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日十二月七 弐【置き去り編】

「ふむ、やはりたまには紙媒体の資料にも目を通しておくのも良い事だな」

埃くさい部屋の中で木山 春生は数枚の資料を片手に微笑んでいた。
学園都市では電子情報が基本であるため、現在はほぼ全ての資料がネットワーク上に上げられていた。
そのためこういった紙の資料は”電子情報化待ち”という名目で書庫などに保管されてそれっきりということが多い。
木山が読んでいる資料は本来探していた古い資料と共にたまたま見つかったものだった。

「やはりどこかで聞いたことのある名前だとは思っていたが、こんなところでとはな」

木山は資料の内容に目を通すと、一瞬物憂げな表情になる。

「なるほど彼もまた私と同じか。だが、そうなると本当に可能なのか?こんなことが。それに気まぐれの実験だとしてもこれが完成していたのだとしたら、
何故彼はレベル3止まりなんだ?」

木山は何かを考えるように目をつむる。

「いや、もしかして彼は…………いや」

そこで、木山は自分の推測を鼻で笑うと、

「どちらにせよ、私の思惑に彼は関係ないな。邪魔をするならば潰す。それだけだ」

紙の資料をその場の適当な山に投げ置いた。
資料には、
「AIM拡散力場制御実験:被験者 綾峰 唯鷹」と書かれていた。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第12話









わたしは、もう悪い子なんだ。
おねーちゃんにも会えない悪い子なんだ。
良い人を殺したからわたしはもうおねーちゃんに会えないんだ。

『イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

誰の声だろう?うるさい。
叫んでも何も変わらないのに。
わたしが悪い事をした事にかわりはないのに。
ああ、そっか。わたしの声か。
わたしの力が暴走しているのがわかる。
どんどんどんどん、部屋が熱くなっていく。

熱い。

熱い熱い熱い!

熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!

助けて!
助けて!!
いや!
死にたくない!
おねーちゃんに会いたい!!

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

おねーちゃん!!
助けて!!

「おう、助けに来たぜ」

え?
誰かが、わたしの中に入ってくる。
誰かが、わたしの傍に来てくれた。
そして熱さが引いていく。
何で!?
わたしは悪い子なのに!?
なんで助けてくれるの!?

「あ?助けんのに理由がいんのか?メンドクセーな」

え?
なんで、なんで?

「それにお前は悪い子じゃねーよ、俺が保障してやる」

ああ、うれ……しい。


ありがとう、おにーちゃ……ん。










そこは、花畑だった。
本来四季に別れて咲くはずであるそれぞれの花達が色彩豊かに輝いている。
その中心で1人の少年が立っていた。
少年の名前は綾峰 唯鷹(あやみね ゆたか)。
綾峰の表情は穏やかで、もはや何もかもから解法された気分だった。
綾峰はゆったりと散歩を楽しむように、花畑を歩く。
すると、目の前に川が見えてきた。
渡るには少し深く、されど泳ごうと思えば渡れなくもない、そんな微妙な川があった。
綾峰がそれを渡るかどうか躊躇していると、川の反対側から友人達が呼びかけてきた。

