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七月二十四日 参【幻想御手編】

「さて、お喋りはここらへんにして、そろそろ始めよう。レベル5の『超電磁砲』それに噂の『多重能力者』。どちらが来る?それとも同時に来るかい?私はどちらでも構わないが。

君たちに、一万の脳を統べる私を止められるかい?」
木山は不敵な笑みを浮かべている。

「それじゃ、私が「いや、俺がいこう」……ちょ!綾峰先輩!!?」

「御坂、お前は一般人だ。それはどこであろうと変わらない。一方、俺は風紀委員(ジャッジメント)。なら誰が彼女を止めるべきかはわかるだろ?」

「っく。一般人だからって……」

「頼む、御坂。たまには先輩にいい格好ぐらいさせてくれ。それにお前が怪我したら……」

「怪我、したら…?」

「白井に殺される(ガクブル」

綾峰は本気で震えていた。

「そ、そう。わかったわ。でも危なそうだったら参戦するから」

そう言って御坂は後ろに下がった。

「そいじゃ、始めよう。いや、違うか。

……これで終わらせよう」

「来たまえ」

『多重能力者』と『多才能力者』。複数の能力を使う能力者同士の戦いが始った。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第17話








連続した爆発音が高速道の上で鳴り響く。
爆発によって起きた煙から、1つの影が飛び出してきた。
綾峰だった。

「驚いたな、本当に能力が使えるなんて」

「まぁな。だが、避けてばかりでは私は止まらないぞ?」

煙の中から現れた木山は当然だという表情で言うと、右手を軽く上に振り上げた。
それを見ると同時に綾峰は右に少しずれる。
次の瞬間、綾峰がいた場所を火の壁が走った。

「そんな大降りじゃ。俺には当たらねーぞ?」

そう言って綾峰は一気に木山に近づいていく。

「そうでもないよ」

木山は近づいて来る綾峰に余裕の表情を見せながら、道路にショックウエーブを叩きつける。
木山を中心に円形の力が走った後に、高速道が一気に砕けた。

「くっ!!」

綾峰は落ちかけながら、黒い物体を出して乗る。
木山も同時に落ちるが、『念動力』でゆっくり地面に下り立った。

「すごいな、それはそんなこともできるのか」

木山は感心したように言うと、水流を弾に変えて放ってきた。

「まあな。だが、それほど軽々とレベル4を使いまくるのは卑怯だと思うね」

言った瞬間に、綾峰の姿が消える。

「『空間移動』か!?」

「ご名答」

綾峰の声が木山の背後から聞こえてきた。

「がっ!!」

背後からの蹴りに木山は瞬間的に出した『念動力』でダメージを軽減する。
が、軽減しきれず、その場で倒れる。
綾峰はそのまま追撃をしようとする。
しかし、すぐに水流の弾が綾峰を狙って上空から落ちてきた。
綾峰はその場からダッシュで逃げる。

