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日六十月七

それは銀行強盗事件が起きる少し前のことだった。
下校中にクレープを買っていた御坂と白井が初春にあった時。

「それにしても風邪が辛いなら休んだ方がいいんじゃない?どうせ夏休みまで後数日だし、授業だってやってないんでしょ?」

御坂はそういうと、どれ…、と言いながら初春のおでこに手を伸ばした。

「うわ、結構熱あるじゃない」

額に押し当てた自分の額で熱を計った御坂が心配そうに言うと、

「でも、風紀委員(ジャッジメント)の方が忙しくて」

初春は忙しさを理由に大丈夫だと言った。
そこには同僚(白井)から送られる殺気で冷や汗が出ている。

「最近、能力者の事件が多くて」

「へぇ、そうなの?」

「ええ、虚空爆破事件や連続発火強盗ですとか…」

「それに偽多重能力者事件とかですわ」

白井が言った言葉に御坂があれ?と首を傾げた。

「黒子、今あんた『多重能力者(デュアルスキル)』って言ったの?」

「ええ、そうですわ。本来脳への負担が大きすぎて実現不可能と言われてる、あの『多重能力者(デュアルスキル)』ですわ」

「一種の都市伝説ですね。最近第一〇学区の研究機関がいくつか機能停止してるんです」

「それが何か関係があるの?」

「何でもその『多重能力者(デュアルスキル)』が研究機関という研究機関を潰して回っているとかで、噂になっていますわ」

「へ~、初めて聞いたわ。でもそれなら手配とかされるんじゃないの?」

「それが一向に手配されませんの。まるで研究機関の方から隠されているかのようでして、被害届もありませんのよ」

「それにその『多重能力者(デュアルスキル)』はあまりに多くの能力を使うため、特定できないとまで一部では言われてるそうなんです」

「そこに便乗した能力者達が『多重能力者(デュアルスキル)』を騙って犯罪に手を染めてるんですの」

「あれ?白井さん」

「何ですの?」

「あそこの銀行、何で昼間から防犯シャッターなんか下ろしてるんでしょうね」

初春がそう言った瞬間、防犯シャッターが爆発した。






とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第2話







銀行強盗事件が解決してから数時間後、夏に近づいてきたために生ぬるい空気が既に夜中の学園都市に蔓延していた。
その学園都市の一画で頭から足下まですっぽりと覆われた黒の雨合羽を羽織った男が歩いていた。
男の目前には白く人気のない建物が並んでいる。
ここは第一〇学区、学園都市内に唯一墓地が存在する学区だ。
だが、この男の目的は墓地ではない。
男が入ろうとしていたのは白い建物の一つで、それは研究所だった。
研究所の入り口にいた警備員の1人が男に気付き呼び止める。

「君、ここは立ち入り禁sっぐっあああああああああ!?」

男の肩に手を置いた瞬間、男が警備員の腹に手を当てて電気を流した。
と言っても致死量の電撃ではないので数十分気絶はすれど死ぬことはないだろう。

「スマナイガ、ココハ通ラセテ貰ウヨ」

変声機のようなもので声を変えた男はそのまま『空間移動』で研究所内に潜り込んでいった。
男は内部に入ると、合羽のポケットから端末を取り出して内部を移動し始めた。
端末に載っている見取り図をもとに男は研究所の内部深くまで潜っていく。

「此処カ」

そして男は地下5階の一つの部屋の前に辿り着いた。
部屋に取り付けられた扉には厳重なセキュリティが大量に取り付けられていた。
普通のIDチェックはもちろんのこと指紋センサー・静脈センサー・脳波測定器、等々十数個のセキュリティが所狭しと並べてあった。
男はその一つに手を当てて、バチリッと音を立てる。

『電撃使い』の能力でセキュリティを一撃で破壊したのだった。

突如、セキュリティに連動していたシステムがエラーを発見しアラームを鳴らし始めた。
されど男は自分のこなすべき仕事を続ける。
ショートした扉を男は『筋力強化』で扉をこじ開けた。
重い音と共に、男の目前に目的のものが広がった。
子供達の入れられた檻だった。
子供と言っても年齢は様々でまだ3歳程の子供から既に第2次性徴が見られる年ごろの子供もいた。
共通しているのは、その服装はぼろぼろで酷い扱いを受けているのが見て取れることと、全員やせ細っていることだった。
ほとんどの目は恐怖に脅えており、既に幾人かは既に濁った目で虚空を見つめるだけであった。
この子供達はいわゆる置き去り(チャイルドエラー)だ。
この研究施設はいわゆる非合法の研究機関だったのだ。
学園都市に置き去りにされた子供達を保護する制度が存在する。
それを逆手に取り非人道的実験を行う研究チームも存在するのだ。
男の目的はこうした研究所から置き去り(チャイルドエラー)を発見することだ。
男は手にした端末から連絡を入れる。

「此方、『フルトリ』。置キ去リヲ発見シタ、場所ハ予想地点γ。幾人カニ衰弱ノ傾向ガ見ラレル。急遽保護ヲ要請スル」

『ザザ……了解じゃん……ザザ……計画通り被害は少ないけど派手に見える場所を焼くじゃん』

「了解。スグニ実行スル」

『気をつけるじゃん……ザザ』

男は端末をまた研究所の見取り図に変えると最上階に移動する。
だが、今回は『空間移動』は使わない。
足で移動し始めた男は階段などを利用して最上階に向かっていく。
アラームが鳴るのと同時に対『空間移動』用のシステムが稼働しているからだ。
下手に移動すると重傷を負う可能性がある。
男は当初の予定に沿って足で階段を上っていく。

