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七月二十四日 四【幻想御手編】

気がつけば、白井が掴まっていた。
黒い塊。
胎児の様でそれでいて醜怪な化け物にも見えるそれは、触手のような物で白井を掴み。

「先……輩……………無事で良かっ」

白井の言葉を満足に聞かせることもなく体内に取り込んだ。

「白………井?」







とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第18話









初春と白井がみたそれは胎児のような姿にも見えた。

「な、何…あれ?」

初春は呆然としていて、怪獣映画ばりばりの化け物(モンスター)に驚いていた。

「そ、そう言えば!お姉さまはどこにいらっしゃいますの!?」

「え!?御坂さん。ここに来てるんですか?」

白井はここで御坂と通信が途絶えた旨を説明すると、下にいる化け物の方を見た。

「もし、いるとしたらあそこですわね」

「へ?あのもしかして白井さん。あんなののところに行く気ですか!?」

初春は愕然した表情になる。

「私のお姉さまセンサーがあそこにお姉さまがいると申しておりますの」

「は、はぁ」

「初春、私はお姉さまの救出、あるいは援護に向かいますわ。あなたはここにいる警備員達を起こして指示を仰ぎなさい」

「はい」

「それじゃ、また後で」

そう言うと白井は『空間移動』で消えた。







爆発、火の壁、氷の槍、雷、水流の弾、念動力………
黒い胎児はそれらを一斉に使い、暴れていた。
その余波は御坂達のもとにも届く。

「――――ッ何なのよ、アレ」

御坂は鋼鉄や砂鉄で組み上げた即席の盾でそれらの余波を防いでいく。
黒い胎児が暴れ回っている隙に御坂は背後に電撃を当ててみた。
瞬間、いとも容易く黒い胎児の体が爆ぜる。

「いいっ!!あっさり?」

(爆ぜた!?血も出てないしやっぱり生物じゃない?)

あまりの容易さに逆に驚く御坂だったが、すぐに冷静に相手を分析していく。

「!?」

しかしすぐに黒い胎児は爆ぜた部分を補うように体を修復した。
しかも前よりも少し大きめになっている。
黒い胎児の白い目が御坂の方を向く。

「げっ!」

空気中にできる3本の氷の槍が御坂を狙ってくる。

「―――――――ッ!!」

御坂はそれをダッシュで逃げ切ると、すぐに黒い胎児に向き直って、

「やろうってなら相手に………ってあれ?」

黒い胎児は御坂の方など見向きもせず、その場で暴れている。

「なにあれ?闇雲に暴れてるだけなの?」

御坂が疑問を口にした瞬間、

「おねええええええええええええええさまあああああああああああああああああああ!!!」

白井が落下型ヒロインのごとく御坂の上に降ってきた。

「なっ!?黒子!?」

「大丈夫ですの!?というか肌に無数の擦り傷が!私が癒ぎゃっ!」

御坂が電撃でマウントポジションをとっていた白井を黙らせる。

「そんなことより、あんたんとこの上司さんがそこで倒れてるけどいいの?」

「へ?」

御坂の言葉に白井は振り向いて、気がついた。

「綾峰先輩!!?」

そう言って黒子はすぐに御坂を放すと綾峰のもとへ駆けつけた。

「綾峰先輩!!綾峰先輩!!お、お姉さま?何で綾峰先輩がこんなところに?」

揺さぶってみるが、呻くだけで起きはしない。
白井は当然の疑問に行き着き御坂に訊ねた。

「今はそんなことより、綾峰先輩とあそこに倒れてる木山をどかすわよ。こんなところで寝かしてたら戦闘に巻き込まれるわ」

黒い胎児の方を見ると警備員達と戦闘をしていた。

「は、はい。では私が」

そう言って黒子は木山と綾峰を連れて『空間移動』で安全な場所へと向かった。

「どうやりゃいいか分からないけど………やるしかないわね」

御坂は黒い胎児の方に走っていった。





綾峰は夢を見ていた。
それは1つの夢ではなく、夢の集合体そのもの。
いや、正確にはそれは夢ではなく記憶だった。
1人の少年は幾千幾万の努力をたった1つの能力に打ち破られて絶望し、
1人の少女はかつて後輩だった少女が自分を抜いて手の平を返した事に嫉妬し、
1人の少年はレベル5と己の間にある超えられない壁を見て諦念し、
そんな思いが記憶が、幾千と集まり、綾峰を取り囲んでいた。
そして思いだされる綾峰自身の記憶。

