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七月二十三日

綾峰が退院して2日ぶりに風紀委員(ジャッジメント)の事務所に行ってみると、
文字通り書類の”山”がそこにはあった。
既に机は埋め尽くされており、机に乗らない分は椅子の回りを囲うように置かれていた。

「………………あるぇ~?白井?俺って6日前にこの書類の山を消したはずじゃなかったっけ?」

「6日前も同じことを言ってましたわ。それにしてもお怪我はもうよろしいんですの?確か、階段からずっこけたと聞きましたけど」

「いやぁ、単に腰打っただけでもう問題ないってさ」

まさか、レベル4以上の能力者の暴走に巻き込まれたとは言えず、回りには寮で階段から落ちて腰を打ったことになっている。

「まったくこの忙しい時期に入院するなんて、時間さえあればこの書類の山を病室に持っていってやろうかと思いましたわ」

「へいへい。んで?『幻想御手』について何か進展は?」

「特になしですわ。ただ、最近『書庫』とレベルの合わないのをいい事に能力を悪用する輩が増えてますの。あと、昏睡者がこの3日間で更に増えてますわ」

「ったく、『幻想御手』を使ったら昏睡するって噂流しちまえば皆使用をやめる……ってわけはねーよな」

「ええ、それに使用者がそんな噂を聞いたら自暴自棄になって何をしでかすか分かったもんじゃありませんし」

「はぁ、とりあえず退院したての俺にできるのはこの書類との格闘だけ、か。メンドクセー」

綾峰は書類の山に目を向けてがっくりと肩を落とす。

「頑張ってくださいな。私はこれから外を回ってきます」

そう言って白井は鞄を持って外に行こうとする。

「白井、あんま無理はすんなよ?」

「何のことですの?」

「……いや、最近ジャンボウルトラパフェを奢ってないからダイエットに勤しんでのかと思って、あまり若い娘がダイエットダイエットなんて言って……ってあれ?白井?白井さん?白井様?何で手を俺の胸に当てっぐがぶ!?」

白井の『空間移動』によって上下逆転させられた綾峰は頭から床に叩きつけられた。

「まったく、入院してもその失礼な口は変わってないですわね」

はぁ、と呆れながらため息を吐く白井に綾峰が真剣な表情で言った。

「白井、何て言うか。これは避けようがない事態だったから、完全な事故なんだけどさ。1つ言わせて欲しい」

「………?いきなり何ですの?」

「中1のお前にそんな大人パンツは早ぐげっ!?」

鳩尾に蹴りを入れられて綾峰が悶絶する。
白井はスカートを押さえるとそのまま距離を置くと言った。

「と、とにかく私はでかけますので、後をよろしくお願いします!」

そのままダッシュで事務所を出ていった。

「…………たく、1人で無理しやがって」

そう言って綾峰はすくっと立ち上がると、目の前の書類に向かって不敵に笑う。

「白井が外で『幻想御手』使った能力者ども相手に頑張ってるんだ。わりぃがささっと終わらせてもらうぜ」

そう言って綾峰は鷹の目の表情になる。
そこへ、

「あ、綾峰さん。書類追加です」

初春がもう一”山”書類を持ってきた。

「………………メンドクセー」









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第14話










「それにしてもおかしな話だな。五感全てを使う『学習装置』を数年使ってやっと能力が1上がれば良いってぐらいだってのに。『幻想御手』は聴覚を使うだけで一気にレベルが上がるのか」