「おーい、峰やーん。お前もこっちに来るぜよ~」

「そうやで~。こっちは楽しいで~」

「そうかー。じゃぁ。俺もそっちに行くよ~」

そう言って綾峰は川に入っていく。
そして、徐々に深くなっていく川に比例してだんだんと川の反対側も近くなってくる。

そこへ、

「ダメだー!!綾峰ー!!戻ってこーい!!」

安らかな気持ちを引き裂くような声が響いた。
綾峰は後ろを振り向くと、その人物に言う。

「どうしてだよ、上条。俺は今すごく安らかな気分なんだぜ」

「ダメだ、ダメだったらダメなんだ!!」

「そんなことないぜよ。上やんもこっちに来ればわかるぜよ」

「そやで~。ほーら、綾峰もはよおいで~」

「ほら、友達も呼んでる、行かなきゃ」

「ダメだ!!そっちは。

ロリコンだぞ!!!」

途端、綾峰の腕を誰かが掴んだ。
おそるおそる振り向く綾峰。
そこには、赤い髪の神父が立っていた。

「ほら、お前もこっちに来るんだ。そうすれば僕たちの気持ちもわかるさ」

「そやで~、綾峰~。こっちに来いよ~」

「にゃー、早くくるにゃー」

3人のロリコン達に掴まれる綾峰。

「は、放せ!俺はそっちには逝きたくない!」

「綾峰ー!!俺の手を掴めー!!」

精いっぱい手を伸ばす、上条。
それを掴もうとする綾峰だが、いかんせん3人の力は強い。

「くっ、上条ー!!」

「くっ、綾峰ー!!」

「ファイト!!」

「いっぱーつ!!!」

綾峰の手が上条の手に……





「はぁっ!!……はぁっ!!……はぁっ!!……夢か」

がばぁ!!と凄まじい勢いで体を起こした綾峰は1人の友人に凄まじく感謝したくなった。

「ありがとう、上条」

「上条というのはどなたですの?」

「へ?」

突然投げ掛けられた声に綾峰は驚いて横を見た。
そこには額を赤くしながらしかめっ面をしている白井がいた。

「どうした?白井。怪我でもしたのか?」

「今、まさに綾峰先輩にやられましたわ。いきなり頭突きってのはきついですわ」

綾峰の起きた時にぶつけたらしい。
確かに綾峰も頭が痛かった。

「って、そうだ!?ここはどこ……!?」

綾峰は突然ふにっと、左手が何か柔らかい物に触れていることに気がついた。
おそるおそる下を見ると、

「あのー、何で?俺は白井の手を握っているのでせう?」

もしかして自分は眠っているうちにも白井(年下の異性)の手に手を伸ばすような性癖をしていたのか!?と不安になる綾峰だったが、

「そ、それは……その……私が握ったんですわ」

「へ?」

白井の答えは完全に予想外だった。
確かに言われてみれば手を離しても白井が握っている。

「えっと。これは?」

「その、綾峰先輩が……うなされていて、つい」

「し、白井……」

「綾峰先輩……」

2人は見つめあって……

「やっほー。担ぎ込まれたって聞いてたけど大丈夫じゃ……ん?」

そこに入って来たのは黄泉川だった。
瞬間、手を離してお互い反対側を向く2人。

「「「………………」」」

気まずい沈黙の末、

「………………悪かった。どうぞ続きをやればいいじゃん」

そう言って、そそくさと逃げ出そうとする黄泉川。

「「っするかー!!」」

2人の声がハモった。






その後、白井が風紀委員(ジャッジメント)の仕事があると言って、逃げるように帰っていった。

「んで?QKYさんはどうしたんですか?」

綾峰の表情と声は冷たかった。

「いきなりQKYから!?ってあんたが担ぎ込まれたって聞いて心配して直行して来てやったじゃん?一応、わたしが保護者なわけだし」

「はぁ。そうですかー。ていうかここはやっぱ病院なんですね」

「そうだよ。っていうかその敬語はどうしたんじゃん?」

「いや、黄泉川さんの空気の読めなさに敬意を示してるだけですよ?」

「悪かったって。許してほしいじゃん」

「はー。っていうか昨日あの後結局助かったのか。って俺と一緒に担ぎ込まれた女の子はいないか!?」

「いるよ。でも今はまだ寝てる…………1つ聞かせて欲しいんだけど。昨日何があったじゃん?」

「………………俺が最初にあそこに行くと、罠にはまってあの娘がいた部屋に誘導された。その後、戦闘になって彼女が部屋全体を凍らせたんだが……」











「ぐっ。またこのパターンかよ!」

そう言って、綾峰は部屋の外で頭を抱えていた。
前回の時のように黒い物体で作った分身と『空間移動』を同時に行ったのだ。
虚空爆破事件の時ほどでは無いにしても、相変わらず頭はがんがんと鳴り響き、綾峰はどうにか立っていることしかできないでいた。
それでも、目的の部屋に入る。

「お前の姉の居場所なんてしるわけないだろ?だいたい、本気でそれを信じてたのか?はっマジ笑えるんだけど」

そこには中年の男がいて、モニターを見て偉そうに吠えていた。
どうやらモニターに夢中になっていて、綾峰には気付いてないらしい。

「つーか、もうお前は用済みだから。後は、そこでお前に何の副作用もなければこの『幻想御手(レベルアッパー)』を他の奴に使うだけだ」

(この外道が……ってこいつ『幻想御手』を持ってやがんのか!?)

