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八月二十一日 陸【一方通行編】

綾峰をクロが丸呑みにした頃、『実験』について何も知らない初春は自身の寮でフライパンを振りながら料理に勤しんでいた。
その横ではルームメイトである春上 衿衣(はるうえ えりい)がその様子を食い入るように見ていた。

「あの、春上さん…」

「どうしたのなの?」
初春にとって別段見られて困るような事はない、確かに初春の料理スキルでは見られていると若干恥ずかしい気持ちもあったが、春上の料理スキルはあまり高くないので特に問題はなかった。
だが、それ以上に、

「そんな真横で見られてると料理するのが難しいです…というか危ないですよ」

春上は先ほどから背後霊のようにぴたりと初春に引っ付いている。

「…お腹減ったなの」

「う…」

うるうると涙目になりながら初春を見る春上に、初春は何も言えなくなる。
先日、というか昨日まで春上はとある事件の関係で病院に入院していた。
そのため、もともとよく食べる春上はここ最近病人食ばかりで物足りないようだった。
そこで、今日は退院祝いも兼ねて、ぱぁっとたくさん食べようという事になり、初春がこうして料理の腕を振るっていたのだ。
しかし、それでも引っ付かれながら料理をするのは難しいわけで。

「あ、あの春上さん。こっちはできるだけ急いで作るので、佐天さんの方を手伝ってきてください。そうすればすぐできますから」

初春は佐天に任せることにした。

「わかったなの!」

笑顔になって佐天のいるリビングに向かっていった春上を見送って初春は料理に集中することにした。
今日は退院祝いという事で佐天も初春の部屋に遊びに来ているのだ。
本当は美琴や黒子も呼びたかったのだが、今日は用事があるのか二人の部屋に電話しても出てもらえなかった。

「…それにお二人とも仲直りできたのかなぁ」

簡単チャーハンを皿に盛りながら呟く初春に、

「う、初春さん!」

リビングから初春を呼ぶ春上の声がした。
何か慌てているのか声が上ずっている春上の声に初春は佐天が春上のスカートでもめくったのかと、思いながらチャーハンのお皿を持ちってリビングに入った。

「春上さん、どうしたんですか? 佐天さんが、スカートでもめk…佐天さん?」

のんびりした口調でリビングに入った初春の目の前には、

「う…いは…る…」

頭を抱えながら床に倒れている佐天の姿があった。
横には心配しておろおろと困惑している春上がいた。

「佐天さん!」

初春は驚いてチャーハンの皿を床に落としてしまうが、そんなことは気にならない。
なにせ、佐天のこの様子は見たことがあったからだ。

「佐天さん、佐天さん!」

初春は春上とは反対側から佐天の横に駆け寄った。
その姿は、先月の事件で佐天が倒れた時にそっくりだった。

「ういはる…またなのかな…」

涙を浮かべ、佐天は震えている。
また、眠らねばならないのかと、罪の意識に震えながら尋ねている。

突然の事態に愕然としながら初春は首を振る。
ありえない、と。

『幻想御手(レベルアッパー)』事件。
夏休みの直後、使用者のレベルを上げるというアイテムが出回った。
事件そのものは解決し、『幻想御手』をアンインストールする治療用プログラムが町中に流れてあの事件は幕を閉じたはず。
事件後にこれ以上の被害者を出さないために徹底的にネット上や所持者を洗い出して既に出回っているものは存在しない。
ましてや、佐天は前回の事件で被害者となっている。手を出すはずがなかった。

だと言うのに、佐天は倒れ震えていた。

「私が…安易に手を出したのが…いけなかったのかな…」

「そんなことないです、佐天さん!」

「でも、聞こえるの……皆のコえガ…嫌ダよ……イキタクナイよ」

「佐天さん? 大丈夫なの?」

春上も心配して涙目になりながら初春を見る。
初春はそれを見て自身の目のあたりを袖でごしごしと拭く。
そして、精一杯の笑顔で言った。

「大丈夫です、佐天さん」

「初ハる?」

「また、私が起こしてあげますから。絶対」

「……ありがとう」

そして佐天は眠った。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第58話










クロが綾峰を飲み込んだ直後、クロの体が一気に膨張した。
そして一気に膨れ上がる体はある程度蠢きながら一定の形を作っていく。
やがて、クロは全長10メートルを超える胎児のようなフォルムに尻尾を生やし、頭上に黒い輪っかを浮かべ。

「                !!」

『幻想猛獣(AIMバースト)』として再度の産声をあげた。



この世のものとは思えない産声、あるいは悲鳴のようなそれを上げる怪物は黒地の中に赤い瞳を浮かべて帝督を見ていた。

「『多重能力者(デュアルスキル)』の野郎…どうしちまったんだ?」

突然の状況に驚きながら帝督は相手を観察する。
しかしそんな暇すらなく、『幻想猛獣(AIMバースト)』は頭上の輪に黒いエネルギーを集めると、一気に回り中に放出した。
黒い噴火のようにまき散らされるそれは辺り一帯にある物に無差別に降りかかるとジュゥという不気味な音を立てる。
その後には、砂利も木材も金属すらも全てが溶かされていく。
辺りの様子を見た帝督は、慌てずに翼を広げると即座に自身の頭上を6枚の翼で覆う。
帝督の持つ翼は『この世に存在しない物質』だ。故にあらゆる攻撃を防ぐ盾としての力は十二分に持っている。
だが、その翼がジュゥ、という音と共に溶けるのを感知した帝督は即座に翼を振り払った。

