スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

七月二十七日 壱【禁書目録・幻想殺し編】

数日前、夜が更けるころ、学園都市のどこか。

「よー、ねーちん。元気かにゃー?」

「……土御門。調べはついたのですか?」

神裂は路地の暗闇から出てきた”同僚”の挨拶も返さずに訊ねる。

「ちゃーんと調べてきたぜよ。そんな怖い顔しなさんなって」

「だったら貴方はそのにゃーにゃー言うのをやめなさい」

「これは俺のアイデンティティーだから捨てられないにゃー」

軽く言いながら、土御門はぽすっと神裂に封筒を手渡した。

「これが……」

「ああ、上条当麻に関する書類ぜよ。能力からその身の回りの環境、ストーカーも真っ青な情報までのってるにゃー」

封筒を開くと、中には十数ページにわたる書類が入っていた。
神裂は書類を軽く流し見ると、再度土御門の方を見た。

「なるほど、わかりました。もう一つは?」

「はいよ」

土御門は、もう一つの封筒を手渡した。

「そっちが綾峰唯鷹に関する情報。内容は結構深いとこまで探ったけど、それぐらいしか出なかったにゃー」

神裂が開いた封筒には、上条と違い、僅か、数ページしかなかった。

「これはどういうことですか?」

「さぁ?でもかなり強力なロックがかけられてるってことだと思うぜぃ」

「あの程度の少年にですか?」

神裂は訝しむ、と土御門が言った。

「おいおい、ねーちん。あんた何か勘違いしてるぜよ?」

「? どういう意味です?」

「あれは、上条とは違った意味でやっかいなやつだぜ。せいぜい注意しとくんだな」

「………………」

「それじゃ、俺はこれで。そろそろ帰らんと義妹が怒るにゃー」

そう言ってスパイは去っていった。
路地には神裂1人が残された。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第21話








夜、病室で綾峰は車椅子に乗っていた。
服装は患者用の部屋着ではなく、普段着だった。

「行くんだね?」

「はい、体は動かせなくても能力があればきっとどうにかなると思うんで」

カエル顔の医者の問に綾峰は笑顔で応えた。

「ふぅ………………本当は君は重症患者だからねぇ?行かせてはならないんだけどね?」

ため息を吐くカエル顔の医者の表情は芳しくはなかった。

「……じゃぁ、今更ですが、止めますか?」

「あー、でも僕は割りと忙しい身だからね?たまに寝不足で部屋でうたた寝をしてしまってるときもあるんだよ?だから、その間誰かがこっそりと病室を出てしまってもすぐに対応ができないんだよ?」

独り言のように言うカエル顔の医者はゆっくりと首を振った。

「………………行ってきます」

「………?何か言ったかい?それじゃ、僕は部屋に戻ってるけど用があったら呼んでね?」

「はい」

そう言ってカエル顔の医者は部屋に戻っていった。

「…………行くか」

綾峰は『空間移動』で外に出た。
本当はもっと早く出たかったのだが、黄泉川がいたり雲雀がいたりとなかなか抜け出すタイミングを掴めなかったのだ。
しかしもう雲雀は眠り、黄泉川は面会時間を過ぎたために帰っていった。
綾峰はカエル顔の医者が”たまたま”口を滑らせて知った、病院の職員用通路を通り、敷地の外へ出る。
外には人気はない。
綾峰は出来うる限りの速度で小萌先生のアパートへ向かっていった。


現在、午後9時。タイムリミットまで後3時間。








その頃、常盤台中学学生寮のニ○八号室。

「きゅい?」

今までうたた寝をするように首をかくん、かくん、と上下させていたクロが突然何かを感知したのか回りを伺っていた。

「? どうしたの?クロ?」

「きゅい!」

至福の表情でベッドからそれを見ていた御坂がクロが慌ただしそうにしているのを見て訊ねた。

「きゅい!って言われても……分からないけど、可愛いなぁ~。クロ~」

「………………きゅーい」

既にクロによって御坂は骨抜きにされてたりする。
クロはそんな御坂には興味がないようで、ぷいっと玄関の方に向かっていった。

「もう、何なのよ~。何処行くの~?クロ~ってあれ?」

御坂が玄関に行くとそこには誰もいなかった。
それと同時にかちゃ、と扉を開けて白井が入ってきた。

「あら?どうしましたの?お姉さま。っは!!まさか私を迎えに!?」

「いや、それはないから。さっきクロが玄関に行ったんだけど、消えちゃったのよ」

「?クロがですか?私が帰ってくる途中ではすれ違いませんでしたから、まだ中にいるのでは?第一、あの子は扉を開けられないと思いますし」

「えー。でも中にはいないと思うんだけど……おかしいなー?」

御坂と白井は首を捻った。







「やはり、貴方も来たのですね」

それは、電話ボックスから出てきた。
予想はしていた。
最後の時間、それを悪役として振る舞っている彼ら。
もしも、俺が彼らの立場なら「せめて最後の時間は少しでも楽しい時間にさせてあげよう」。そう思うに違いない。
だから、予想はしていた。
綾峰の前に、神裂火織がやってくることは。

