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とある科学の後日談集

(…………あれは夢だったんだろうか?)

久々に歩く街の中で、そんなことを思っていた。
特に意識せず歩いていたせいか、回りへの警戒を怠っていた。

「よう」

ぞくり、といつもの感覚が迫ってくる。

(ああ、”全部”元に戻ったのか)

少年は後ろを向く。
そこには少年の同級生である男子生徒が3人。
いつものように、にやにやと嫌な笑い方をしてこちらを見ている。

「また、金がなくなっちまったんだけどさ。金貸してくんね?」





がっ がっ
人通りの少ない路地裏で少年は蹴られていた。
いつものこと。これが少年の世界。
返す気のない金をせびられ、断ればこうやって暴力で奪われる。

「この前も言ったがよー。お前のウリは無期限無利息無制限だろうがよー」

そう言って、いつものように金を奪われるのだ。

(これが本当の僕の世界なんだ…………)

『幻想御手』で得た他人の力。
その力を試したくてある事件を起こしたが、結局掴まった。

(僕は結局この世界で生きていくしかないんだ…………)

同級生が少年の財布を取る。
少年はそれをいつものことだと諦めようとした時、

(ふざけんな!勝手に決めつけんじゃねぇ!!)

夢で見た1人の少年の言葉が脳裏に浮かんだ。
それは巨大な怪物に挑む少年の物語。
大事な人を奪われて、その身1つで戦って。
何度も何度も吹き飛ばされて、皆に諦めろと言われても戦って。

(っざけんな!勝手に決めつけてんじゃねぇ!!

 諦めるんだったら、勝手に諦めてろ!

 俺は絶対に諦めねええんだよおおおおおおおおおおお!!)

最後にはその手に大事な人を奪い返した少年の話。
その言葉を思い出したとき、少年は立ち上がった。

「返せ」

「あ?」

財布の中身を確認していた少年の手が止まる。

「か、か、返せって、言ったんだ」

少年の声は震えている。
がっ

「っぐ」

「だーかーらー。お前は俺等に金を奪われ続けてりゃいいんだよ」

同級生が蹴りをいれてくる。
いつもならそこで止まっていた。
しかし今日の少年は違う。
立ち上がり、

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

その身1つでぶつかっていった。

「なっ!?」

同級生は少年の突然の行動に驚いたのか、そのまま少年の体当たりを喰らい尻餅をつく。

「なんだなんだ?」

路地の外で見張りをやっていた2人が戻ってくる。

「なんか、こいつ調子乗ってるみたいだぜ。少し思い知らせてやろうぜ」

少年は3人に囲まれる。

「も、もう、ぼ、僕は、か、か、貸さない!」

「はぁ?」「はぁ?」「はあぁ?」

「僕は、前の僕とは違うんだ!」

「うるせぇんだよ!」

どすっ どすっ

同級生達が蹴りを入れてくる。
そのときだった。

「おい!そこ!何してる!」

救いの声が聞こえた。

「げっ。風紀委員(ジャッジメント)!?行くぞ!」

「お、おう」

「ま、待てよ」

そう言って口々に逃げ出そうとするが、即座に他の風紀委員達が取り押さえる。

「……………あ…」

「大丈夫か?君?」

「だ、大丈夫……です」

「さっき、通報があったんだ。路地裏でかつ上げをしてるやつらがいるってね」

「あ…………」

「大丈夫かい?手当てぐらいならするけど」

「…………あ、ありがとう……ございます」

少年の目から涙がこぼれた。

(自分はあの時なんてことをしたんだろう………ただの八つ当たりじゃないか)

罪の意識が持ち上がるのと同時に、少年は嬉しかった。
そして気付く。

世界はたった1つの勇気、それだけで変えられるのだと。







とある科学の後日談集








事件が終わり、木山は警備員に連れられ、綾峰は病院に担ぎ込まれた後、警備員達と風紀委員達は後片づけをしていた。

「初春」

御坂と話をしていた初春に白井の声がかけられた。

「あ、白井さん。もう大丈夫なんですか?」

「ええ、飲み込まれたと言っても気絶してただけですし。体調も異常はないですわ。それに今回私たいして役に立ってないですし…………」

はぁ、とため息をつく白井に初春が茶々をいれる。

「そうですか~?役立たないってよりも囚われのお姫様役って感じでしたけど?」

「と、とにかく!手当てが済み次第あなたは今日はあがって結構ですのよ」

「え?でもまだ仕事が…………」

昏睡者の恢復の確認、『幻想御手』の回収、やることはいっぱいあるはずだ。

「先ほど、病院から連絡があって。『幻想御手』の被害者達が次々に目を覚ましてるそうですわ。初春。あなたのおかげですわよ」

白井は初春を誇るように言った。





白井の言葉に駆けて行った初春を見送った後、

「それにしてもお姉さま、ありがとうございますですの」

白井が改まって礼を言ってきた。

「? なんの事?」

「『幻想猛獣(AIMバースト)』からお姉さまが救ってくださってんでしょう?」

「『幻想猛獣(AIMバースト)』?ってあの化け物のこと?」

「ええ、お姉さまがあれを倒したと聞きましたけど」

「あー、あながち間違えではないけど、私はアンタを助けてないわよ」

「え?それでは、誰が?」

「アンタを助けたのは綾峰さんよ。覚えてないの?」

「………………そう言われてみれば、あの時綾峰先輩に呼ばれていたような気もしますが…………」

「すごかったわよー。「黒子おおおお!!」って叫びながら何度も何度もあの化け物に挑んでいって。本当にもう、愛されてていいわねぇ」

「なッ!?あ…アイ?」

御坂の言葉に顔を真っ赤にして固まる白井。
普段あれだけ自分に対して愛だの愛だのと突撃してくる白井の珍しい反応に御坂が驚く。

(意外とこういう方向で押されるのは弱いのかもしれないわね)

