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七月二十四日 弐【幻想御手編】

高速道路を走る車の助手席に初春は座っていた。

「『幻想御手(レベルアッパー)』ってなんなんですか?」

初春は睨むように運転席に座っている人物、木山 春生(きやま はるみ)に訊ねた。

「どうして、こんなことしたんですか?眠った人達はどうなるんですか?」

「矢継ぎ早だな」

そう言いながらも木山は答えを言っていく。

「まず、『幻想御手』だが、あれは複数の人間の脳を一定の脳波にすることで繋げて高度な演算を可能にするものだ」

「繋げる?」

「なに、例えば1人で書類仕事を終えるよりも2人、3人、あるいはもっと多くの人間が一斉に終わらせた方が早く済むだろう?それと同じさ」

「なるほど」

初春の脳裏に風紀委員の書類仕事事情が浮かぶ。
普段は綾峰先輩のみが仕事をしているが、もしも全員でやればもっと早く仕事は終わるだろう。

「それに加えて同系統の能力者は同じ能力者と演算を共有する事で演算の効率も上がる。
 そしてここからはまた別の理論をつかったのだが、確かに能力者同士の脳を脳波を一定にして繋げても同系統の能力者がいないのでは能力の向上は低い。だから、AIM拡散力場を脳の電気信号の補助として利用する事にした」

「まさか、だからAIM拡散力場が収束したんですか!?」

「…?誰からそれを…ああ、なるほど綾峰か。確かに彼にはAIM拡散力場を視ることができるからな。まぁ、彼の関与した実験のデータを元にしたのも事実だよ」

「関与した実験?」

「さて、何で能力者が昏睡するかだが、やはり他人の脳波を強要されるのが原因だろう。なにせ私の脳波だ。私以外の人間では受け付けまい」

「なんでそんなことを…」

「あるシュミレーションが行いたくてね。『樹型図の設計者(ツリーダイアグラム)』の使用申請を出したが、どういうわけか却下されてね。他の演算装置を探していたのさ」

「だから、能力者を…?」

「ああ、一万人程集まったから、たぶん大丈夫だろう」

「!!」

「そんな怖い顔をしないでくれ」

初春の顔を見て木山が言う。

「シュミレーションさえ終われば能力者達は解放するさ」

「………………」

「嘘だと思うかい?……君に預けておくのも面白いかもしれないな」

「?」

木山はポケットからチップを取り出して手錠をしている初春の手に預けた。

「それは『幻想御手』をアンインストールする治療用のプログラムだ。後遺症はない、全て元に戻る。誰も犠牲にはしない」

「臨床実験が充分でないものを安全だと言われても何の保障もないじゃないですか!」

きっ、と木山の勝手な言い草に初春は反論する。

「ハハ、手厳しいな」

「それに一人暮らしの人やたまたまお風呂に入ってた人はどうするんですか?発見が遅れたら命に関わりますよ」

初春の言葉が終わると同時に車が急に暴走した。

「? ? ?」

目が回った初春の横で木山はぼそっと呟いた。

「まずいな…学園都市統括理事会に連絡して全学生寮を見回らせなければ………」

「想定してなかったんですかッ!!?」









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第16話









白井は1人、パソコンの前で待機していた。
警備員(アンチスキル)のもたらす情報を収集し、それを御坂に伝える為だった。
数分前、

「私も出るわ」

御坂はそう言って、現場に向かおうとした。
白井は止めたのだが、御坂は嫌な予感がすると言って聞かず。
なら風紀委員の自分が行くと言えば、怪我をしてるのを見抜かれた上に、

「アンタは、私の後輩なんだから。こんな時くらい「お姉さま」を頼りなさい」

そう言って行ってしまった。
ふと、白井の脳裏に1人の男が浮かぶ。
綾峰 唯鷹(あやみね ゆたか)
風紀委員の先輩で兄のような人。
いや、もっと言えばお姉さまと同じくらいに役に立ちたいと思える人。
何かを隠しているのは知ってた。
この前の入院でも本人が寝ている時に、足の怪我を見て驚いた。
結局腰を打ったと言っていたが、なんであんな嘘を、と疑問に思ったが口に出来なかった。
何でだろう。
こんな時にこそ。あの人が傍にいて欲しい。






『木山春生だな!!『幻想御手』頒布の被疑者として拘留する!!直ちに降車せよ!!』

木山と初春の乗っている自動車の前に警備員(アンチスキル)が拡声機で呼びかけてきていた。

「はぁ、警備員か。上から命令があった時だけ、動きの速い連中だな」

そう言って木山はハンドルにあごを乗せる。

「どうするんです?年貢の納め時みたいですよ?」

「『幻想御手』はね、人間の脳とAIM拡散力場を使った巨大な演算機器を作る為のプログラムだ。

 だが、同時に使用者に面白い副産物を齎す物でもあるのだよ」

初春は怪訝に感じた。

(なぜ、この人はこの状況で焦りどころか、笑みを浮かべているんです?)

