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八月六日 弐【狂乱逢引編】

第五学区、とある廃ビル。
初めはとある外部のブティックの店がここに店を構えた。
しかし第五学区と第七学区の同じ学生とはいえ、年代の違う学生層に気付かずに大学生には少し子供っぽい商品で、あまり人気が出ず廃退。
次はあるフランチャイズのレストランが入ったが、場所が悪く廃退。
次は洋服店が入ったが、どういうわけか廃退。
そんなことを繰り返すうちに、いつしかこのビルは入った店が悉くダメになるという悪評が出て、いつの間にか空き物件となった。
そして、現在そこは不良たちのたむろう場所と化していた。
高校生や大学生を中心に作られた数十人からなるこの不良グループはかつあげからATM泥棒まで行い、かなり前から警備員(アンチスキル)に目を付けられていたが、天才的なブレーンがいたこのまえまで実質的な証拠を残さず事件を行っていた。
しかし、先日とある事件でほんの些細なミスからそのブレーンが数人の味方と一緒に警備員(アンチスキル)に取っ捕まったのだ。
ブレーンという理性を失った彼らは本能的に行動し、報復という名で女性警備員の1人を人質でおびき寄せ、犯してしまおうという話になったのだ。
そこで標的になったのが黄泉川 愛穂(よみかわ あいほ)だった。
活動範囲が広く、しかもレベル3より強いというふざけたポテンシャル故に彼女に掴まった者が多いこのグループにとっては自然と彼女に目がいくのは当然だった。
主要なメンバーはビルの2階にたむろっており、1階の入り口のドアには見張り役の2人の高校生が座っていた。

「それにしても、黄泉川のやろうに妹なんてのがいたとはな」

「あぁ。ガキらしいけどあいつが受けとりに来る前に一度味見してみねぇ?」

「あっはっはっはっはっはっはっは。そりゃお前犯罪だって。てかお前ロリコンだったのか?」

「ちげーよww」

「うそつけww」

実行犯であるメンバー達が帰ってくる予定時刻は11時半。
予定時刻まで40分を切った今、計画が既に成功したものだと思っている彼らの口調は明るかった。
その時、

「なぁ、あんたらって『デモンズ』のメンバー?」

「あん?」

自分たちのグループの名前が聞こえ見張りの2人が声の方を見ると、2人の前に鼻にピアスをした少年が立っていた。

「だったら何だよ?」

「つーか、お前ここが『デモンズ』の基地ってわかって聞いてんのか?」

2人はガンを飛ばしながら訊ねる。

「ああ、合ってるならいいんだ。それじゃ、ちょいとこれから死ぬより辛い目にあってもらうから」

は?という声が出る前に2人は気付いた。
いつの間にか自分たちが大量の少年達に囲まれている事に。
その中心に立つ少年が苦笑して2人に声をかける。

「まぁ、どんまい」

浜面 仕上(はまづら しあげ)は本当に残念そうに言った。








とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第27話








「待てや、そこの暴走自転車野郎!!!」

同時刻、10時50分。
綾峰はタクシーに乗った風紀委員に追いかけられていた。
いつの間にか『肉体強化』を使っていたらしく、自動車より速く移動していたらしい。
そこを風紀委員(ジャッジメント)に見つかったのだ。

(待てと言われて待つヤツがあるか、コンチクショー!)

本来の能力ではない『肉体強化』を使っていたことがバレると後々面倒なことになる綾峰は是が非でも掴まるわけにはいかなかった。

(くっそ。雲雀を追わなきゃいけないってのに!メンドクセー!)

「待てっつってんだろこんんどりゃあああああああ!!」

タクシーの後部座席の窓から身を乗り出して風紀委員が叫ぶ。

「って、よく考えたら俺の速度に追いついてるお前らも速度違反だろうがああああ!!」

「勝てば官軍だ、馬鹿やろーーーー!!」

「知るかあああああ!!」

「おい!運転手!追いつけ!」

「俺は運転手って名前じゃねえ!ダニエルだ!!」

「いいから!」

「仕方ねぇな」

そう言って、外国人運転手はタクシーの内部のボタンを押す。
瞬間、先程まで普通のタクシーだった車の外装が一気に変わり、スポーツカーとなる。

「って、どんな怪造車だあああああああ!!」

その後、30分をかけて綾峰は全速力で風紀委員と言うよりこのタクシーを振りきったのだった。









時間は移り、11時20分。

「けっ。こんなもんか」

そう言って学園第2位は少年を放り投げた。
先に倒れていた仲間の上に受け身も取れず落ちた少年は、

「かっ……はっ…………」

と、微かにうめき声をあげて気絶した。
垣根は少年達を一応だが生かしておいた。
仕事ではないし、服を汚された程度なら半殺しで充分だろう。
そう垣根は判断して、回りを見る。
場所は第五学区の路地裏。
翼を出して追っているうちにこんなところまで来てしまっていたのだ。