「ようやく、完成した。これでこの子は超能力者の仲間入りだ」

「ああ、アレイスターの言っているあの第1位だって目じゃない」

「まさにこの子は科学の天使に祝福された」

そう言って喜ぶ科学者達の後ろに俺の仲間たちの死体は転がっていた。

「あれか?あれは君の能力を強化するためにあったんだ。良かったじゃないか。仲間が”君のため”に死んでくれて」

やめてくれ。
力なんていらない。
仲間を返してくれ。
返して………くれ………。

綾峰は徐々に深い闇に飲み込まれていった。





白井が2人を移動させて、綾峰の頭を膝に乗せて看病をしているとかちゃ、という無機質な音が聞こえた。
振り向くと、いつの間に起きたのか、木山が自らの頭に銃口を向けていた。

「なっ!?やめ「ダッメーーーーーーー!!」って初春?」

初春は猛ダッシュで木山に襲いかかると拳銃を叩き落とした。
白井もそれに続いて拳銃に触れると少し離れた場所に飛ばす。
そして初春の手錠を外させると、木山がぽつりぽつりと語り出した。

「虚数学区というものを知っているかな?」

「虚数学区ってあの都市伝説のですか?」

「ああ、虚数学区というのは230万人の能力者達のAIM拡散力場の集合体だったんだ。

 そしてあそこにいるのもおそらくそれと同じ原理で誕生した………『幻想猛獣(AIMバースト)』と呼んでおこうか。

 『幻想御手』のネットワークによって束ねられた1万人のAIM拡散力場が触媒になって産まれ学園都市のAIM拡散力場を取り込んで成長しようとしているのだろう」

「そ、そんなものがなぜあんなに暴れてるいるのですの?」

「たぶん、産まれた際にネットワークの核だった私の感情に影響を受けているんだろう」

「止める方法は?」

「初春?」

「………さっき渡したプログラムは持っているかい?あれはネットワークを破壊するものだ。もしかすればネットワークを破壊すれば倒せるかもしれない………………まぁ君が私のいうことを信じるかどうかだがね」

「信じますよ」

「まったくここは他人をすぐ信用する連中が多くて困る」

笑顔で断言した初春に木山は頭を抱えながら笑う。

「初春、行くのでしたら私も」

「いえ、白井さんは綾峰さんと一緒にいてあげてください」

「ちょ!?そんな呑気な「私が行きたいんです」…………分かりましたわ」

初春の迫力に押され、白井は渋々頷いた。

「じゃ、行ってきます」

初春は駆け出していく。
そして途中で振り返ると言った。

「白井さーん。起きたときに白井さんがいれば綾峰さんの好感度アップですよ~!」

「なっ!?何を言って!!?」

白井は一気に顔を赤くする。

「ほう、君等はそういう関係だったのか」

「違いますわよ!!?そ…そりゃぁ、綾峰先輩は頼りになりますけど…その…って何をそこで微笑んでるんですの!?」

「いやぁ、初々しいなぁと。そう言えば、最近は眠る王子を起こすには姫の口付けが一番らしいぞ?」

「―――――――ッ!!」

「あはははははははは」

木山の笑い声が響いた。





「っ!本当にキリがないわね」

1人、単身で『幻想猛獣(AIMバースト)』と戦闘をしている御坂が呟いた。

「それにしても…こいつ。私の攻撃に関係なく苦しんでない?」

御坂が疑問を口にしていると、『幻想猛獣』は背中から生やした黒い光を1点に集中させ始めた。

「!!」

そして、次の瞬間、黒い光は爆発を起こす。
幾つかは、御坂の元にやってきて御坂の盾ごと吹き飛ばした。

「きゃああ!!」

1つは、ネットワークを破壊するために階段を走る初春の元へやってきて初春ごと階段を吹き飛ばした。

「きゃっ!!」

そのまま初春は気絶する。
更に、もう一つが白井達の元へやって来る。
そして黒い光が白井達を吹き飛ばした。

「「きゃあぁ!!」」




ぶるん、と『幻想猛獣』の体がぶれた。
まだこの世界に来るには『幻想猛獣』は不安定だった。
だからこそ『幻想猛獣』は探していた。
この世界でも安定な存在になるための物体を。
ふと、『幻想猛獣』の目が1人の人間を捕らえる。
それは『幻想猛獣』をこの世界へ生み出した人間。
あれを取り込めば体は安定する。
そう結論づけた『幻想猛獣』はゆっくりとその人間、綾峰唯鷹へ近づいていった。