「あー、あとそこにいる奴は、お前みたいな置き去りを救ってるやつらしいぞ?お前は自分の味方を殺したんだ。アハハハハハハハハ」

綾峰は徐々に男の後ろへ壁に寄り添って歩いていく。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハ」

「おい、やってくれんじゃねーか」

綾峰がそう言うと、男は初めて綾峰に気付いたのか、驚いて腰を抜かした。

「ひっ!な、なんでここに。お前死んだんじゃ?」

「あぁ?死んだ?だったら何だ?俺はユーレーですか?いいねぇ。だとしたらお前も一緒に道ずれにしてやるよおおおおおおおお!!」

綾峰は半分自棄気味に大声で脅かした。

「ひ、ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

すると、そのまま男はぶくぶくと泡を吐いて、下から色々な汚い物を垂れ流して気絶した。

「うえっ。臭っ。たく。こいつっつーか『幻想御手』は後だ。雲雀とかいった娘は?って?何だアレ!?」

先ほどの部屋を映したモニターには先ほどの極寒状態と真逆の灼熱地獄が広がっていた。

「たく、暴走してるな。さっきのが空間の分子の動きを完全に止めた物なら、こっちは分子の動きを暴走させてるのか?どちらにせよ、ヤバいな」

綾峰は急いで、部屋の空調設備をオンにする。
同じく冷房を最大にして綾峰は少女のいる部屋に向かっていく。
その途中、トイレでバケツに水を汲むと、部屋まで持っていった。
扉は熱で赤くなっており、溶け始めようとしている。

(たくっ。やるしかねーよな!!)

『運動変速』!!!

「ぐっああああああああああああ!!!」

レベル3の力を使うための演算にさえ、脳に壊れそうな程の痛みが走る。

「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

その痛みを誤魔化すように綾峰は叫び、水を体に浴びせると扉を蹴り破り、飛び込んでいった。
中は、地獄なんて生易しい言葉ではなかった。
灼熱煉獄。
それが正しいとも思えた。
汗なんて一瞬で乾き、数秒いるだけで体中が溶けそうな気がした。
しかし、それでも『運動変速』の力や空調設備が綾峰を救っていた。
それに先に被った水の分子の運動を弱めることでどうにか進む事ができる。
綾峰は中心に雲雀がいるのをAIM拡散力場の動きで把握すると、そこに歩いていく。
歩く、それだけで熱波が綾峰を襲う。
まるで何者も近づけないようにと望むかのように。
それでも歩く、そこに救うべき存在がいるから。
ただ、一心不乱に歩き、歩き、歩き、


綾峰は辿り着いた。

助けて!!
声が聞こえた気がした。
だから、綾峰は応えた。

「おう、助けに来たぜ」

そして『運動変速』を雲雀にかけて、背中におんぶすると、そのまま部屋を脱出しようとした。
が、そこで気がついた。
既に自分の靴が熱で溶けていることに。
そして、徐々に『運動変速』の力が解け始めていることに。

(ヤバい!!まじでヤバい!!)

一歩踏み出した。
足から靴が離れ、足の裏が地面に着くと、
肉の焼ける匂いがした。

「ぐああああああああああああああああああああああああ!!!」

耐えるしかなかった。
堪えなければ少女が死んでしまう。
いっそのこと、少女を捨ててしまえば楽だったに違いない。
だが、綾峰はできなかった。しなかった。

(それでも、誰かを救うために俺は生かされたんだ!!)

「ぐああああああああああああああああああああああああ!!!!」

綾峰の悲鳴が狭い部屋の中で響き渡る。





「それで、こんなことになったわけよ」

と言って、綾峰はシーツの下にあった足を見せる。
そこには包帯でぐるぐる巻きになった足があった。

「大丈夫じゃん?というかよく切り落とさなくてすんだじゃん?」

「それはもちろんだよ?なにせ、僕はこれでも『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』で通ってるからねぇ?」