「『空間移動』を使うとは、君も中々卑怯じゃないか?」

木山は体勢を立て直して言った。

「なーに、こっちはこれが1日2回しか使えないんだ。それを使わせたんだから、褒めてやるよ。まぁ、2回目は使えてもその後戦闘不能になるから困るんだが」

「そうかい、それにしても拍子抜けだな。『多重能力者』ってのはこの程度なのかい?」

「いいのか?俺が本気出せば、すぐに終わっちまうぜ?」

「やれるならやってみたまえ」

「あっそ。なら」

瞬間、綾峰の姿が消える。

「やらせてもらう」

木山の肩に手を当てて綾峰は電撃を、

 流せなかった。

木山が自らの背後の部分に水流を叩きつけたのだ。
綾峰は水流をもろに喰らってしまう。

そしてそのまま宙高く飛ばされ、地面に落ちて動かなかった。

「先ほどの攻撃で君が来るのはわかっていたからな。先読みさせてもらった」

木山は倒れた綾峰に言う。

「意外とたいしたことはなかったな、『多重能力者』」

「さぁ、次は君の番だぞ。レベル5。それともやめとくか?」

木山は高速道にいる御坂に話しかけた。

「私は別に構わないんだけどね。そこにいる奴がなんて言うか」

「彼はもう倒したぞ」

御坂の声に木山は愉悦の声で言った。

「誰が?」

「は?」

御坂の質問に木山は何を言っているという表情になる。

「誰がアンタに倒されたって聞いたのよ」

「だから私が綾峰を倒したと「そいつはすごいな」!?」

瞬間、綾峰の電撃が木山に走った。

「がッ!!?」

木山は倒れると背後には綾峰がいた。

「いったい、どうやって……それにさっきの一撃で倒した……はずっく!」

先ほどの木山の水流による一撃は入れば防護服に身を包んだ警備員でさえ一発で気絶させたのだ。
ならば普通の学生服しか着ていない綾峰がその一撃を喰らって立っているはずがない。

「喰らってないださ。ほれ、見てみろ」

綾峰が指さす方向には、先ほどと同じく綾峰が倒れていた。

「馬鹿な!?」

木山が驚愕に叫んだ瞬間、倒れていた綾峰が消えていく。

「分身と『空間移動』を同時に行ったのさ」

「待て、さっき君は『空間移動』は1日2回までと言ってなかったか?」

「そうだよ?嘘は言ってない」

「ならば計算がおかしいぞ。少なくとも君は3回は『空間移動』したはずだ」

「別に『空間移動』つってもレベル4だと2回までなだけだよ」

「何!?」

「世の中には、レベル3程度の演算でも相手の背後に座標を設定すれば『空間移動』できる能力者ってのがいるのさ」

「何でもありだな」

「まあな。あんたが1万人の演算能力を使う能力者なら。俺は230万人の能力を使う能力者ってわけだ。もともと勝てるわけがないんだよ」

「くっそ」

木山は立ち上がろうとする。

(電撃の威力をセーブしすぎたか!?)

「おいおい、まだやる気かよ?」

「私は、あの子たちの為に!!止まれないんだああああああああ!!」

そう言って木山は水流の弾と火の壁、そしてアルミの缶を綾峰に投げつけた。

「ちょっ!?やばっ!」

綾峰は慌ててそれらを避けていく。
既に『空間移動』は使えない。
分身と『空間移動』を同時に行ったので演算能力が一時的に落ちているのだ。

「く、ってうおおおおおおおお!!」

綾峰は水流の弾をかろうじて避けて、火の壁に少し髪を焼かれ、アルミの爆弾に巻き込まれた。
『量子変速』によるアルミの爆発で視界一瞬塞がれるが風によってすぐに晴れた。
そこには、黒い物体で壁を作り爆弾を防御していた綾峰がいた。
綾峰は壁を解除して木山と向き合う。

「さっきのあの子たちってのは何のことだ?」

「ある実験で昏睡したままになっている置き去りの子たちさ。私の目的は彼らの恢復手段を探るためのシュミレーション」

「っ!?」

「だから、私は、止まらない、止まれないんだ!!」

そう言うと木山はごみ箱から大量のアルミ缶を『念動力』で出してきた。
その数は軽く100は超えていた。
だが、綾峰の視線はそこには向いていなかった。

「置き去り……だと?」

「ああ、私の生徒たちさ。君ならわかるだろう?『多重能力者』。あの仮面と雨合羽を着て違法に置き去りを置いていた研究所を潰して回っていた君になら」

「……………………」

この時、綾峰の心には迷いがあった。
木山は自分と同じだ、ということに気がついたからだ。
方法は違えど、自分と同じく置き去りを救う為に戦っている。

(俺には、こいつを止める権利があるのか?)

故に、その一瞬の隙が敗北に繋がっていた。
綾峰の前でアルミ缶の1つが収縮した。
爆発の前兆だった。

「や、やば!」

黒い物体で守ろうとするが、間に合わない。
高速道の下で爆風と共に轟音が響き渡った。



そして、綾峰は倒れた。
それを背にして木山は進んでいく。

「待ちなさいよ。これで終わりだと思ってんの?」

「そう言えばまだ君もいたんだったな。レベル5」

ちらりと、御坂は綾峰を見る。

「彼は強かったよ。だが、私も止まれないんだ。為さねばならないことがある」

「その為さねばならないことってのはこれだけの犠牲を生んでもまだやらなければならないの?」

御坂の問に木山は言う。

「誰も犠牲にはしない。彼だって、警備員達だって生かしてある」

「ふざけんじゃないわよ!!」

御坂の声が戦場に響いた。

「誰も犠牲にはしない!? あんたの身勝手な目的にあれだけの人を巻き込んでおいて、人の心を弄んでおいて…こんなことをしないと成り立たない実験なんてロクなもんじゃない!! そんなもの見過ごせないわ!!」

