータを送ってあるからそっちを確認して。たいしたことなさそうな指令だし私はいらないわね、と言うわけでよろしく』

「おいおい、てめーはサボりか?」

『違うわよ、私だってやることがあって忙しいのよ。どっかの誰かさんみたいに一般人を半殺しにする暇はないわ』

「ったく、どっからそういう情報を仕入れてくるんだか。メンドクセェな。わーった。さくっと終わらせてくる」

『話がわかるわね。それにしても、今日はどうしたの?翼を展開した上に、一般人を半殺しにしただなんて普段のあなたらしくないわね。何、服にジュースでもかけられたの?』

「………………」

『あれ?図星だった?』

「うるせぇ。これ以上用がねぇなら切るぞ?」

『ふふ。ま、いいわ。それじゃ』

そう言って女性は通話を切った。

「たくっ。メンドクセェ」

そう言って、学園第2位は端末の画面を見る。
指令の内容は至って簡単でとあるメモリーチップを元研究員の男から奪ってこいというものだった。

「ったく。この学園都市に7人しかいないレベル5をこんな事にこき使うとはな……ムカついた。さくっと仕事すっか…………」

所持者、蛇縞 隼と端末には書かれていた。





同時刻、第七学区のガソリンスタンド。

(それにしても、このシステムを得られたのは不幸中の幸いだった)

手洗い場の中で蛇縞はにやりと笑っていた。
ガソリンが満タンになるのを待つ間、急に用を足したくなった蛇縞は手洗いを借りていたのだった。

(あのデータと学習装置さえあれば誰にだって能力開発もできる。それをアメリカかロシアあたりに売り渡せばかなりの金になるはずだ)

蛇縞は知らない。
蛇縞の持つそれがかつて”とある理由で”欠陥品として廃棄処分にされたことを。

(雲雀をその実験体として連れて行けば私の価値はかなり上がるはずだ。それに雲雀の能力は学園第1位の能力に近い。これほど良い実験体はいない。ふふふ、あーはっはっはっはっはっはっはっはっは)

そして、手を洗い外に出た蛇縞はあることに気がついた。

「あ、車がない」







同時刻、第七学区の路上。

「よっしゃぁ、成功だ」

「意外にうまく行くもんだな」

蛇縞の車を盗みだすことに成功したスキルアウトのメンバーである3人の少年達は歓喜に震えていた。

「ついでに財布も貰ったし」

助手席に座り蛇縞の財布を持っている少年は笑いながら財布の中身を改め出した。

「おいおい、俺等は車上荒らしじゃねぇんだから。やめとけって………………ん?」

後部座席に座り、雲雀の横に座っていた少年が助手席の少年に苦笑しながら注意していると雲雀の横にメモリーチップが落ちていることに気がついた。
そこには子供向けのハヤブサのシールが貼られており、少年は雲雀の物だろうと考えて雲雀の横に置いてあったポーチに入れた。
そのメモリーチップの裏には、

『幻想御手』

と書かれていた。





10分後。
赤い車は路地裏で電柱にぶつかり動かなくなっていた。

「げほっ。げほっ! てめぇ運転できねーんなら初めから言え!この馬鹿!」

「いや、運転に必要なのはほら、カードじゃなくてスキルだしさ」

「スキルがないヤツが言うな!!それにそれは浜面の台詞だろ!」

雲雀を車ごと盗んだスキルアウトの少年達だった。
車を運転し、路地裏にある彼らの秘密基地に向かう途中、運転手だった少年が事故ったのだ。
幸いにも彼らに怪我はなく、車は動かなくなったがどうにか走ることはできそうだった。
雲雀はその内の1人の少年によって担がれていた。

「とにかく、リーダー達と合流しなきゃ」

「そうだな」

そう言って3人は路地の更に奥に歩いていった。






更に10分後、時計の短針が1を指し、13:00になった時、半蔵達は第七学区の路地裏を自動車で移動していた。
運転しているのは浜面だった。
第七学区の秘密基地に向かって移動している途中だった。
駒場は助手席に、浜面は後部座席に座っている。
その時、半蔵の手元にあった携帯から着信音が聞こえてきた。
先ほど第七学区から連絡してきたメンバーがかけてきた携帯と同じ携帯だった。

「ああ、半蔵だ。どうした?」

『た、助けてくれ!リーダー!アイツが出たんだ!』

「ど、どうした!?」

予想外の切迫した声に半蔵も驚いて声を上げる。

『よ、黄泉川の妹は助けたんだけど……出てきやがったんだ!アイツだよ。何でこんなところに現れたのかわからねぇけど!デュ………………プーーーー』

「くそっ!」

半蔵は慌てて携帯をかけ直すが、相手は電話には出なかった。

「……どうした?」

「黄泉川の妹が危ない………後、仲間が」

「……半蔵。仲間がおまけになってるぞ?」

「そんなことより!急がないとやばいんだ!」

慌てる半蔵に、

「まぁまぁ、落ち着けって」

意外にも浜面が声をかけた。

「浜面?」

「……なんだ?」

「前見てみろって。どうやら間に合ったみたいだぜ」

2人が前を見ると、偶然にもそこには先ほど電話してきたメンバーとそれに向かい合う、黒い仮面と黒い合羽に身を包んだ人間がいた。


「………『多重能力者(デュアルスキル)』だと?」

駒場が戦慄を感じながら呟いた。

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