そう思った御坂の口元がにたりと広がる。

「ええ、そりゃもう何度も「黒子おおお!」って叫ぶんだもの。最後にはあんたをあの怪物から引っ張り出して。ありゃぁ、もう愛よ」

「――――ッ!」

「そう言えば、起きた時に抱きしめられてて顔を真っ赤にしてた人がいたわね」

「――――――――ッ!!」

「そうだ!今度黒子も今度綾峰さんを下の名前で呼んであげたら?きっと嬉しがるわよ」

「――――――お」

「お?」

「お姉さまのイジワルーーー!!」

そう言って白井は走り去っていった。

「………………勝った」

御坂はいつもと違う展開に微かな満足感を感じていた。





ぴくっ

「!!」

ベッドの上の少女の指が動いたのを見て、横にいた女性、黄泉川に緊張が走った。
机の上に寝ているのは彼女の腹違いの妹。
これまで何年も探し続けていた。
先日の事件でやっと出会えると思えば『幻想御手』の効果でただ眠るだけとなっていた。
先ほど、同僚から事件が終わった事を聞き急いで駆けつけたのだ。

「…………うぅ」

「……ぁ…………」

正直、黄泉川は怖い。
これまで救えなかった時間のぶんだけこの娘は傷ついた。
それは自分の努力が足りなかった所為とは黄泉川は言わない。
だが、それでも救えなかったのは事実だった。
ごくり、と喉が鳴る。
雲雀はゆっくりと目を開けると大きく欠伸して、横にいた黄泉川を見た。

「…………だ、れ?」

「………………」

黄泉川は迷う。
応えるべきか、このままただの警備員として接するべきか。

(あの娘は絶対恨んでない。俺が保障する)

ふと、ある少年の言葉が浮かんだ。
ふっと黄泉川は笑う。

「久しぶり、大きくなったじゃんよ」

「………………おねーちゃん?」

「ごめんね。今まで助けられなくて」

「おねーちゃん!!会いたかったよぉぉ!」

そうして姉妹は再会を涙した。





佐天は屋上で夜風に当たっていた。

「佐天さん!」

入り口の方から声が聞こえ、振り向くと初春がいた。
全身包帯を捲いていてるその姿に、申し訳ない気持ちになる。
それでも普段のように挨拶した。

「やあ、初春」

「やあじゃないです!病室にいないからびっくりしたじゃないですか!」

「あはは、寝てただけだからね。特に体調悪いところもないし」

「でも良かったです。目を覚ましてくれて」

「うん、元通りだよ。全部。能力も使えない所も含めて」

「………………そうですか……」

「やめることにしたよ、私」

「え?」

佐天の言葉に初春は固まる。
佐天がここから消えてしまうのかと思って。

「そ、それは…………ここから出ていっちゃうってことですか?」

「? 何を言ってるの?初春」

「だ、だって今やめるって」

「うん。やめるんだ。諦めるのをね」

「え?」

「今までは、なんかレベル0だってことを理由にして諦めてたんだ。でもあれを見たら諦めてる自分が嫌になってさ」

「あれ……ですか?」

「うん。どっかの誰かがさ、絶対不可能だってことに挑戦し続けて、最後は不可能を可能に変えたの。すごかったよ」

「そうですか」

「だから、私もあんな風になりたい。強くなれなくてもいい。あんな風に諦めない強さが欲しい」

「…………」

佐天は初春を抱きしめると言葉を続ける。

「それに、私さ。ずるして、あんたを危険な目にあわせて。もう少しで私、大事なものを「ふえっくしょん!!」…………」

至近距離でのくしゃみ、ようは初春の鼻水が佐天の顔についていた。

「あ、アレ?スススススミマセン。風邪がぶりかえしちゃったのかな」

「初春」

慌てて謝辞を述べる初春にずいっと佐天が体を前にだす。

「ひえぇぇぇ」

怒られると思ったのか初春は涙目になる。
その顔に佐天はティッシュを押し付けると、自分の顔を拭きつつ言った。

「鼻水垂らしてると、女を捨てるわよ?」

「はひ。すひません」

そう言って鼻をかむ初春の横で、佐天は思う。

(もう1回、綾峰さんにあってみたいな)

星が2人を照らしていた。







窓のないビル。
学園都市第七学区に存在するビルの内部に、それはいた。
ごぽっ
巨大なビーカーの中に逆さまに入れられた存在。
それは囚人のようであり、聖人のようであり、男のようであり、女のようであり、大人のようであり、子供のようでもあった。
それは呟いた。

「これで、虚数学区・五行機関一部展開の第一実験は成功。それにしても『強制終了(リセットボタン)』も不完全とはいえ覚醒するとは…より早く次の段階へ移行できそうだな」

つまらない声で、つまらなそうに呟いた。


世界は今日も思惑通りに進んでいく。

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