「それにしても、なんだ?これは。テメェらはどっかの人身売買の輩か?」

そう言って目の前に転がる少女を見た。
黒髪のベリーショートの少女は気絶しているのか道路に倒れている。

「たくっ。やっかいなもの見つけちまったな」

垣根はそう言うとこの少女をどうするか考える。

(警備員にでも引き渡すか?あー、でも根掘り葉掘り聞かれても面倒だしな。ほっとけば勝手に目ぇ覚まして帰るか?…………ん?)

よく見ると少女の右手は何やら切り傷があり、怪我をしていた。
先ほど雲雀が車から抜け出そうと暴れた際に、窓から出た右手が垣根の缶にぶつかった際に切ったのだが、垣根はそんなことは知らず、

(さっき車をぶち壊した時にでも怪我したのか?)

「………………ちっ」

垣根は少女の右手を取ると、1枚の羽を出し、日光を当てる。
その途端、日光を浴びた少女の右手の傷が癒え始める。
これも『未元物質(ダークマター)』の能力だった。
羽で解析した太陽光を殺人光線に変えるのと同様の方法で太陽光を治癒光へと変換したのだ。

「う、うぅ。おにーちゃん?」

「んあ?」

傷を治しているうちに少女が起きたらしく、垣根と少女の目が合った。

「………………」

「………………」

無言の2人。少女は垣根が自分の右手を掴んでいるのを見て言った。

「おにーちゃんってロリコン?」

「はぁ?」

予想外の言葉につい切れ気味に答える垣根。

「だ、だって、おねーちゃんが知らない男の人が何かしてきたらたいていそうだって」

「いや、それだとテメェに話しかけたら男は全員ロリコンになっちまうっつの。つーか、お前ロリコンの意味わかってねーだろ」

「?」

首を傾げる少女に垣根は、ため息を吐き右手を離す。

「目ぇ覚めたんならさっさと帰れ。また攫われんぞ」

「え?」

垣根の言葉に少女は改めて回りを見て、自分を攫った犯人らしき人物達が倒れているのに気がついた。

「おにーちゃんが助けてくれたの?」

「俺は単に服を汚したバカを粛正しただけだ」

「しゅく…だい?」

「しゅくせいだ」

「しゅくせいってどういう意味?」

「今度そのおねーちゃんとやらにでも聞け」

そっけなく返す垣根に少女は笑って言った。

「ありがとう」

「あん?」

「おにーちゃんが助けてくれたんでしょ?だからありがとう!」

「だから、俺は…………はぁ、もういい。それでいいからさっさと帰れ」

半分以上どうでも良くなってきた垣根は少女の言葉をさらさらと流していく。

「わたし、ひばり。碓氷 雲雀(うすい ひばり)」

「あぁ?」

突然の少女の自己紹介に垣根はちらりと少女を見る。

「おにーちゃんの名前って何て言うの?」

満面の笑顔で言う少女にはぐらかすのもめんどくさくなってきた垣根は、

「垣根 帝督(かきね ていとく)だ」

名前を素直に答え、表通りに向かって歩きだした。

「むー、待ってよー。カキネのおにーちゃん」

それを見て少女も起き上がると垣根を追ってきた。

「……まだ何かあるのか?」

「ここ、どこ?」

「………………………………そこら辺のヤツにでも聞け」

「むー!カキネのおにーちゃんってワガママー!」

「誰が、わがままだ。つーか、むーむーうるせぇ」

「むー!むー!むー!!」

「わざとやってんだろ!テメェ!」

「カキネのおにーちゃんのドケチー。カイショウなしー。ロリコンー」

「誰が、ロリコンだ!テメェわかってないだろ!?どれも分からず言ってんだろ!?」

「むー、わかってるもん」

「ったく。メンドクセェ。俺は行くからな。もう付いてくんじゃねぇぞ」

そう言って垣根はその場を後にした。
路地に雲雀と気絶した少年達が残された。







第五学区、とあるビル。
同時刻、そこは制圧されていた。

「が………………あぁ……」

「うぅ…………」

「………………く………………」

声すら出せずに倒れている『デモンズ』のメンバー達は全員が痺れていた。
その横にスキルアウトの半蔵と浜面が立っていた。

「なぁ、半蔵?こいつらは何で痺れてんだ?」

疑問を口にしたのは浜面だった。

「単に麻痺性の毒ガスを散布しただけだぜ?」

半蔵は軽く答える。

「毒ガス!?俺らここにいて大丈夫?つーか、お前何でそんな物騒なものを軽く使っちゃってんの!?」

「大丈夫だ、既に効果は切れている。それにお前らまで麻痺したら意味ないだろ」

「こわっ!その悪人顔やめれ!…………そういや、そもそも何で麻痺性の毒ガスなんだよ」

「確かに戦力を無効にするだけなら他にも手はあったんだがな、気絶しちまうと何で自分たちがこういう目にあったか分からないまま終わるだろ?でも、こうやって麻痺ってれば」