「う…うぅ」

白井は呻きつつ、体を起こした。
どうやら直撃は避けたようだったが、木山は遠くに吹き飛ばされたようで傍には見えなかった。
傍に吹き飛ばされていた綾峰は先程の衝撃でも目を覚まさないのか、唸るだけだった。

『そう言えば最近は王子の目を覚ますには姫の口付けが一番らしいぞ?』

木山の軽口を思い出す。
回りを見る。
誰もいない。
と言うよりも巻き上がった煙で視界は塞がれていた。
白井はそっと、唇を綾峰の頬に近づける。



「さっさと起きてくださいまし。さもないと、お姉さまが全部手柄を持っていってしまいますわよ」

真っ赤になった白井が言った。





「くっ………アイツは?」

少しの間だったが、気絶していたらしい御坂は起き上がると『幻想猛獣』の姿を探し始めた。
すると先ほどとは逆に元の場所に戻るように『幻想猛獣』が移動していた。

「あっちか!!」

そう言って御坂が駆け出していく。




ふと、白井と綾峰の回りが影で覆われた。
白井が見ると、いつの間にか目前に『幻想猛獣』が来ていた。
煙のせいで発見が遅れたのだ。

「う、うぅ」

同時に、綾峰が目を覚ましたようだった。

「くっ!」

白井は慌てて『空間移動』の演算をするが、突然のことに動揺して演算がうまくいかない。

「jais貰keas捕imq!!」

ノイズの走った声が聞こえてきた瞬間、巨大な触手のような物が綾峰を狙って襲いかかってきた。

「ッ!!させませんわ!!」

そう言って綾峰の前で白井は立ち塞がり、触手に掴まった。

「うっ…………ここは?」

白井の後ろから綾峰の声が聞こえてきた。

「先……輩……………無事で良かっ………………た」

途中から触手が白井を取り囲み、体内に入れた。

「白………井?」

最後に白井の耳には綾峰の声が聞こえた気がした。






御坂にも白井が触手に取り込まれる瞬間が見えていた。

「黒子ーーーー!!」

慌てて叫び、電撃を放とうとするが、

「やめろ!!御坂!!」

綾峰の声に留まった。

「で、でも黒子が!!」

「バカ野郎!今電撃なんて放ったら黒子まで感電しちまうだろ!」

「あ………くっ」

危うく後輩を自らの手で怪我させるところだった自分の愚かさに御坂は唇を噛む。
綾峰は少しの間『幻想猛獣』を視ると、言った。

「御坂。聞いてくれ」

「何?」

「あれは、AIM拡散力場の集合体だ。俺の目には無数のAIM拡散力場が集まってるのが視えてる」

「あれが?AIM拡散力場の集合体?」

「それでだ、やつの中心に核がある。白井もそこの近くに取り込まれてる」

「視えてるの?それも」

「ああ、こんな目でもたまには役にたつらしい」

苦々しげに言う綾峰に御坂は訊ねる。

「そ、それでどうすれば!?」

「俺が白井を救出する。そして俺が白井を救出したらその瞬間、一撃で核を破壊しろ」

「………おいしい役をもらっちゃっていいの?」

御坂が不敵に笑う。
綾峰も同じく不敵に笑った。

「頼むぜ『超電磁砲(レールガン)』?」

「任せなさいっての『多重能力者(デュアルスキル)』」

そう言って2人はそれぞれの持ち場についた。




目が覚めた綾峰は違和感を感じていた。

(これは何といえば良いのだろう)

走りながらそう考えていると『幻想猛獣』が綾峰に気付き、能力で攻撃をしてくる。
しかし、それは綾峰の『先読み』の前では意味をなさない。
軽々と避ける綾峰に『幻想猛獣』は触手で攻撃をしてきた。
それを視て綾峰は、

(いける)

と何故か確信し、触手を右手で、

「うおおおおおおおおおおおお!!」

ぶん殴った。
瞬間、本来勝てるはずもない質量差のはずなのに、触手が一気に瓦解した。

「                  !!」

『幻想猛獣』が人間では聞こえないような声で悲鳴を上げる。
そして綾峰は気がつく。
今の自分の回りには異様にAIM拡散力場が密集していることに。

(なんだ?これは?)

