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八月三日【日常編・恋悩み 弐】

昼、日差しの暑い外とは違い、病室は非常に居心地が良かった。
ベッドの上でのんびりとしているにはもはやこれ以上無いほどの至福とも言える。
綾峰もベッドの上で座っていた。
既に体のほとんどから包帯が取られており、後は左腕のリハビリと、右腕の包帯だけだった。
そんな綾峰が苦々しく呟いた。

「……………… はぁ。どうするかねー」







とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第25話







綾峰は考えていた。
ぶっちゃけてしまえば、
綾峰にとって告白されるなど、初めての経験だった。
もちろん、既に半分以上忘れてしまった前世も含めてだ。
ようは約40年近く生きて(途中1回死んで)きて初めての経験にどうすればいいのだろうと、真剣に考えていた。
そう言えば身近にそれらしい恋愛経験者はいない。
いたとしても、ロリコンだったり、義兄妹の明らかにアウトローな人間ばかりだった。

はぁ、とため息が出る。

はっきり言えば、綾峰は白井のことは好きな部類に入ると思っている。
それに自分自身の気持ちも白井に近いものだと思う。
だが、それが恋愛として成り立つのかと言われると自信はない。
綾峰は白井にいくつも隠し事をしている。

『多重能力者(デュアルスキル)』のこと。

左腕のこと。

己が転生者であること。

まぁ、1つ目は何人かにバレているし、2つ目も『冥土帰し(ヘブンズキャンセラー)』には知られている。
3つ目は誰にもバレていないが、そもそも言う意味がないので、これはスルー。
とにかく、先の2つの隠し事をしたまま白井とつきあうのは気が引けた。
そう言えば、原作では記憶を失った上条はインデックスのために己の嘘(記憶喪失)を貫き通そうとしたはずだ。
なら、俺も『偽善使い(フォックスワード)』になるべきなのか?
愛する人を守る為に、その人を生涯騙し続けるという矛盾に生きるべきなのか?
愛する者に『多重能力者』であることを隠し、救われない子供達を影で救い続けるヒーローにでもなれと?
どこのアメコミの話だと思う。
そう言えば、まだ見たことはないが、『一方通行(アクセラレータ)』も『打ち止め(ラストオーダー)』のためにより深い闇に堕ちたはずだ。
なら俺も愛する人を待たせて悲しませて、戦うべきなのか?
誰にも知られぬ深い闇へと堕ちていくべきなのか?
どこのダークヒーローだ。
綾峰には、そんな2人にはなれない。
こんな力が無ければどこにでもいる人間だと思う。
実際、綾峰はヒーローなんかじゃない。
誰に教えられるでもなく、自身の内側から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとすることはできない。
過去に大きな過ちを犯したからと言って、その罪に苦悩しながら正しい道を歩もうとしているわけでもない。
たった1人の大切な人のためにヒーローになれるわけでもない。
ただ、誰もが持っているような物をただ、背負っているだけの凡人だ。
どこにでもいる凡人。どこにでもいたはずの凡人。
それが何をどう間違えてか、こんなところにいる。
過去を捨てられず、器用に忘れる事もできず、ただ見知らぬ子供達のために戦い、
今を捨てられず、器用に見逃す事もできず、己と同じ場所にいる人間と戦い、
未来を捨てられず、器用に知らぬフリもできず、記憶を失う友にために戦う。
気がつけば、体は満身創痍。
ヒーロー(主人公)でも、ダークヒーロー(もう一人の主人公)でもない自分がでしゃばってしまった結果だ。
そんな凡人が白井を守れるのか?
守りながら自分を貫けるのか?ヒーロー達のように。

「………………はぁ。メンドクセー」

つい、いつもの口癖が出る。

「どうしたんですか?綾峰さん。ため息なんか吐いちゃって」

声に気がつくと、いつの間にか病室の入り口に私服姿の佐天 涙子(さてん るいこ)が立っていた。

綾峰は左手を上げて挨拶する。

「いよう、久しぶりって言うか。『幻想御手(レベルアッパー)』事件以来だな。体調は大丈夫か?」

「はい、おかげさまで」

そう言ってにっこり笑う佐天につられて綾峰もにっこり笑って言う。

「そうか、そりゃ良かった。誰かの見舞いか?」

綾峰は佐天が誰かの見舞いのついでにここによったと思っていたが、

「あはは、綾峰さんのお見舞いに決まってるじゃないですか」

佐天の答えは綾峰の予想に反するものだった。

「ん?俺か?1回しか会ってないヤツのためにお見舞いって、もしかしてお見舞いが趣味とか?」

「そんな悪趣味はないですよ。単にまだ綾峰さんが入院してるって聞いたのと、この前の事件のお礼をしようと思って」

「お礼?お礼されるほど何かしたつもりはないんだが…………」

「とりあえず、座っていいですか?」

「あ、ああ、わりぃ。適当に座ってくれ」

適当なイスを出して座ると、佐天は、

「ありがとうございました」

そう言って頭を下げた。

「っておいおい。だから俺は何もしてねぇって。あの事件では初春が『幻想御手』からお前らのリンクを切って、御坂が『幻想猛獣』を倒したんだからさ」

綾峰の言葉に佐天は首を振る。

「そのことじゃないんです。あの時の言葉、すごく胸に響いたから」

「あの時の言葉?」

綾峰は首を傾げる。
はっきり言って、あの時は白井を『幻想猛獣』から助けるのに必死で自分が何を言っていたのか覚えていなかった。

「はい、『っざけんな!勝手に決めつけてんじゃねぇ!!

