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七月二十一日

「わかった、ありがとな。初春。データはちゃんと受けとったから……ああ、それじゃ。白井によろしく」

運動変速暴走事件から翌日、綾峰は起きたばかりの体だったが車椅子を駆使して移動して病院の端で電話していた。
今は初春に電話して『幻想御手』という音楽データを受けとったところである。
初め、初春に電話した際はただの音楽ファイルで能力者のレベルを上げられるものなのかと驚いたが、今こうして手にしてみると不思議な感覚だった。

「それにしても、犯人は何が目的なんだ?」

綾峰の言葉は病院内の騒音に消えた。








とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第13話









綾峰と黄泉川が雲雀の部屋の前に行くと、そこには面会謝絶の文字が張られていた。
2人が慌ててナースセンターに行くと、担当医らしい男が話をしてくれることになった。
3人は場所を移して狭い面談室に移動すると、医者が説明を始めた。

「碓氷 雲雀さんは、当病院に運ばれてから一度も目を覚ましていません」

「それは能力の暴走と関係があるんでしょうか?」

「いえ、今のところそういった原因でないのは確かです。……が」

「が?」

「原因がまるでわかっていないんです」

「それはどういうことじゃん?」

「………………本来は風紀委員(ジャッジメント)の方に口止めをされているんですが」

「なら、大丈夫です。俺もこれでも風紀委員の端くれです」

「でしたら……この数日間、学生の方で急に昏睡状態に陥る方が急増しているんです」

「それが…雲雀とどういう関係が?」

「わかりません。原因もまるで分かっていないんです。男女関係なく運ばれてきます。ただ、今回のようにあれほど幼い方は当院では初めてですが……もしかしたら、同じ原因ではないかと思われます」

「…………?あの、男女関係なくって言ってましたけど、年齢はどれくらいなんですか?」

「ほぼ全員が10代の方です。全員学校など所属なども違いますが、全員が全員学生であることは確かです」

「…………その全員は能力者ですか?」

「? ええ。もちろん。この学園都市で学生で能力者でない方はいませんよ」

「それもそうですね」

綾峰はたしかに、と言うと1人思考に埋没するように目を閉じた。

「あの、会う事はできないじゃん?」

黄泉川が医者に聞く。

「えっと患者さんとはどういった関係で?」

「私は……警備員(アンチスキル)じゃん。容態を確かめたいじゃん」

「わかりました。10分だけでしたらどうぞ」

「んじゃ、俺は部屋に戻るよ。またな、黄泉川」

「あいよ。てか、1人で帰れるじゃん?」

「車椅子に座ってんだから当たり前だろ」

「なら良いじゃん。それじゃまた」

そう言って黄泉川は医者についていった。




綾峰は1人になると、回りを視る。

(にしてもこれは何だ?)

空気中に漂うAIM拡散力場の動きがおかしいのだ。
18日も少し感じてはいたが、あまり気にしてはいなかった。
だが、この数日間で状況は変わったらしい。
AIM拡散力場そのものは本来あまり流動することはない。
微弱な多種多様な力の塊なので本来は風が吹いても動くことはないのだ。
ただ、能力者が動けばそのものが発するAIM拡散力場によって揺らぐ事はあるが、今は綾峰以外に能力者は傍にいない。
そのAIM拡散力場が動いていた。
まるで何かに導かれているかのように、どこかへ流れていく。

「これも……『幻想御手(レベルアッパー)』の影響なのか?」

そう言えば、かつて綾峰が戦った2人の『幻想御手』使用者(とみられる者)達も能力の使用の際にどこからかAIM拡散力場が収束していた。

(もし仮説が正しいなら『幻想御手』は、他人のAIM拡散力場を使ってるって事なのか?)

(…………いや、仮説にすぎないか)

証拠はないし、科学的な根拠もない。

(そう言えば、事件は何か進展があったのか?)

白井に聞き損ねたなー、と考える綾峰だった。
そして初春に電話をするために携帯を使える場所を探し始めた。




そして冒頭に戻る。
病棟に戻った綾峰を迎えたのは、2メートルを越える体格に神父服を着た赤髪の男だった。
先日、寮で戦ったロリコン神父だった。
一応院内であることを気づかってか煙草は吸ってはいなかったが、その身から漏れでる香水は綾峰の脳に一定のダメージを与えてくる。