だが、そんな疑問を考えている時間はない。
できるのなら、やるしかないのだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

雄叫びを上げながら綾峰は白井のいる『幻想猛獣』の胸の部分に跳びかかる。
瞬間、別の触手によって、吹き飛ばされた。
そのまま地面に綾峰はめり込む。

「っぐ」

だが、思ったよりもダメージはない。

(いける!!)

綾峰はまた白井のいる胸の部分に向かって走りだした。




「なに、アレ?無茶苦茶じゃない」

御坂は綾峰と『幻想猛獣』の戦いをそう表現した。
『幻想猛獣』がどんなに大量の能力を使っても綾峰はまるで当然のようにそれらを全て避けていく。
そして『幻想猛獣』は近接戦になると触手で綾峰を攻撃するが、その度に綾峰がそれらを殴り砕いていく。
しかし『幻想猛獣』も必至なのか綾峰の少しの隙を狙って触手で弾く。
それもあの大きさで攻撃されたら普通の人間はすぐに立てなくなるだろう、いくら鍛えてあるとは言え今の綾峰は異常だった。

「これも、『幻想御手』の効果なの?」

「こんな効果は『幻想御手』にはないよ」

御坂の呟きに答えたのは起き上がってきた木山だった。

「あれは純粋に彼の能力だろう。それにしても、奇跡だな」

「何が?」

「本来ならば彼は『幻想御手』に飲み込まれて昏睡者となっているはずだからだ」

「で、でもああやって戦ってるわよ」

「だから「奇跡」なんだよ」

木山の言葉に御坂は信じられない気持ちだった。



「う、うぅん」

先ほどの衝撃で気絶していた初春が目を覚ました。

「あ、私………そうだ。チップは?」

胸ポケットに手を入れてチップの安否を確認する。

「よかった。壊れてない」

そう言って初春は立ち上がると、階段を登っていく。

(私だって風紀委員なんだから、佐天さんや皆を守りたい!!)

その時、綾峰と『幻想猛獣』の戦闘による攻撃の流れ弾が初春の方向に飛んできた。

「!?」

爆風に包まれる初春は無事だった。

後ろを見ると、

「そこまでするってことは何かあるんでしょうね?」

警備員の女性が盾で守ってくれていた。

「はい!!」






何十回と吹き飛ばされただろう?
数えるのも馬鹿馬鹿しいほどに吹き飛ばされて、それでも後1歩が届かなかった。
既に体はぼろぼろだった。
AIM拡散力場を密集させて敵を殴る瞬間にはAIM拡散力場が収束して力となる。
だが、それと同時に綾峰の体にもダメージが入っていた。
綾峰の額には熱病患者のように玉のような汗が噴き出し、体からは悲鳴が聞こえていた。
それでも綾峰は、

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

止まらず、走っていた。
そこに声が聞こえる。

(諦めろよ)(無理よ)(不可能だ)(勝てない)(無理だって)(負けよ)(強過ぎる)(勝てるわけが無いわ)…

小さい、それでも圧倒的な数の声が綾峰の脳裏に聞こえてきた。
それは『幻想御手』を通しての声なのか、わからないが、綾峰は叫ぶ。

「っざけんな!勝手に決めつけてんじゃねぇ!!

 諦めるんだったら、勝手に諦めてろ!

 俺は絶対に諦めねええんだよおおおおおおおおおおお!!」

その姿は正に鬼神。
あらゆる目の前の障害を砕き切るかの様に綾峰は突き進む。

走る。

避ける。

殴る。

吹き飛ばされる。

立ち上がる。

走る。

吹き飛ばされる。

立ち上がる。

また走る。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!黒子おおおおおおおおおおお!!」

(………………………………………………)

綾峰の声に、勢いに、綾峰の脳裏に聞こえていた声達が押し黙る。

しかしそれにも限界が訪れる。

後一歩が足りないのだ。
何度立ち上がっても、何度走っても、何度その触手を殴り砕いても、
後、一歩が足りなかった。

「ちっくっしょう…」

目がかすみ、腕に力は入らない。
足は鉛の様に止まってしまう。
限界だった。
それが綾峰の限界だったのだ。

触手が迫る。
先ほどまでよりも明らかに速度の落ちた綾峰を確実に止めるために複数の触手が綾峰を殴り飛ばそうと迫ってくる。
それを回避する力も殴り飛ばす力も既に綾峰には残っていなかった。