「ハーー。やれやれ。レベル5と言えど所詮は世間知らずのお嬢様か、それならまだ彼の方が理解が早かったよ。
 学園都市で君たちが日常的に受けている『能力開発』。あれが人道的な物だと君は思っているのか?」

「!?」

「学園都市は『能力』に関する重大な何かを我々から隠している。学園都市の教師たちはそれを知らずに230万人の学生たちの脳を『開発』しているんだ。

 それがどれだけ危険なことかわかるだろう?」

「……なかなか面白そうな話じゃない、アンタを捕まえた後でゆっくり調べさせて貰うわっ!!」


御坂と木山の戦いが始った。





(俺は……どうすればいい?)

気絶からすぐに気付いた綾峰はそれでも動けないでいた。
木山との会話に悩んでいたのだ。
確かに、1万人もの脳を使った演算装置ならば恢復手段を講じることができるかもしれない。
それと同時に、そのために未だに雲雀達は眠り続けている。
木山が言う通りならば彼らはこの後何の後遺症もなく起きることができる。
気がつけば数日経っていた、それだけの話になるだろう。
だが、それで良いのか?
彼らは心を弄ばれて、利用されて。
使い終わったらそれまで。
それが本当に正しいのか?

いや、思い出せ、綾峰。
犠牲が出ない?
それじゃぁ、虚空爆破事件の被害者達はどうなんだ?
それじゃぁ、『幻想御手』を無理矢理使わされた雲雀はどうなんだ?
それじゃぁ、『幻想御手』を使って犯罪に走る者達を止めようとして体中怪我をしていた白井はどうなる!?
犠牲なんてそこら中にあるじゃないか。

それに、誓ったじゃないか。
『我が世界の全てを守る』
大仰に言い過ぎた気もする。
でも、それでもこれが俺の思いだ。
ならやるしかないよな。メンドクセー。
綾峰はポケットにいれていた物に手を伸ばした。

そこに既に迷いはなかった。






木山と御坂の戦いは能力の応戦だった。
綾峰は肉弾戦で挑むのに対し、御坂は己の能力で木山の攻撃を防ぎ、戦っていた。
木山も先程の戦闘では生かしきれなかった多才な能力を使い御坂の攻撃を防ぎ、戦っている。
そんな中、急に2人の動きが止まった。

「あれ?」

「何故だ、何故能力が発動しない!?」

慌てる2人に声がかかる。

「AIMジャミング」

「「!!!」」

2人が振り向いた先には綾峰が立っていた。

「もう復活したのか」

「ああ、アンタらの能力は封じさせてもらった。今からアンタらは俺の許可なく能力の発動はできない」

「馬鹿な!不可能だ!!」

木山の能力は1万人能力を使った『多才能力』。その中にはレベル4の能力も多数ある。
しかも御坂に至っては正真正銘のレベル5。
それを全て妨害するなど、レベル5でなければ不可能なはずだった。

「それはそうだ。確かにレベル3の俺ならアンタら2人の能力の発動を止めることはできない」

「なら、何で…………まさか!!?」

「綾峰先輩、まさか。聞いたんですか?」

木山と御坂は綾峰の手に音楽プレイやーが握られていることに気がついた。

「ああ、『幻想御手』意外といい曲だったぜ?」

「私に取り込まれるんだぞ!!」

「だが、すぐにじゃないだろ?」

「…………正気か!?」

「わりぃな。あんたの目的、よくわかった。あんたの気持ちもよくわかる。

それでも、俺はその幻想をぶち消してやる!!」
そう言って綾峰は走り出す。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「くっそおおおおおおおおおおおおおお!!」

綾峰の電撃が木山を貫通した。
木山が倒れていく。
その瞬間、鋭い痛みと共に綾峰の脳裏に鮮明なイメージが流れ込んできた。

(木山センセー)