5時間後、一騎当千の奮闘の結果、書類がやっとあと1束になったところで綾峰は休憩していた。
手にはコーラの入った湯飲みを持っている。

「でも実際レベルはあがってますし……」

初春もコーヒーカップを持って休憩していた。
ふと、綾峰は最近気になってたことを聞いてみる事にした。

「なぁ、初春。AIM拡散力場って知ってるか?」

「え?えっと……確か…………能力者が無意識に発している微弱な力の事……でしたっけ?」

初春は必至な表情で思い出しながら言う。

「ああ、例えば御坂なら微弱な電磁波を発しているように能力者ってのは必ずAIM拡散力場を発している」

他にも音波使いは低周波の音波を、発火能力者は熱を出している。

「それを視れるのが綾峰先輩の能力なんですよね」

「そうなんだが、『幻想御手』を使ってるやつらは少し違うみたいなんだ」

「どういうことですか?」

「本来能力を発すれば、それに応じてAIM拡散力場ってのはより活発に”拡散”する」

「ふむふむ」

「だが、『幻想御手』を使っている奴らは逆に能力が強くなればなるほど、AIM拡散力場が”収束”する」

「えぇ?それっておかしくないですか?そもそも能力を使うから発生するAIM拡散力場が能力を使うと逆にあつまってくるなんて」

「そうなんだよなー。何が違うんだ?」

「うーん」

「うーん」

初春と綾峰は頭を抱えて考えるが、特に思いつかなかった。

「よし、それじゃ。実物を視てくる!!」

「へ?え?でも綾峰先輩。まだ書類が」

突然立ち上がった綾峰に初春が慌てて言う。

「何言ってんだよ。ほら、もうこれぐらいしか残ってないぞ?」

「いえ、そこにあったのは一部で、まだ向こうの部屋に溜まってるんですが」

さらりと初春が問題発言を口にした。

「………………あのー?初春様?その書類とやらは先ほどの山の何分の1ぐらいでせう?」

「えっと、あと3倍です」

「………3分の1の間違いじゃなくて?」

「はい」

「…………メンドクセー!!!帰る!帰ります!帰らせて頂きます!というか他の風紀委員(ジャッジメント)は書類仕事してないのか!?」

自分を棚に上げて綾峰が言うと、

「皆さん外回りの方に忙しくて」

言外に私たちは役に立ちませんからという言葉が聞こえてくる。

「…………はぁ。メンドクセー。やるよ、やりますよ。やらせて頂きますよ!コンチクショー!!!

涙を流して綾峰は机に立向っていった。
頑張れ、綾峰。
書類ある限り、綾峰の戦いはこれからも続く、永遠に…

応援ありがとうございました!!
スザク先生の次回作にご期待ください!!

~完~             」
















「って、なに終わらせてるんですか!!?連載終わらせる程に書類仕事面倒くさいんですか!?」

初春が慌ててつっこみをいれる。

「だってさー。もうねーよ。どんだけだよ。後3倍って少なく見積もってもあと15時間は掛かるじゃねーか」

「でも、他の人だと軽く半月かかる内容ですから」

「だー、もーメンドクセー!!」

そう叫びながらも綾峰の書類を捌いていく手が止まらないのはすごいなぁと感心する初春だった。





2日前(七月二十一日)

佐天涙子は悩んでいた。
その手にあるのは音楽プレイヤー。
その中には『幻想御手』という曲がダウンロードされていた。
佐天がそれを見つけたのは偶然だった。
2日前に音楽サイトを見ているうちにたまたま見つけた隠しサイトでこれを発見し、すぐにダウンロードした。
昨日早速初春に見せようとしたが、初春の同僚で常盤台中学の生徒である白井黒子が「『幻想御手』の所有者を捜索して保護する事になると思われますの」と言っていたのを聞いてつい隠してしまった。
そして今日、使うかどうか悩んでいると不良たちが『幻想御手』を使って金をせびっている所を見つけてしまった。
助けようとしたが、結局偶然来た白井に助けられた。
佐天は何もできなかった。

(やっぱり能力者と無能力者って世界が違うんだ…)

そんなことを考えながら佐天が歩いていると、

「あ、ルイコー」

佐天が思考の渦から戻り、振り返ると親しい友人たちがいて、

「おひさ!終業式以来」

そう言ってアケミが手をふっていた。

「1人で買い物?」

「う、うん。そんなとこ」

友人の質問に嘘を吐く罪悪感を感じながらも佐天は言葉を繋げていく。

「アケミ達はプール?」

「それがスンゲー混んでてさあ。全然泳げんかったよ」

「できれば海行きたいけど、私ら全員補講あるじゃん」

「泊まりでもどこにも行けないわけよ」

「あれさー、勉強の補習はわかるけど。能力の補習って納得いかないよねー」

そう言って何気ない日常の会話をしている4人の会話に、

「あ、でもさ聞いた?『幻想御手』っての」

非日常が紛れ込む。






「あ、あのさ! 

 あたし…それ、持ってるんだけど…」











3日後(七月二十四日)

「はぁ…はぁ…はぁ」

全力疾走で走ってきたのだろう。
初春は肩で息をしていた。
初春の顔は涙と汗と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
目の前には、初春の友人である佐天 涙子が自室で倒れていた。

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