木山はそのまま車を降りると、警備員の指示に従って手を頭の後ろに組んだ。
警備員達が人質となった初春の無事を双眼鏡で確認している瞬間、それは起きた。
初めは、銃声。
警備員の1人が前方にいた味方に発砲。
そして全員の注意が木山から逸れた一瞬後、木山が前に出した手から空気の渦のような物が発生した。

「なっ!馬鹿な」

「学生じゃないのに…能力者だと!!」








「黒子!!どうなってるの!?」

高速道での爆発を見た御坂は慌ててタクシー代を払って降りると携帯で繋がっている白井に訊ねた。

『そ、それが情報が混乱してて、木山が能力を使用して警備員と交戦している模様ですの!』

「?彼女、能力者だったの?」

『いえ、『書庫』には木山が能力開発を受けた記録はないのですが…しかし、これはどう見ても複数の能力を使用しているようにしか見えないのですが』

「どういう事!?それこそ…まるで『多重能力者(デュアルスキル)』みたいじゃない」

高速道への階段を登る御坂の脳裏に1人の人物が浮かび上がる。仮面に黒合羽、虚空爆破事件で出会った『多重能力者』。

『これは、推測ですが…』

そう言って白井は言葉を繋ぐ。

『木山の能力は『幻想御手』を使用したものではないでしょうか。何千人もの能力者の脳とネットワークというシナプスでできた『1つの巨大な脳』、もしそれを操れるのなら普通の人間では為しえないことも起こせますわ』

「まさしく、『多重能力者』…」

『はい』

御坂は高速道に辿り着いた。
御坂の目に初めに映ったのは残骸だった。
そしてその傍で倒れている警備員達、微かだが動いているように見えるので気絶しているだけだろう。
そして、御坂の前にいたのは、こちらに背を向けた黒い雨合羽。


「……『多重能力者(デュアルスキル)』!!?」


「木山春生が『多重能力者』の正体だったの?」

御坂は『多重能力者』に向かって声をかける。

「おや、御坂美琴も来たのか」

すると『多重能力者』の向こう側から木山の声が聞こえてきた。

「!!?」

木山の横にあった監視用ロボットが穴だらけのボディから煙をあげていた。

「ふふ、私はそこにいる本物とは違って『多才能力者(マルチスキル)』と呼んで貰おうか」

「ドチラモタイシテ違イハアルマイ」

「そうかい?それにしてもその格好は暑そうだな。脱いだらどうだ?」

『お姉さま!?どうなってるんですの!?『多重能力者』がどうかしたんですの?』

白井の声が御坂の携帯から聞こえてくる。

『多重能力者』は御坂にジェスチャーで携帯を切るように言った。

「………………ごめん、黒子。また後でかけ直すわ」

『へ?お姉さま!?お姉さpi…ツー、ツー」

「これで良いんでしょ?」

御坂の声に『多重能力者』は頷くと、仮面を消した。

「ああ、すまないな。御坂。アイツには知られたくないんだ」

「って!!?綾峰さん!?」

御坂が予想外の人物の登場に驚く。

「………………やはり君だったか」

それに対して木山の反応は薄い。

「既に知ってたのか?というよりいつ気付いた?アンタとは1回しか会ってないはずだが」

「君の名前を聞いた時、微かにどこかで聞いた気がしたんだ。そしたら私が『幻想御手』の補助機能として使っていたAIM拡散力場制御法の論文に被験者として君が載っていた」

「………………あれか」

憎々しげに綾峰は言う。

「AIM拡散力場制御法?」

「なに、昔の論文だよ。内容は簡単だ。名前の通りAIM拡散力場を制御する方法を探るという物だ。そしてその中の1つに能力者を用いてAIM拡散力場を制御できないかというものがあったんだ」

「その結果が俺だ。ついでに言えば、俺の使っている『多重能力者』も元はこのAIM拡散力場を制御する能力の応用だ。まぁ。厳密に言ってしまえば『多重能力者』ではないんだがな」

「さて、お喋りはここらへんにして、そろそろ始めよう。レベル5の『超電磁砲』それに噂の『多重能力者』。どちらが来る?それとも同時に来るかい?私はどちらでも構わないが。

君たちに、一万の脳を統べる私を止められるかい?」

そう言って木山は不敵な笑みを浮かべていた。






「お姉さま!?お姉さま!!?ってもう、また切られましたわ!!」

白井はパソコンの前に座って携帯を閉じると、画面を見る。

「それにしても、木山春生にこんな過去があったなんて……」

画面には木山春生が関わったとある事件のことが書かれていた。

「…………とにかく、ここにいても始まりませんわね」

そう言って白井は部屋を出ていった。

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