黄泉川の感心したような心配なような声にいつの間にか来ていたカエル顔の医者が応えた。

「先生、お久しぶりですじゃん。今回もありがとうございますじゃん」

「まぁ、結構重度な火傷だったんだけどねぇ?本当は1ヶ月は入院なんだけどねぇ?僕の技術と彼の能力も使えば明後日中には退院できるかな?」

「早すぎじゃん!?」

黄泉川が当然のつっこみをいれる。

「もうやってるし、たぶんあともう少しで外側は見えるぐらいにはなるさ」

「もはや化け物の域じゃん?」

「うるせーなー。メンドクセー。これでも色んな能力を併用してどうにか明後日中なんだぞ」

「はぁ、心配して来た私が損したじゃん?」

頭を抱える黄泉川。

「そう言えば、麗しの彼女にはその包帯を見せてないじゃん?」

「心配かけたくなかったのと、言う暇もなかったんだよ。っつーか彼女じゃねー!!」

「はいはい」

それからしばらくの間3人で話をしていると、カエル顔の医者は途中で去り、黄泉川も仕事に戻ることにした。

「それじゃ、元気にしてるじゃん。明日にはお土産でももってきてやるじゃん」

そう言って立ち上がる黄泉川に、

「なぁ、黄泉川」

綾峰が真剣な表情で言う。

「帰りに”妹”には会わなくていいのか?」

「ッ!!?」

「な、何のことじゃん?それにあの娘の顔はさっき見てきたばっかじゃん」

「別に雲雀のこととは一言も言ってないけどな」

「ッ!!……………はぁ…降参じゃん」

黄泉川は少しの間黙ると、降参の意を示した。

「やっぱりあんたの妹だったか」

「いつ、気がついたじゃん?」

「あー、いくつか変なとこがあってな

例えば、昨日あんたが俺に電話してきた時間。
普段のあんたならあんな時間にはかけない。まぁ緊急ってなら話は別だし、しかたないけど、でもあんたはなにも言わなかった。まるで何かを隠しているように。
たぶん、あんたは昨日あの娘の情報をどこかで仕入れて慌てて俺に電話したんだろ?

それから依頼のあったあの男のことだけど、俺は仕事を果たせなかったのにあんたは特にそれを責めなかった。それにあいつのあの性格の割りにやってることがあまりにもレベルが高い。学園都市から金を流用するなんてよほどの知能と度胸がなきゃできねぇことをやってきた奴にしてはあまりにもお粗末過ぎる。

それにあの娘をおぶってる時に一瞬だけだけど、あんたに似た少女の顔が見えた」

「でも、それだけで私だと当てるなんて」

「ああ、最後はな。あんた真っ先に俺のとこに来たみたいなこと言ってんのに、既にあの女の子の安否、しかも寝てるって知ってるってのはおかしいよな」

「はぁ、変なところは鋭いじゃん。ったく」

黄泉川は呆れたように笑った。

「はは。まぁ、そう考えるとあんたが今まで俺のことを手伝ってくれてたのに納得がいくのも理由の1つなんだけどな」

「ああ、否定はしない。私はあの娘を探す為にあんたを利用してたじゃん」

「別に責めてないさ。俺も助かったしな。色んな子供を救うことができた。でも、会いに行かないのか?そろそろ起きてるだろ?」

「私には会う資格なんてない。あの娘を捨てたようなもんじゃん」

「どういう意味だよ?」

「はぁ、どこから話すべきか……そうだねぇ、最初は私の父親が浮気をしたことから始まるじゃん」

「………………」

「父親は浮気をして、外の女に子供を作ってしまった。しかも相手の女は子供を産んで何年かした後に死亡したじゃん。まぁ、それで父親はその娘を認知して連れて帰ってきた。私は妹ができてうれしかった、でも母親がそのことを嫌がったじゃん。それで、父親と母親は別れちまったじゃん。」

「………………それで、あんたとあの娘は離れ離れになったのか?」

「ああ、あの子もメールぐらいはできたから、お互いメールしてたじゃん」

「そんでわたしが教師になって数年した後にあの娘からのメールがぱったり途絶えたじゃん。しかも父親は行方不明。慌てて探した後はもう学園都市でどこかに行ってしまってたじゃん」

「んで、あんたはここで教師になって探したのか?」

「その通り…アンチスキルになったのもそれが理由だった」

「だったらあんたは会う資格があると思うぜ。だってそこまでしてあんたは探してたんだろ?妹を」

「………………でも、あの娘は私のことを恨んでるかもしれないじゃん。それが怖いじゃん」

「だったら尚更だ。会いに行ってこいよ。あの娘は絶対恨んでない。俺が保障する」

「ったく、あんたはそういうことをすぐ言うじゃん」

「へへ。俺も会いてぇな。車椅子頼むよ」

「わかったじゃんよ」

そして、2人が雲雀の病室に行くと。



雲雀の病室には、面会謝絶の文字が張られていた。

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