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七月二十七日 弐【禁書目録・幻想殺し編】

「きゅい?」

街の中を歩くクロは首を傾げるような動作をすると、回りを確認する。
そこには誰もいない。
本来ならばこの時間帯であろうとも人足が少なからずあるはずのこの通りもステイルが貼った人払いのルーンによって人通りは完全に途絶えていた。
その中を歩くクロは当たり前のように歩いていく。

ふと、

「――――qw急e」

クロの鳴き声にノイズが走った。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第22話









ステイルはアパートの近くの屋上で煙草を吸いながら時を待っていた。
12時、それが禁書目録(インデックス)のタイムリミットだ。
1年に1回、必ず彼女の脳の記憶を掃除(消去)しないと彼女はその脳に溢れた記憶によって狂い死んでしまう。
それを初めて聞いたときはステイルも必死で記憶消去以外の道を探した。
しかし、結局間に合わなかった。
それが現実だった。
だからこそインデックスが記憶を失う前に「たとえ君は全てを忘れてしまうとしても、僕は何一つ忘れずに君のために生きて死ぬ」とまで誓った。
それからは『敵』として少しでも記憶消去の際に悲しみを減らすように行動してきたが、それが本当に彼女のためなのか、あるいは自分のためなのか、今は分からなくなっていた。

「間に合ったようですね」

ステイルの後ろに神裂が現れた。
特に目立った外傷がないところを見ると時間がかかったわりには圧倒して終わったらしい。

「能力者は?」

ステイルは、邪魔はしてこないのか?という意味で訊ねる。

「ええ、致命傷は避けておきましたが、後1時間程度では起きる事は不可能です。彼が目を覚ます頃には全て終わっているでしょう」

「そうか…………それじゃあ後は彼だけか」

ステイルの視線はアパートの1室に向く。

「ええ。ですが約束の時間まで少しあります」

神裂の言葉にステイルは少し考えるように押し黙ると、

「…………なぁ、神裂。別に律義にあいつとの時間を守る必要は無いんじゃないか?」

提案をした。

「ええ、本来彼女のことを思うのであれば例え非道になろうともすぐに『記憶消去』すべきでしょう」

「なら、「ですが、私は待つつもりです」…………何故だ?」

「…………あそこまで重傷を負いながらも私に立向ったあの少年が、信じた上条という少年。彼が何をなせるのか見てみたいのです」

神裂の目には絶対の意思が込められていた。
ステイルはため息を吐き、頷いた。

「…………わかった。どうせ結果は変わらないと思うけど」

「………………」

2人の魔術師は無言のまま、灯の点いている1室を見つめ続けた。
現在、午後11時25分。タイムリミットまで残り35分。






時間は、進み、針は重なり、新たな1日を示す。
すなわち、午前0時。
禁書目録の制限時間の終了時刻。
上条当麻は魔術師との電話での一言を思い出していた。

『それでは、魔術師(われわれ)は午前零時に舞い降ります。残り時間はわずかですが、最後に素敵な悪あがきを』

外の扉から制限時間の足音が聞こえてきていた。
扉を蹴破り、魔術師達が現れる。
背後に満月の月光を背負った彼らはきっぱりと制限時間の終わりを宣言した。


上条は笑っていた。

「――アイツの背中が斬られた時もそうだけどさ。何で俺には何もできねーのかな。
 これだけの右手を持っていて、神様の奇跡でも殺せるくせに」

己の無力さを噛みしめながら、崩れるように、

「……どうして、たった1人―――苦しんでる女の子を助けることもできねーのかな」

笑っていた。
そこに神裂が10分の猶予を進言した。
儀式が行うための力を貯めるまでのたった10分間。
されど、0と10は違う。

「10分間だ。良いな!?」

そう言って、ステイルは出ていった。
ステイルを説き伏せた神裂は去り際に、

「貴方の親友、綾峰、と言いましたか?彼も貴方を信じていましたよ。最後までね」

呟き去った。
何をすべきかもわからない少年と、熱病のような熱にうなされた少女が残された。

現在、午前0時5分。タイムリミットまで後10分。





上条は少女にかつてある会話をした。


頭痛が治ったらこんなヤツらをやっつけて自由になろう、と言った
そしたら一緒に海にでも行きたいけど、夏休みの補習が終わってからだな、と言った。
いっその事、夏休みが終わったら学校に転入してくるのはどうだ? と聞いた。
いっぱい思い出を作りたいね、とインデックスは言った。
作りたいじゃない、作るんだよ、と上条は約束した。

だから、

上条は己の嘘を貫き通す、『偽善使い(フォックスワード)』になろうと決意した。
冷たいだけで優しくない正義を捨て、正義でも邪悪でもない、『偽善使い』になる。
それが上条の決意だった。
死人のような顔色で、熱にうなされる少女に、

「けどさ、こんな最悪な終わり方ってないよなぁ」

上条は唇を噛みしめながら言った。
インデックスの脳の85%を占める一万と三千の魔導書の『知識』に侵された残りの15%の『思い出』を守り抜くこともできない自分に対して絶望を感じていた上条はそこで1つの違和感に気がつく。
そして、その違和感の元を辿り、ある人物に電話をした。

「先生!!」

『あ~い~。その声は上条ちゃんですね~。先生の電話を勝手につかっちゃダメですよ~う』

月詠小萌、上条の高校の担任教員だった。
上条は問う、完全記憶能力を持つ人間は、『1年で脳の15%をも使うのか』と訊ねると、

『そんなわけ無いんですよ~』

小萌先生はそれを否定し、理由を続ける。

『どれだけ下らない記憶を忘れられないとしても元々人間は140年分の記憶が可能ですから~』

上条は問う、ならば急激に知識を溜め込んだなら、話は変わらないかと。

『はぁ、上条ちゃんは記録術は落第ですね~』

小萌先生は幸せそうに言葉を繋ぐ。

『もともと記憶というのは一種類じゃありません、言語や知識を司る「意味記憶」、運動のなれなんかを司る「手続記憶」、そして思い出を司る「エピソード記憶」と言った具合にいろいろあるのですよ~、いろいろ~』

上条は先を促す、つまり、

『はい~、知識をどれだけ詰め込んでも「意味記憶」が増えるだけで、それが「エピソード記憶」を圧迫するなんてことは、脳医学上、ぜったいにありえません』

上条は答えに行き着いた。



上条は考える。
インデックスの完全記憶能力はもともと命を脅かすものでないのなら、
何故、インデックスは苦しんでいる?
答えは簡単、「首輪」をつけるために教会がもともと何ともないインデックスに何かをしたのだ。
そして、上条はインデックスの前に立つ。

今度こそ全てを変える主人公になるために、

「主人公きどりじゃねぇ、

 主人公になるんだ!!」







「ダメです―――――――上!!」

全てを引き裂くような神裂の叫び声が響いた。
上条の上には、数十枚の羽。
それは残滓の羽。
1枚でも触れれば死ぬであろう、魔法による羽。
それでも上条はただ目の前にいる少女を見続ける。

(まずは、その幻想をぶち殺す!!)

上条の右手が少女を取り囲む、魔方陣を容易く切り裂いていく。

「――――警、こく。最終……章。第、零――……。『 首輪、』致命的な、破壊……再生、不可……消」

ブツンとインデックスの声が消える。
その時、上条の頭に1枚の羽が舞い降りた。

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