(ここまでなのかよ…)

綾峰は悔しさに歯を噛み締める。
その時、しっかり聞かなければ聞き逃しそうな、それでも確かに

(がんばれ、おにーちゃん)

女の子の声が聞こえた。
綾峰の顔に笑みが浮かぶ。
それだけで力が湧いた気がした。
だから目の前に迫った触手を殴り飛ばした。


しかしその次に迫った触手を殴り飛ばす力はなかった。
そのまま綾峰は後方に吹き飛ばされる。
後半歩だった。
もう少しで届くのに。
吹き飛ばされた綾峰は、立ち上がる。
だが、動けない。
体が拒否反応を起こしていた。
これ以上は死ぬ。本当に死ぬ。

その時、

(頑張ってください!!)

後輩の友人である元気な少女の声が聞こえた。

(が、がんばれ)

どっかで聞いたスプーン男の声が聞こえた。
声は広がっていき、

(頑張れ!)(がんばれ!)(がんばって!)(もう少しだろ!)(がんばれよ!)(もうちょっとだ!)(頑張ってください!)(負けんな!)(行けええ!)…

先ほどまで、押し黙っていた声達が口々に声を張り上げた。
力が湧いた。
足が動く、手が動く。
だから綾峰は走り、

「黒子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

叫び、
そして………………届いた。






綾峰の手が『幻想猛獣』に届いた瞬間、
街中にある曲が流れていた。

「成功しました!!」

初春が声を上げる。




綾峰は右手を握り、『幻想猛獣』の胸を思いっきり殴りつける。
右手は既にぼろぼろで血まみれだった。
それでも構わず、殴り、弾き、そして白井が見つかった。
そこに『幻想猛獣』の触手が迫る。
綾峰は白井を救うことで手いっぱいで触手を相手にする余裕はない。
しかし、触手は綾峰に届かなかった。

「少し、あんたは静かにしてなさい」

御坂が砂鉄で切り落としたのだ。
その間に綾峰は白井の体を掴み、思いっきり外に引っ張り出した。
そして綾峰と白井が落ちていく。

「御坂!!今だああああああ!!」

「ハイハイ、分かってるわよ。

 あんたらもこんなところで苦しんでないでとっとと帰りなさい」

超電磁砲(レールガン)が優しくひっぱたくように『幻想猛獣』を貫いた。
最後に、ぱりんという音がして、『幻想猛獣』は消えていった。







「それにしても、たいしたものだ。あれを一撃とは」

「まぁ、ほとんどあいつが頑張った結果だし。それに途中で再生能力がなくなってたみたいだし、私の手柄なんてものじゃないわよ」

「そうか、花飾利の彼女が『幻想御手』のアンインストールを成功させたんだろう」

「へぇ、初春さんが。ところで、アンタはこれからどうするの?」

「ネットワークを失った今、私に警備員(アンチスキル)から逃れる術はない」

木山が言い終えると同時に増援の警備員達が到着した。

「だが、あの子たちのことを諦めたわけじゃない。もう1度最初からやり直すさ。理論を組み立てるのはどこでもできるからな。刑務所の中だろうと、世界の果てだろうと、私の頭脳は常にここにあるのだから」

御坂は体を起こす。

「ただし、今後も手段を選ぶつもりはないぞ。気に入らなければその時はまた邪魔しに来たまえ」

「アンタねぇ………」

「彼にもそう伝えといてくれ」

そう言って、木山は警備員達に手錠をかけられると護送車に乗り込もうとする。
そこへ御坂は声を掛ける。

「しっかし脳波のネットワークを構築するなんて突拍子もないアイデアをよく実行に移そうと思ったわね」


「複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワーク、『学習装置(テスタメント)』を使って、整頓された脳構造。これらは全て君から得たものだ」

「は?私そんな論文書いた覚えないわよ」

「そうじゃない。君の圧倒的な力をもってしても抗えない…………君も私と同じ限りなく絶望に近い運命を背負っているという事だ」

「…………………………」

木山の不吉な予言に御坂は黙る。


だが、と木山は言葉をつなげる。


「彼のように、諦めなければ、その運命すらも覆せるのかもしれないな」



御坂は綾峰を見る。
力を使い果たしたのか白井を胸に抱いたまま気絶していた。

「そうかもね」

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