「やはりってのはどういう意味だ?」

それでも訊ねる。確認のために。

「前回、ステイルが貴方と会った際に貴方が彼に入れ込んでいると聞きましたので少し調べさせて貰っていたのですが。その際に注意をするようにと言われましたので」

「なるほど。それで待ち伏せでもしてたのか?」

「いえ、たまたま貴方に会っただけです。先ほど彼に最後通告の電話をしていたものですから」

「………………あのー?何かシリアスってる俺が馬鹿みたいなんで、そこは待ってたって言ってください」

「………………待ってました」

「………………あ、やっぱ良いです。なんか悪いし」

「いえ、私は待ってました!」

「すいません!!もう良いですから!!そんな優しくされると涙出てくるんで良いですから!」

面倒くさい綾峰だった。

「まったく何をやってるんだ?」

暗闇から呆れ顔でロリコン神父が現れる。

「私は彼を待ち伏せしていたことになりました」

「いや、神裂。君さっき電話してくるって言ってたじゃないか」

「もう良いよ!その会話は!って言うかもう俺行かなきゃ行けないんで失礼します!!」

「……………待ちなさい」

ちゃき、と2人の横を通ろうとした綾峰の首に七天七刀の刃がいつの間にか当てられていた。

「…………俺、これから先生の家に行かなきゃなんねーのよ?通してくんない?」

「それは許容できません。あの子にはせめて最後の時間を少しでも楽しい時間にさせてあげたいのです。それが私たちの義務であり、償いです」

「……ねーよ」

「は?今なんと?」

「知らねーよっつったんだ!テメエら敗北者の義務や償いなんてもんはそこら辺の犬っころにでも食わせてろ!」

綾峰の言葉にぴくりと、神裂の手に力が篭る。

「おい、能力者。いい加減にしないと「待ちなさい、ステイル」……何だよ神裂」

綾峰の言葉に怒り、懐に手を入れたステイルを神裂が片手で制した。
眼光は先よりも鋭く、綾峰を射ぬきながら。

「敗北者……なるほど。言い得て妙ですね。それでは、あのぼろぼろの少年は勝者だと言うのですか?」

「ああ、アイツは勝者になるさ。でもそのためにも俺がアイツを救わなきゃならねーんだよ」

「貴方の言葉の意味はよくわかりませんが、とりあえず、ここは通せません」

「どけよ、魔術師」

「退きなさい、能力者」

お互い譲らず、2人の視線は絡みあうと火花を散らす。
初めに動いたのは綾峰だった。
見えない力が神裂の腹を打った。

「ぐっ!」

『念動力』によって吹き飛ばされた神裂はそのまま着地すると体勢を整える。

「ステイル、人払いを」

それだけ言うと、神裂の手が何かのバグかのようにぶれる。

(七閃!?)

綾峰は太刀筋が届く前に『空間移動』をしてそれを逃れる。
瞬間、先ほどまで綾峰が座っていた車椅子がどこからともなく飛ばされた七つの太刀筋によって文字通り八つ裂きにされた。

(やっぱ、演算能力が上がっている?いや、それに加えて演算方法がよりライトになってるのか!)

ステイルはいつの間にか消えているところを見るともう人払いの結界を張りにいったのだろう。
物陰に隠れた綾峰は再度『念動力』を使い、今度は神裂の腕を狙う。

(まずは、その腕を潰す!)

しかし、それは軽々と避けられた。

「貴方の殺気はよく見えます。先ほどは不意を突かれましたが、もう私には効きません」

神裂の言葉と同時に綾峰のいた場所が正確に七閃で断ち切られた。
そこには既に綾峰はいない。

「隠れるだけではここは通れませんよ」

神裂の言葉が夜の街に響いた。



現在、10時。タイムリミットまで後2時間。







「まったく、神裂も人使いが荒い」

そう言って、ステイル=マグヌスは人払い用のルーンの結界を張っていた。

『知らねーよっつったんだ!テメエら敗北者の義務や償いなんてもんはそこら辺の犬っころにでも食わせてろ!』

ぎりっと奥歯を噛みしめる。

(何も知らないくせに……)

綾峰とは、本当は彼自身が戦いたかったが、神裂自身が戦うというのであれば彼が出る必要はない。
もともと2人とも共闘するには向かない戦闘方法であるのと、神裂は聖人だからだ。
聖人、神の子に似た人間であり、偶像の理論から神の力をその身に宿す人間。
そんな相手を満身創痍の綾峰が倒せるとは思わない。
いや、そんなことも考えつかない程に神裂は強い。

「さて、僕はインデックスの方に行っているか」

「きゅい」

突然、後ろから鳴き声がした。
ステイルが振り返ると、そこには黒い動物が歩いていた。

「? 何だ?こいつ」

見た事もない動物にステイルの興味がいく。
しかし、黒い動物らしきものはステイルに見向きもせず、歩いていった。

「……あっちは神裂達のいる方か?……いや、とりあえず僕はインデックスの方に行くか」

ステイルは動物から視線を外すとインデックスのいる小萌の家に歩き始めた。






しゅばっ!
という音と共に、黒い物体の塊が一瞬で八つ裂きにされた。

(ちっ。最高硬度でも無理か!)