「マジかよ…」

帝督は自身の翼の先を見て驚く。
そこには周りの物質と同様に溶けかけた翼があった。
しかし、それを驚いている暇もなく、帝督の頭上に続けざまに黒いエネルギーが降り掛かってくる。
上空を見て帝督は、

「メンドクセェな」

再度展開した翼を広げ、僅かに動かす事で黒いエネルギーの届かない程の上空に移動した。
そして、黒い怪物を見下ろしながら一言だけ呟いた。

「吹き飛べ」







trrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr trrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
第七学区の上空で携帯の音が鳴り響いた。
空中を移動していた黒子は『空間移動(テレポート)』で近くのビルの屋上に下りると、ポケットから携帯を取り出した。

「はいですの。初春、いったいこんな夜更けに何の用ですの。私、今急ぎの用事が…『佐天さんが、倒れました』…何ですって!?」

初春の言葉に黒子の表情が変わる。
初春は普段の甘ったるい口調の中に鋭い雰囲気を持ちながら言葉を続けた。

『たぶん、原因は『幻想御手(レベルアッパー)』です』

「でも、あれは既に解決しているはずですのよ?」

『佐天さんが昏睡状態になる前に言ってました。『また』って』

「…………だとしたらなんで、こんなタイミングで…ッ!?」

黒子が呟いた直後、突風が黒子を吹き飛ばした。
その弾みで、体勢が崩れた黒子は屋上から落ちた。

「え?」

「きゃっあああああああ!?」

突然のことに驚く黒子だったが、すぐに『空間移動(テレポート)』で元の屋上に戻る。

『だ、大丈夫ですか? 白井さん! 白井さん!?』

「だ、大丈夫ですの。す、少し驚いただけですの」

動揺しながらも返事をする白井は突風が吹いた方を見る。
その方角は白井の目的地があった。
黒子の視界にあるものが映り込む。

「いえ、初春。分かりました」

『はい? 何がですか?』

「原因が、ですのよ。今からそれを解決してきますの」

『え? で、でも1人で大丈夫なんですか?』

心配する初春に白井は言う。

「ええ、大丈夫ですの。しなければならない事が1つ増えただけですのよ。初春は佐天さんを病院に搬送しなさいですの」

『は、はい。白井さpi tu- tu-』

黒子は返事を待たず、携帯を切る。
その視線の先には操車場。
そして、その中心にいる黒い胎児。
1ヶ月程前の事件に現れたそれがあそこにいる理由はわからない。
そもそもあそこにあの人がいる事も確証はない。
だと言うのに…。

「唯鷹さん、そこにいるんですのね…」

黒子にはそんな気がしてならなかった。











「少しは大人しくなったか?」

黒いエネルギーごと、翼で起こした暴風で吹き飛ばした相手を観察しながら帝督は呟く。
黒い胎児の様なそれは吹き飛ばされ、コンテナの山にぶつかって崩れて来た大量のコンテナに押しつぶされていた。

「ーーーa邪魔lp」

ノイズの混じった呻き声がが聞こえる。
コンテナが重しとなりうまく動けない様子だった。
怪物に初めは驚いた帝督だったが、今は動けない状態の怪物に先ほど習得した『感知能力』を試してみたくなった。
せっかくの新しい力だ、新しい玩具を手に入れた子供のような気分で帝督は誰でも良いから試してみたかったのだ。
空気中に『未元物質(ダークマター)』によって引き出した新たな物質をバラまいて行く。
そしてその結果。

「何だこりゃ」

分かったのは目の前の怪物がすかすかだということだった。
中はまるでスポンジのようになっていた。
それも徐々にすかすかの部分が増えている。
この様子だと放っておいてもしばらくすればこの怪物は消えてしまうだろう。

「…こりゃ、放っておいてもいっか」

メンドクセェ、と呟いた帝督は近くのコンテナの上に腰を下ろす。
しばらくすれば怪物は消え、綾峰だけが残るはずだ。
帝督は、そう結論づけて綾峰を待つ。
救えるから救う。
そんな下らない理由で学園都市に歯向かう馬鹿に、それがどうなるかを教えなければならない、と帝督は本気で考える。
その行動自体が『回収』を目的とする学園都市に反しているという矛盾に気付かぬまま。

そこに、電話が鳴った。

「ん?」

帝督はポケットから携帯を取り出す。
画面に映る相手の名前に帝督は溜め息を吐くと受話器ボタンを押した。

「あいよ、どうした? 『心理定規(メジャーハート)』」

『どうしたもこうしたもないわよ。任務だがなんだか知らないけど、こっちは第四位が来たり、色々あって……あー、もう!とにかく雲雀って子知ってる?』

何やらぶつぶつと呟いて最終的に怒鳴って来た『心理定規』に帝督は再度溜め息を吐く。

「ああ、知ってるけど。雲雀がどうした?」

『さらっと、名前呼んで………。 その子が寝込んじゃって。医者が言うには『幻想御手(レベルアッパー)』とかの副作用に似てるとか…。よくわからないんだけど、その雲雀って子が寝ながらアンタのこと呼んでるのよ』