「今日は事件らしい事件が起きなかった!!?奇跡か!?とか思ってたのに、お前が来るとは……メンドクセー」

「どうも、あまり驚いていないみたいだね。先日は殺しあった仲だってのに」

「うるせー、ロリコン神父。こっちは怪我しててそれどころじゃねーんだよ」

「相変わらずセンスのない表現だ」

「それはお前の服装だろう?」

「これは”魔術”を行使するのに最適な服装をチョイスしただけさ」

「そうかいそうかい、それで何の用だよ?ロリコン神父様」

綾峰は既にやけくそだった。

「っち………アレは何なんだ?」

苦々しい表現でロリコン神父が言う。

「上条の、ことか?」

「ああ、お前は分かる。お前のあの黒い物体がお前の能力だというのは僕だってわかる。それで僕の攻撃を防いだのは少々驚いたがね。だが、あの少年は異常だ」

「そうだな。でもアイツは”ここ”ではただの無能力者だ」

「は、君も神裂と同じ事を言う気かい?」

そう言ってロリコン神父は苛々を綾峰にぶつけるように言葉を繋げる。

「これでも僕はこの道じゃ結構な評価を受けている魔術師でね。”ただの”高校生が僕の技を破れるほど世の中は甘くない」

「はー、メンドクセー。もういいよ。教えてやるよ。ロリコン神父。だからさっさと帰ってくんね?つーかもうアンタの香水で頭イタイんですけどー?」

綾峰は既にだるくて半分もロリコン神父の話を聞いていなかった。

「まったく君と会話していると胃薬が欲しくなるね」

「へー、魔術なんて言ってる”オカルト”ロリコン野郎でも薬なんていう”科学”が欲しくなるなんてね」

「とことん君は僕をロリコンにしたいみたいだね」

「当たり前だろ」

「何で僕は君なんかに聞きに来たんだろう」

ロリコン神父は腹を抑えつつ憎々しげに言った。

「知らねーし。オレはさっさとアンタを帰してファブりたいんだよ」

「っち。だったらさっさと言ってくれ」

「上条の能力は『幻想殺し(イマジンブレーカー)』。この世にある異能の力を完全に無効化する力だ。それは”科学”であろうと”オカルト”であろうと関係ない。アイツが右手で触れたものは全て現実に戻される。そして、一番重要なのはアイツは『フラグ乱立体質(女殺し)』だということだ」

「……?最後のはよくわからなかったが、関係あるのか?」

「はぁ、これだからトーシロは。いいか?フラグ乱立体質ってのはな。『幻想殺し』なんてチート能力の遥か上の上に存在するチート能力だ。言ってみればな、それが例え神であろうと、女性であるならば、オトせるということだ」

「…………それは僕の魔術が破られたことに「まだ分かんねーのか?ロリコン神父。お前が狙ってるのは何だ?お前がこの前オレに挑んでまで得たいと思ったものはなんだった?」………インデックスだが?」

「オレは言ったぞ?それが神であろうと、”女性”であるならば、必ずオトすと」

ロリコン神父は考えるように黙ると、ぽつりと言った。

「………オトすってのは何なんだ?」

「お前って意外に子供だな」

「なっ!?君は僕を侮辱しているのか?」

「いんや、帰って神裂とかいう人にでも聞いたら?」

「っち。とにかく、彼の能力はわかった。それにしても君は意外と薄情だね、簡単に彼を売るとは」

「はぁ?誰がいつアイツのことを売ったよ」

「さっき君はぺらぺらと彼の能力を言っただろう?”敵”であるはずの僕に」

「頭いかれてないか?お前。オレがアイツのことを喋ったのはそんなことをしても関係ないからだ」

「?」

ロリコン神父の顔が訝しげに歪む。
その顔に綾峰はニヤリと、裂けるような笑顔で言う。

「アイツは必ず、”皆”を幸せにする。それをオレが保障してやる」

「どうやら君は彼のことを入れ込んでるみたいだけど、僕たちはプロだよ?」

「はっ、”魔術の”だろ?勝手に吠えてろよ。どうせまだまだ時間はあるんだろうし。少しぐらい待ってやればいい。それでアイツが何も変えられなきゃアイツはそれまでだってことさ」

「やっぱり君は薄情だね。アレには同jPrrrrrrrrr…………はい、ステイルだ。わかった、戻るよ」

「………………お前って携帯と相性悪いだろ?」

「うるさい。僕は戻る、じゃぁな。”敵”」

そう言ってロリコン神父は部屋から出て言った。

「やっぱあいつガキだな」

綾峰は1人になった病室で呆れたように言った。





夜、綾峰はベットに座りっていた。
既に部屋はファブってあり、臭くはない。
看護師さんたちに何したんだって顔で見られたけど、綾峰は悪くない。
でも、ちょっと悲しかった。

(次あったら、とりあえずアイツが話してる間に携帯鳴らしたる)

綾峰の頬を擦るように風が吹いた。
窓の外からは月の光が漏れていた。
ふと、昨夜のことを考えた。
雲雀を背負い、灼熱の部屋を歩いていく綾峰。
あの時綾峰は絶体絶命だった。
綾峰は、黄泉川には自分が歩いて雲雀を救ったように言ったが、それは違う。
2歩目を歩いた綾峰は、既に意識を失っていたからだ。
つまりあそこで綾峰は死んでいたはずなのだ。
同じく、雲雀も死んでいておかしくなかった。
だから不思議だった。
何が綾峰達を生かしたのか、と。

「まぁ、何にせよ。生かされたなら、やることがあるってんだろうなぁ。がんばるか。メンドクセー」

綾峰はニヤリと笑った。

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