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八月一日 【禁書目録・幻想殺し編】

太陽の光が窓から注ぐ病室に、1つだけあるベッドの上で少年が座っていた。
ベッドの前には1人の少女が立っていた。

「あなた、病室を間違えていませんか?」

左腕以外全身包帯まみれの少年の言葉は丁寧で、不審そうで、様子を探るようだった。

「……、っ」

少女はカエル顔の医者に聞いていた。

――――あれはどちらかというと記憶喪失というより記憶破壊だねぇ。

能力の使い過ぎによる反動。そして、血が足らず死にかけたこと。
それらが重なった事による脳細胞の一部が破壊されているという事実。
それを知っていた少女は無理矢理笑顔をつくろうとした。
せめて、笑っていたい。
悲しい顔など見せたくない。
だから、少女はうまく笑顔を作れたような気がした。
だが、透明な少年は言う。

「あの、大丈夫ですか?なんか君、ものすごく辛そうだ」

少年は軽々と少女の嘘を看破した。
そう言えば、この少年は他人の嘘を見抜くのが得意だった。
それでも少女は嘘を貫き通す

「いいえ、大丈夫ですわ」

爪が食い込みそうな程、手を握りながら、

「大丈夫に決まってますわ」

白井黒子はベッドの上にいる、綾峰唯鷹に言った。








とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第23話








白い羽が1枚、上条の頭に舞い降りた。
瞬間、上条は頭を金槌で殴られたように全身の、指先に至るまで、一撃で全ての力を失った。
上条は未だ床に倒れ込んでいるインデックスの上に倒れ込んだ。
降りかかる羽からインデックスを守るように。
そこへ、数十枚の羽が上条の全身に降りかかろうとした。
瞬間、黒い壁が上条達を覆った。
白い羽は黒い壁にぶつかると、バギンという音を立てて壁を削りながら消えていく。
それは連続した音で、まるで硝子の礫を床に叩きつけているかのようだった。
そして最後の1枚が黒い壁にぶつかって、消えた。
2人の魔術師が驚きながら後ろを振り向くと、ドアの枠に寄りかかるように綾峰が立っていた。
顔色は土気色で、既に生気はほとんどない。
2人にとって綾峰がここにいる事よりも、綾峰がそれでも生きていることが驚きだった。

「どうやって、ここに来たのですか?それよりもどうやってあの状況から……」

神裂は絶句していた。
神裂は綾峰を倒した後、すぐに公衆電話で救急車を呼んでから去ったのだ。
故に綾峰は既に病院に運ばれていると考えていた。

「…………単に、やられたふりをしただけだ。どうせ、あんたにやられるのはわかってたから。斬られた瞬間、分身にしたんだ。後は、分身を使って死んだフ…リ…………くっ」

綾峰はそのまま跪く。

「でしたらすぐに彼とともに病院に「そんなことよりも、やることがある」!?」

「おい、ロリコン神父。今すぐ上条に回復魔術を。それぐらい使えんだろ?」

綾峰はステイルの方を向いて血へどを吐くように言った。

「無理だ!アイツの右手の効果を君も知っているだろう?あらゆる魔術を無効化する彼の右手がある限り、僕等は彼に回復魔術は使えない」

それが『幻想殺し(イマジンブレーカー)』の能力。

「なら、斬り落とせばいい」

「「なッ!!?」」

だが、軽々と綾峰は言い放った。

「大丈夫だ、知りあいに斬り落とされた腕であろうと繋げるすごい医者がいる」

「馬鹿か、君は!そんな事をする程までの傷じゃ「アイツは!記憶をなくしちまうんだ!」……!?」

「どういう意味ですか?」

綾峰の言葉の意味を神裂が訊ねる。
綾峰は言葉を選ぶように話し始めた。

「…………俺は学園都市にあるあらゆる能力を使える。その中に『予知能力(ファービジョン)』があるんだ。俺はこの前、それで上条が記憶をなくすという未来を見た。今ならそれは消せるかもしれない。いや!今だからこそ!上条を救えるんだ!」

半分は嘘だ。綾峰には『予知能力(ファービジョン)』など使えない。
それでも、上条を救うにはここしかないと、綾峰は考えていた。

「…………例え、それが真実だとして、記憶喪失程度なら時間が、「記憶喪失じゃない、アイツは脳細胞ごと記憶を無くす。時間で解決なんて出来はしない」…………」

「…………ですが」

それでも彼らは迷う。
この少年を信じるべきか。否か。
別に綾峰が嘘をついていると思っているわけではない。
だが、あまりにも突拍子すぎて信じきれないのだ。

「頼む。信じて……くれ」

綾峰は言葉を吐くしか方法はなかった。

「…………わかりました。ステイル。準備を」

神裂は覚悟を決めた表情で言った。

「!?正気か、神裂!!こいつの言っていることに証拠はないんだぞ!」

「ですが、彼に嘘をつく理由はありません。実際、上条少年は先ほどの羽によって頭部にダメージを負っています。それに彼の言う通りなら、この方法をすれば彼は記憶喪失から救われます」