 諦めるんだったら、勝手に諦めてろ!

 俺は絶対に諦めねええんだよおおおおおおおおおおお!!』って言葉です」

「………………………………………………」

「あれ?どうしました?そんな変な顔して」

「いや、俺そんな恥ずかしい台詞を叫んでたのかぁと思って」

「ふふ、そうですね。私も今言ってて恥ずかしかったです」

佐天は笑って頬をぽりぽりと掻いた。

「それで、お礼ってのは?もしかして今の台詞を言ってたことを再確認させて辱めるのがお礼!?俺はMじゃないですよ!?というか、どっちかってーとSだし」

「誰もそんな事は聞いてません」

「サーセン」

「とにかく、あの時の言葉。すごく胸に響いたんです。だから私、もう一度頑張ろうと思って」

「………………そうか」

「まだ、レベル0のままですけど、あの時の感覚を得るためにもう一度頑張ります。それで、そのきっかけを作ってくれた綾峰さんにお礼をしようと思ったんです」

「どういたしまして。こんな凡人の言葉に感動して貰えるとは思わんかったよ」

「凡人って。すごいんですよ!綾峰さんは分かってないでしょうけど。綾峰さんに励まされた友達だっているんです。それに私だってあの時の綾峰さんを見て本当にすごいって思ったんですから。あの時の綾峰さんは正にヒーローって感じでしたよ」

「………………俺は、凡人さ。何処まで行っても他人の力を借りるだけ。『幻想殺し』や『一方通行』と比べりゃ、俺はこの街を出たら唯の人間に戻っちまう」

「そ、それでも!あの時の綾峰さんは本当に、本当にヒーローでした!!」

「それは幻想だよ。佐天。そう、あれは優しい幻想。ここにいる唯の凡人が現実だよ」

そう言って綾峰は自嘲するように笑う。
刹那、

ばきっ!

ベッドの上で倒れ込む綾峰は驚いたように自分を殴ってきた人物を見た。
そこには肩を上下させ、目に涙を溜めた佐天がいた。

「あなたの力が誰の借り物であっても、それを使ったのは綾峰さん、あなたなんですよ!そのあなたが私たち、一万人の能力者を救ってくれたんですよ!そんな人がヒーローじゃなくてなんだっていうんですか!!」

震える声で佐天は言い切った。
直後、

「……………………あははははははははははははっあっはははははははははははははは」

綾峰は突然笑い出した。
まるで何もかもがおかしいと言わんばかりに。

「あ、あの?綾峰さん?」

突然の綾峰の笑いに佐天は当たり所でも悪かったのかと心配になった。

「いや、あっはははは。まさか、佐天に諭されるとは。っくく。それに、俺も馬鹿なこと考えてたなぁって」

「なっ。わ、私が諭すのは変ですか?」

「いやぁ。そういう意味じゃないんだけどな。ありがとな。佐天。おかげで踏ん切りついた」

「へ?」

「はなから間違えてたんだよ。貫けるかとか、貫けないかとかじゃない。貫くんだ。そもそも俺は今までだって貫いて来たじゃねーか。それが今更になってびびりやがって。はぁ。すっきりした」

1人で勝手に納得していく綾峰に佐天は?マークを頭に浮かべていた。

「あ、あれ~?」

「そういや、お礼がどうのって言ってたけど、何だったんだ?」

「え?えーと。その………………あー、その何か悩み事があれば聞こうかなって思ってたんですけど…………もういらないですよね」

「おう、佐天のおかげだな」

「あれー?私、なんかお礼した気になれないんですが…………」

「そうか?俺としては十分お礼してもらったと思うけど」

うーん、としばらく佐天は悩むように目をつむると。

「それじゃ、何か必要なことがあったら私に言ってください。まぁ、私にできることなんて大して………………あ、初春のパンツならいつでも見せられますよ!」

「いや、興味ないから。というかお前もあいつのスカートあんま捲ってやるなって…………」

「んっふふー。あれは私の特技ですからねぇ~」

「しょうもない特技もあったもんだな」

「あはー。良く言われます」

ふと、綾峰は思いついたように聞いてみた。

「…………そういや、お前らぐらいの年の女ってどんなもんが好みなんだ?」

「?…………ッ! ほほう、それはそれは………もしかして白井さんとのデートですか?旦那?」

「ぶふっ!ちげーって。単なる興味だ!純粋なる男子の興味っつーか、ダメだ!それじゃ変態じゃん!」

「なんか勝手に自爆してるところ進めますけど、ぶっちゃけ甘くておいしい物があれば良いと思います。ただし、ファミレスはダメですよ?」

「ほー、なるほど。それで?」

「あとは、そうですね…………」


この後、佐天(の独断と偏見)によるデートにおける必須事項などが、いろいろ綾峰に話されたのだった。

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