がすっと半蔵は近くにいた『デモンズ』のメンバーに蹴りをいれる。

「何で自分たちがこうなったのか理解できるし、恐怖も味わえんだろ」

「こわっ!!お前どんだけキレてんの?そこまであの巨乳にいれこんでんのかよ…………」

「お前にはあの人の素晴らしさがわからないのか?」

半蔵は恍惚の表情で問う。

「いやいや、14回も留置所にぶち込まれた相手にそんな素晴らしさは湧かないから」

「…………哀れなヤツだ」

「え?何で俺が哀れまれてんの?」







11時半。

「俺はなにやってんだか…………」

はぁ、とため息を吐いたのは垣根だった。
今日の垣根の行動を彼の仕事仲間が見たらあきれるか驚くだろう。
それくらいにあり得ない事だったのだ。
普段の垣根ならばたかが服を汚された程度でキレて一般人を半殺しにしないし、放っといても大丈夫であろう少女の傷を癒したりもしない、果ては素直に名前まで言うなど、

「ありえねぇな」

先ほどまでの自分に一言感想を言うと、忘れるように首をふり第七学区へ向かう。
その時、絹を引き裂くような悲鳴が聞こえた。
それもさっきまで垣根がいた路地からだ。
回りの通行人も驚いたようにそちらの方を見ているが、誰も動かない。
垣根は関係ないと言うように再度首をふり、その場を後にした。





同時刻、

第五学区、とあるビル、2階。

「……ところで、半蔵。こいつらの話によると既に黄泉川の妹が攫われているという話だが?」

陰鬱な喋り方で椅子に座った駒場 利徳(こまば りとく)は半蔵に訊ねる。

「ああ、そうらしいが。こいつらの言う予定の時間はとうに過ぎてるところを見ると向こうでも何かあったみたいだ」

「……どうする?ここで待つか?それとも?」

「おいおい、リーダー。こっちはスキルアウトだぜ?数で探せばすぐに見つかる」

「……だが、その妹とやらの顔を俺達は知らないぞ?」

「………………」

「……考えてなかったか」

「………………ああ」

無言になる2人の横で浜面が携帯を弄っていると、声をかけた。

「なぁ、だったら黄泉川自身も警備員(アンチスキル)なんだから黄泉川に言えば良いんじゃないか?」

「俺としては黄泉川に言わず、妹を救いたいんだが……」

「……妹のピンチを救うために情報を流す男というのもかっこいいんじゃないか?」

「おい、誰か黄泉川の連絡先知らないか?」

半蔵の問いに横にいた浜面が手をあげた。

「俺、持ってるぞ」

「ふざけんな!何で俺が持ってなくてお前が持ってんだよ!!?」

「えー?そこで俺がキレられるの?いや、前に相談相手になってやるって……ってぎゃー!何で武器構えてんだよ!?」

「お前は俺の純情を踏みにじった」

「何がだよ!?待て!落ち着け!俺はあいつをそういうつもりで見てないから!そもそもアイツをそう言う風に見てるのお前だけだから!」

「お前は遊びのつもりだったのか!!?」

「何でそうなるんだーッ?!」

どかっ、ばきっという音がビルに響いた。

「ちょっ!リーダー助けてえええええええええ!」

「……すまん」

「おいいいいいいいいいいいいいいい!」




「……半蔵。とにかく電話を」

数分後、いくらか落ち着いてきた半蔵は駒場の声に正気を取り戻した。

「あ、ああ。すまない。取り乱した」

ぼろぼろになった浜面から携帯を奪い、番号を確認すると自分の携帯で黄泉川に電話をする。
数回のコールの後、黄泉川が出た。

『はいよ。黄泉川ですけど、どなたさんじゃん?』

「………………………………」

『? おーい。誰だか知らないけど、今どき無言電話なんて流行んないじゃん』

「……あ、あの…………すいません!間違えましたー!!」

真っ赤になった半蔵は電話を切って気絶した。

「「「………………(このヘタレ)」」」

スキルアウトの全員が思った。

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