「だが!」

「貴方は、彼が記憶喪失になったことでインデックスが悲しむ姿を見てもいいと言うのですか?」

「っぐ………卑怯だぞ、神裂」

「私は見たくありません。さぁ、始めますよ。ステイル」

「………わかった。それが彼女のためになるのなら」

そう言って、2人の魔術師は上条の方へと向き直った。

「きゅい」

その時、綾峰が走り出した。
2人は突然の綾峰の動きに驚く。瀕死の人間のどこに走る力があったのだと。
そして遅れて2人は気付いた。
倒れ伏す上条の上空、先の戦闘で穴の空いた空間から漏れ堕ちてくる1枚の羽を。
それはゆっくりと舞い降りて、上条の頭に、
ぶつかる前に綾峰の出した手に舞い降りた。
生温い血が倒れる2人に掛かった。






既に、綾峰に演算能力は残っていなかった。
体力はほぼ0。目も霞み、四肢も自由には動かない。
その時、もう見えなくなっているはずの目に1枚の羽が落ちてきたのが見えた。
それは上条の真上にあった。

「きゅい」

変な声が聞こえた気がした。
その瞬間、綾峰にあの感覚が戻った。
AIM拡散力場が綾峰の回りに集まってくる感覚。
それと同時に体中から力が湧き上がる感覚。
だから、走った。
上条を守る為に。
白い羽を吹き飛ばすつもりで手を前に出した。
そして、手で羽を掴んだ瞬間。
肉が弾け飛ぶ音がした。











「いいえ、大丈夫ですわ」

爪が食い込みそうな程、手を握りながら、

「大丈夫に決まってますわ」

白井は綾峰に言った。
それを見る透明な少年は聞いた。

「……。もしかして、俺達って知りあいなのか?」

その質問が白井には一番辛かった。
つまり、その質問こそが彼が白井のことをわかっていないという最大の証拠なのだから。
ええ、と弱々しく呟き、白井は訊ねる。

「忘れてしまったのですの?私達は共に風紀委員(ジャッジメント)で事件を解決していましたのよ?」

「――ジャッジメント?何かの探偵団の名前?」

「……綾峰先輩、あなたは私を『幻想猛獣(AIMバースト)』から救って下さったのですよ?」

「――エー、アイ…なんだって?」

「…………綾峰先輩、お礼にどこかにでかけようって約束したではありませんの?」

「――綾峰って誰の名前?」

白井の口は今にも止まってしまいそうだった。それでも白井はすがるように訊ねた。

「黒子は、綾峰先輩のことが好きだったのですわよ?」




その瞬間、綾峰は土下座した。

「すいませんでしたああああああああああああああああああ!!!」

「へ?」

呆ける白井を他所にいつも通りの綾峰は包帯だらけの体で土下座のまま言い訳を始めた。

「いえ、そのですねー。ちょいとこういう記憶喪失的なノリをやりたくてですねー。医者の方に頼んだんですがー。途中で医者がドッキリでしたーって来るはずだったのに!来ないんだもん!もうなんか後に引けなくなって!って白井?白井さん?白井様!?って待って!傷は本物だから!死ぬから!ドロップキックはらめええええぇぇぇぇ「問答無用ですわ!!」ぐげふっ!!」

その後、綾峰は説教を3時間聞かされた。






「よう、綾峰。大丈夫か?」

そう言って白井と入れ違いに入ってきたのは上条だった。

「……………………」

しかし綾峰から返事はない。

「返事がない どうやら死んでいるようだ」

「いや、生きてるから、かろうじて」

綾峰は上条のボケにつっこみをいれつつ、上条を見る。
右手にギブスが巻き付けられているが、それ以外に目立つ外傷はなかった。

「よう、上条。今日はインデックスは連れてないのか?」

「ああ、あいつは俺の部屋で留守番してるよ」

「その左手の火傷は?」

上条の左手に微かに火傷があった。

「あ、ああ。…………知りあいの神父の手紙が爆発しやがった」

上条は言う。何もかもを覚えている者の言い方で。

「何だ、そりゃ。とにかくご愁傷様。でも、お前が無事で良かったよ」

「はは、まあな。にしても、お前も大変だったんだな。病院抜け出して事件を解決しに行ったんだって?」

「まぁな。こうやって五体満足で戻れたんだから良かったんじゃねーの?」

ただ1つ、綾峰が”上条”を救ったことを知らぬまま、上条当麻は全てを覚えていた。






上条が去ると、カエル顔の医者がやってきた。

「診察の時間だよ?」

「はい」

カエル顔の医者はいくつか問診すると、その度に書類に何かを書いた。
そして、最後に、

「それにしても言わなくて良かったのかい?」

「なんの事をですか?」

「君、彼のために左腕をなくしたのに?」

カエル顔の言葉と同時に、綾峰の左腕が消えていく。
肘までしかない左腕を見て、綾峰は言う。

「別に、それで責任を感じさせても嫌ですから」

「………彼と同じように残っていれば治せるんだがね?」

そう言ってカエル顔の医者は本当に申し訳なさそうに言う。

「仕方ないですよ。先生の忠告を無視した俺が悪いんですから」

綾峰は苦笑しつつ、言う。
綾峰の左腕は先日の戦いの際に上条を庇って羽を受け止めて崩壊したのだ。
そして、その代わりに綾峰は黒い物体を左腕の形にして見た目の色を変えてホンモノの腕のようにした。
そう、それが代償だった。

「友達の代償が、左腕1本で済んだんですから、喜ばなくちゃ」

「君が納得しているなら良いんだけどね?」

「ええ、満足です」

綾峰は満面の笑みで言った。

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