「何だそりゃ……ったくちょっと待ってろ。今行く。場所は?」

そう言うと、帝督は立ち上がり『幻想猛獣(AIMバースト)』から背を向ける。
怪物なんぞに構っている暇はない。

(……けて)

一瞬、帝督は振り返る。
そこにいるのは徐々に消えつつある『幻想猛獣(AIMバースト)』だけだった。
また背を向けて、『心理定規(メジャーハート)』に問いかける。

「…何か言ったか?」

『で、その病院の…? だから説明してるじゃない。聞いてなかったの?』

「…いや、聞いてたが」

(たすけて、おにーちゃん)

帝督は即座に振り返った。
今度は聞こえた。
今度こそ、雲雀の声が聞こえた。

「どこにいる?」

辺りを見渡すが、あるのはレールやコンテナ、そしてバスの山だけだった。

『だ~か~ら~…』

「おい、雲雀!」

「(たすけて…みんなをたすけて)」

声が聞こえた。
頭に直接響く声と、耳から聞こえる声。
耳に届く声の方向に目を向けると。

『ねぇ、聞いてるの?』

「悪い、ちょいと用事ができた。雲雀に言っとけ」

『ハァ?』

「すぐに助ける。ってな」

通話を切り、目の前に立つ相手に告げる。

「今度こそ息の根を止めてやる」

黒い、怪物がそこに立っていた。
黒い鱗に覆われ、足と手には鋭い爪を生やし、腰の部分からは身長の半分ほどある尻尾が垂れている。
は虫類を思わせる造形の体の上には一本の角が左のこめかみから生えた頭があった。
その頭は全てが黒い鱗に覆われてはいない。
右側だけ僅かにその下にある顔が見えていた。
そして、赤い色に染まった右目を輝かせて、”綾峰”は立っていた。

「…gvs消去qw」

綾峰の黒い鱗に覆われた口からノイズの混じった声が漏れた。





『Dark Matter 未元物質』垣根帝督

VS

『A.I.M. Burst 幻想猛獣』綾峰唯鷹



直後だった。
帝督が動く前に幻想猛獣は左腕を体に巻き付けるように構えを取る。

「何を…」

そして、帝督との間にある見えない壁を叩くような動作をした。
それだけで、

「ッ!?」

帝督もろとも、学園都市の半分が衝撃を受けた。







あとがき

はい、綾峰無双モード入りました~(棒読み
お久しぶりです、スザクです。
たぶん今年最後の投稿となるであろう、第58話です。
いつもと比べると短いですが、今回はこんな感じで。
あまり趣味ではないですが、いくつか作中の解説をば。

前話、第57話の綾峰の能力『絶対能力(レベル6)』ですが、自称です。
本物の絶対能力(レベル6)ではありません。
本来はレベル4~5程度の能力の集まりです。
どちらかと言えば、第5位の『心理掌握(メンタルアウト)』に近い能力です。
まぁ、補助として実際に光やら重力やらも操ってるのでかなり現実的な能力ですが。
えっと、突然こんな事を言い出して何が言いたいのかというと。
綾峰が超能力(レベル5)すら使えないのに何故絶対能力(レベル6)を操れるのか。
という矛盾点を解決するためですね。
ぶっちゃけこんなあとがきでちまちま解説するよりは本編でそれがわかるように書けってのが持論ですが、今回はリアルの状況が忙しいため書き直しをしている暇がないと判断して書いておきます。

後、前々回、第56話と今回の最後もそうですが、キャラクター達が戦う直前に以下のような文面が入ってます。

『Dark Matter 未元物質』垣根帝督

VS

『A.I.M. Burst 幻想猛獣』綾峰唯鷹

これは、直前に呼んだ某漫画の影響がもろに出てますね。
正直、後から読み直して自身で恥ずかしくなったりしてますが。
ちなみに今回のを含め英語表記は正しいかはわかりません。
一応、カタカナ読みの際に使われている言葉等を、語感が似ている英語を使ってますが、正式にこれというものを見た訳ではないので悪しからず。
なお、英単語そのものについては正しいはずです。

それから、今回春上 衿衣(はるうえ えりい)が登場してますね。
これはテレビアニメ版の『とある科学の超電磁砲』に登場したアニメオリジナルキャラです。原作漫画の方でもさらっと台詞に登場してたりするキャラなのであまり認知度が低い訳ではないと思いますが、一応。
ここのSSはアニメ化する前から書いていたので衿衣とそれに関連する事件については書きませんでした。
しかもそこらへんの事件の影響がかなりあやふやになってたりします。(まだ木山先生が刑務所にいる、など)


以上のように細かい点で適当だったり、あやふやだったりするこの作品ですが、今後ともご愛読の程をよろしくお願いします。
今年も後僅かですが、良いお年を。

スザク

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