「っぐ…これは?」

それは1人の研究者と置き去りと呼ばれる子供達のたった一年の記憶。

「『幻想御手』でつながっているから…なのか?」

(厄介な事になった。だが、とにかく実験を成功させるまでの辛抱だ)

(子供は嫌いだ、騒がしいし、デリカシーがないし、失礼だし、悪戯するし、論理的じゃないし、なれなれしいし、すぐになついてくるし)

(AIM拡散力場制御実験、何度も計算を繰り返し準備してきた、何の問題もない。これで先生ゴッコもおしまいだ…)

イメージが一気に変わっていく。
変わり果てた子供達の姿。
絶望に黒く塗りつぶされた木山の心。
木山が上司の研究者に、失敗は明らかに人為的なものだったと主張すれば、

(科学の実験に失敗はつきものだ、それに『置き去り』という学園都市のお荷物が役に立ったんだからいいじゃないか)

イメージがぷつりと切れた。




綾峰の目から涙がこぼれていた。
その手は固く握られ、噛み過ぎた歯がぎちりとなる。

「…………それでも、俺はアンタを止めなきゃいけないんだ」

綾峰の声は腹の底から唸るようだった。
その隣では御坂が呼吸を乱し、汗をとめどもなく流していた。

「な…なんであんなことを」

綾峰と御坂の声に木山は

「くっ。観られたのか?……なるほど、AIM拡散力場を使用したからそれが君を通じて彼女にも見えたのか…」

木山の脳に頭痛が走る、それでも彼女は言う。

「あの実験の正体は『暴走能力の法則解析用誘爆実験』能力者のAIM拡散力場を刺戟して暴走の条件を探るものだったんだ」

木山はふらりと立ち上がる。

「あの子たちは、モルモットにされたんだッ!!!」

「人体実験…………」

綾峰が呟く。

「23回だ……あの子たちの恢復手段を探る為、あの事故の原因を見つける為、そのためのシュミレーションを行うのに『樹型図の設計者(ツリーダイアグラム)』の使用を申請した回数だ。

 だが、その全てが却下された!!統括理事会がグルなんだ、警備員が動くわけがない!!」

木山の悲痛な叫びが響き渡った。

「で、でもそれじゃアンタがやってることも同じになっちゃう「そんなことはわかってやってるんだろ」……」 

御坂の言葉は綾峰に遮られた。

「あんな悲劇、2度と繰り返させはしない!

 そのためなら私は何だってする!

 この街の全てを敵に回しても止まるわけにはいかないんだっ!!!」

それが、木山の本心からの叫びだった。
綾峰は知っている。その気持ちを。
かつて友を実験によって失った時の悲しみを。
それによって綾峰は暴走した。
そしてあの時綾峰は救われた。
だから、今度は自分が救わねばならない。
綾峰がそう決心し声をかけようとした時。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

木山が絶叫した。

「………がっ…ぐ……ネットワークの……暴走?…………いやっこれは…AIM…の」

次の瞬間、木山の頭から何かが出現した。


「………は?」

「な、何だ…あれ?」


それは一見胎児に見えた。
それは輝いていた。
それは天使のような輪を持っていた。


それを観たとき、綾峰の頭に頭痛が走った。

「がっ………………あ……………ぐ?……………何だ…こ…れ」

あまりの激痛に言葉も発せない綾峰の頭から黒い何かが吹き出すと、
それは胎児のような物を飲み込んだ。



そのまま綾峰は倒れる。

「へ?え?何?何が起きてんの!?」

御坂は混乱のあまりパニックを起こしかける。
そして黒い何かは先ほどの胎児と同じ形状になる。
いや、一部、白い胎児の時にはなかった尻尾のようなものが垂れていた。
そしてそれは、今度こそ。産声をあげた。







同時刻

「初春!初春!」

「……う、うん。ってあれ?白井さん!?」

高速道の車で戦闘の余波で気絶していた初春が白井に発見された。

「大丈夫ですの?」

車から降りてきた初春を気づかうように白井は声をかける。

「あ、はい。ってそこら中に警備員の人達が!それに道が無くなってますね…」

「そんなことより、初春。アレは何ですの?」

「え?」

2人の視線の先には黒い闇のように蠢く物体が浮かんでいた。

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