数分もしない内に一階に出た男は一階広場にいた警備ロボット達による手厚い歓迎をうけた。

銃撃の弾幕。

慌てて階段の踊り場に転げ落ちた男の目前は”人をも殺せるよう”に改造を受けた警備ロボット達の一斉射撃によって粉塵に包まれていた。

「警告、警告。コレ以上ノ抵抗を行ウ場合、命ノ保障ハナイ。警告、警告。抵抗セズ、ソノ場デ俯セニナリ、頭ニ手ヲノセナサイ」

警告を発する警備ロボットに従うように男は手を床につける。
その瞬間男の回りに輪のような力が出現し、床が陥没した。
床の陥没に巻き込まれて警備ロボット達が落ちていく。
一方男はそのまま落ちずに空中をジャンプしていく。
『念動力』で足場を固定し、ジャンプしているのだ。
そのまま吹き抜けの広場から最上階に移動した男は再度現れた警備ロボット達に立向う。
にじり寄ってくる警備ロボット達。
男は徐々に吹き抜けの縁まで追いやられる。

「再度ノ警告ヲスル。コレ以上ノ抵抗を行ウ場合、命ノ保障ハナイ」

「フフ、保障ガナイノハ君達ノ方ダヨ」

そう言った男はニヤリと笑うと右手を高く掲げ、指を鳴らした。
瞬間、最上階にいた警備ロボット達に無数の黒い塊が振り落とされた。
それが何であるか、関知する前に警備ロボット達は機能停止した。
全てが終わった後に、男は最上階の一室に『発火能力』で火をつけた。



数分後、火災の通報を受けた警備員(アンチスキル)が研究所に到着。
捜査中、”偶然”にも地下に囚われていた置き去り(チャイルドエラー)を発見、これを保護した。





空が明け始めた頃、ようやく仕事が終わった綾峰は燃え尽きたかのように白くなりながら第七学区を歩いていた。
Prr Prr 、と携帯の着信音が綾峰のポケットから聞こえてきた。

「……へーい」

『いやー、今日も助かったじゃん』

「どういたしまして。つーか、あれだけの改造警備ロボットがいるなんて聞いてねーよ。メンドクセー」

『仕方ないじゃん、置き去り(チャイルドエラー)と同じであれも違法で入手してたんじゃん?それにしても相変わらずのむちゃくちゃ振りじゃん』

「何がだよ?」

『あんだけの種類の能力を使うもんだから、こっちじゃまた能力者集団ってことになってるじゃん』

「いえいえ、どういたしましてー」

『褒めてないじゃんよ。おかげでこっちは上への報告に何書けばいいか困るじゃん』

「知らねーよ、そんなの。それじゃオレ眠いんで。また」

『ちぇっ、眠いのはこっちも同じじゃん。あいよ、また頼むじゃん』

携帯を閉じて綾峰は電話を切る。
そう、都市伝説として騒がれている『多重能力者(デュアルスキル)』とは綾峰のことだ。
しかし、別に綾峰の能力が『多重能力者(デュアルスキル)』であるわけではない。
綾峰の能力が『多重能力者(デュアルスキル)』に似ているだけだ。
むしろ正確に言うのであれば『上位能力』と言うべきだろう。
AIM拡散力場を観測・干渉する。それが綾峰の本来の能力だった。
昨晩の多種多様な能力の使用はその応用だ。
従来の能力とは違う使い方なので負担も大きく、使用頻度も少ない。
特に『空間移動』の様な大能力に匹敵する能力はせいぜい1日に1回か2回、それ以上使うと脳が壊れてしまう。
もちろん超能力と言われるレベル5の再現なんて不可能もいい所だ。
だが、逆にレベル1~2程度の能力であれば同時使用も可能ではある、それもまた別の制限があるのだが。




話はずれるが、もともと綾峰は転生した人間だ。
二十云々才の男が気がつけば赤ん坊になっていたのだ。
そのため成長の早い(もともと成長している)綾峰は天才とまで呼ばれ両親によって学園都市に連れてこられた。
そして綾峰は置き去り(チャイルドエラー)になったのだ。
多額の金と共に消えた両親の代わりに日々同年代の子供達と実験に耐える日々。
その果てに得た能力が『上位能力』だった。
そして同時に失ったのは仲間達だった。
綾峰は暴走した。
あらゆる能力を使役し、暴走し、破壊し、自滅し、ぼろ雑巾のような状態で黄泉川 愛穂(よみかわ あいほ)に助けられた。
その後病院で冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)と呼ばれるカエル顔の医者によって命を取り留められた後、綾峰は自分と同じ境遇の子供達を救う決心をしたのだった。
だが、表立ってはまずいということで普段は『能力解析(AIMリーダー)』という無害な能力者の振りをしている。
綾峰は転生者だ、元々はこの世界のもとである「とある魔術の禁書目録」という本もいくらか読んだことがある。
だから、この世界には裏があることも知っていた。

故に綾峰は歩いていく、表と裏の境界線を。


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