神裂と綾峰の戦闘により学園都市の1画は戦場になっていた。
ビルの壁や窓は割られ、風力発電用に作られたプロペラの羽は斬られて地面に突き刺さっている。

「やめておきなさい、能力者。貴方が何をしようとも結果は変わりません」

神裂の冷静な声が綾峰に届く。

(わかってんだよ!くそっ)

そう、分かっていた。
今のままでは、綾峰は神裂に勝てない。
かといってもここで逃げても無駄だった。
神裂には綾峰の行き先はバレている。
きっと神裂は綾峰を捕まえるだろう。
それでは肝心な時に綾峰は上条を救えない。
なら、ここで綾峰が取れる方法は2つ。

1、時間を稼いで12時前まで待つ。
2、『首輪』のことを言って協力を煽ぐ。
3、神裂を倒して小萌先生の家に行く。

1なら一番楽だ。逃げ続ければいい。
あるいはもっと単純に戦闘を放棄して時間まで待っていればそれで済む。
だが、その方法は、

「はっきり言いますが、私がいなくてもステイルがいれば『記憶消去』は行えます。時間稼ぎをするつもりなら意味はないとだけ言っておきましょう」

神裂自身に否定された。
ならば、2は?
無理だな。
ぽっとでの能力者がいきなりお前らの上司が嘘を言っていると言って信じるはずもない。
そもそもなぜ綾峰が知ってるのかと言われて応える事が出来なければどんな理論も魔術師達には通じない。

故に3という結論に至る。
だが、今のままでは勝てない。
考えて分からないなら、作り出すしか無い。
この道を通り抜けるための方法を。










「………………いい加減、諦めたらどうですか?」

神裂は後ろを振り返らずに後方から現れた綾峰に言う。

「わりぃが、それはできない相談だ」

「でしょうね、なら貴方を倒して私はステイルを追い……その姿は?」

振り返り、神裂は驚愕する。
なぜならそこには、

「ドウシタ?神裂。アリ得ナイ物デモ見タカ?」

黒い鎧に包まれた綾峰が立っていた。

「その鎧はいったい……なるほど、あの黒い物体を体に」

「アア、俺自身ハモウ動ケナイカラナ」

「そうやって体を鎧で包み無理矢理にでも戦うつもりですか?」

「何カ問題デモ?」

「…………いったい何が貴方をそこまで追いつめているのですか?」

「モシ、ソレヲ言ッタ事デオ前ハコノ道ヲ譲ルノカ?」

「それはあり得ません」

「ナラ聞クナ、阿呆」

「………………貴方と喋っているとたまに貴方がただの子供なのではないかと思います」

「行クゾ」

瞬間、綾峰を包んでいる黒い鎧が膨張する。
右手には黒い盾、左手には黒いランスが握られていた。
神裂の手がぶれる。
綾峰の体が消える。
次の瞬間には綾峰は神裂の後ろからランスを突き立てた。
だが、それも七閃のうちの一太刀に斬られる。
同時に右腕部分が七閃の一太刀に斬られ、びきりとひびが入る。
しかしそれでも、

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

綾峰は咆哮を上げて突き進んでいった。



綾峰の攻撃は悪くはなかった。
むしろどちらかと言えば、非常に有効な攻撃を行い続けていた。
だが、スペックが違った。
スピードが、パワーが、あまりに違い過ぎた。
だから、終わりはすぐに来た。

「眠りなさい」

神裂の静かな言葉と共に七閃全部の太刀筋が綾峰に襲いかかった。
どさりと、綾峰は跪く。鎧は剥がれ、ところどころから血まみれの肉が見えていた。
それでも綾峰は立とうと踏ん張る。
それを見て神裂は言う。

「もう、やめなさい。貴方は頑張りました」

「ぐはっ………………」

跪いた綾峰の口から大量の血がこぼれる。
口を押さえるその手もぼろぼろで血が噴き出していた。

「……………くっ……そ」

どさっ
綾峰は力尽き、倒れた。
きん、と刀を仕舞う際の金属音が夜の無人の通りに響く。

「ですから、言ったのです。貴方が何をしようと結果は変わらない、と」

倒れ伏した綾峰の前で神裂が言った。

「ふぅ、けが人相手に生け捕りというのは骨が折れますね」

神裂はため息を吐き、同僚が待つアパートへと向かっていった

現在、午後11時。タイムリミットまで残り1時間。

スポンサーサイト

Comment

 
管理人にのみ表示する
 

Track Back

TB URL

HOME

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。