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八月二十一日 弐【一方通行編】

「またかよ」

原谷矢文は憂鬱な口調と共に溜め息を吐いた。
夏休みも終盤、宿題という夏の魔王を倒すために友人達と勉強会をするつもりで外出したのが今朝。
ちょっと休憩のつもりで飲み物を買いにコンビニに向かって出て来た矢先、原谷が油断するのを待っていたかのようなタイミングで、

「超すごいパーンチ」

『非日常』が彼の目の前に現れた。
それは超能力という非日常が当然の様に扱われるこの学園都市でさえ更に『非日常』な光景だった。
最近新たに作り出された妙な名前の必殺技が叫ばれると同時に、ある男の拳からよくわからない波動が出て別の男を吹き飛ばして行く。
吹き飛ばされた相手は十数メートルも吹き飛んで駐車場の奥の壁にぶつかるとそのまま地面に落ちる。
そして地面に倒れた大男はぷるぷると震える足で立ち上がると同じく震える声を出した。

「くっ……この内蔵潰しの横須賀の45回目のリベンジをものともしないとは…削板軍覇…貴様、また腕に磨きをかけたようだな…ぐっ」

アクション映画にラスボスとして出てきそうな大男の目の前に立ち、旭日旗のシャツの上に白ランを羽織って昭和にいそうな番長?のような少年、学園都市の頂点の7番目は力強く頷くと言った。

「モツ鍋、俺の『超すごいパーンチ』を5発まで耐えられるようになるとは、お前も更に根性を入れ替えた様だな!だが、まだまだ甘い!俺の『超すごいパーンチ』を10発は耐えられるようにならねば次の必殺技までは到達できんぞ!だが、その体では今日はもう無理だな!休むと良い!俺はいつでも待っているぞ!」

男の言葉に跪いていたモツ鍋こと横須賀は、震える体でゆっくりと立ち上がりながら声を絞り出した。

「クソ…待て。俺はまだやれる!」

横須賀の言葉に帰ろうとしていた削板は振り返り、震えながらも立ち上がった横須賀に目を見開いた。

「なるほど、俺はお前の根性を見誤っていたようだ!俺もまだまだ根性無しということか!よし、これは非礼の詫びだ!まだ早いかもしれんがもう一段階上を見せてやろう!」

「な、なに!だが、俺はそれを越えて行く!削板死ねやぁああああ」

削板の言葉に嬉々とした表情でラリアットを仕掛けに行った横須賀。
そんな彼に削板は拳を握りしめ、更なる根性を込めた叫びを上げる。

「すごくすごいパーンチ」
「ちょっ、それ前よりひどピチューン」

駐車場の奥の壁にぶつかった横須賀はめり込むどころかそのままレンガでできた壁そのものを粉砕しながら気絶した。
そんな彼と瓦礫になった壁を見ながら溜め息を吐いた原谷は何か言おうと思って前に出て、

それより先に削板に抱きついた少女によって原谷の言葉は口の奥に押し込まれた。

「おねーちゃんを助けて!」

ワンピースを着た少女の悲痛な叫びがコンビニの横で響いた。









とある科学の事件体質(トラブルメーカー)第54話









黄泉川の家から帰って来た白井はベッドの上に倒れる様に寝転んだ。
それを迎えたクロが心配そうに鳴くのを抱えると撫でながら天井を見上げる。
黄泉川と雲雀のおかげで大分気持ちの整理ができたのか、白井は改めて現在の状況を考えることができた。
今、白井が知る限りでも御坂の周りを取り巻いている状況はかなり入り組んでいる。
御坂のDNAマップを元に作られた御坂のクローン、『妹達(シスターズ)』。
そのミサカ達を殺して頂上から更なる上へと目指す第一位、『一方通行(アクセラレータ)』。
その事実を知り、ミサカ達の命を救っているお人好し(大バカもの)、綾峰唯鷹。
本来、この構図からすると綾峰は御坂の味方であるはずだ。
なのに、その御坂自身は綾峰の事を敵だと認識している。
なにかしらの誤解が原因のはずだが、綾峰も自身の行っている事を隠しているためにその誤解は解かれていない。
そして、その誤解は白井にも関わって来ている。
御坂は先日、白井に『私か綾峰さんを選びなさい』と、言った。
それはつまり最悪の場合敵として倒すという宣言でもある。
その上で選べと言うのだろう。
殺し合う時に、御坂の敵として現れるのか、御坂の味方として現れるのか、どちらにしろ迷うなという御坂の不器用な優しさを僅かに感じた。

さて、ここまでが簡潔に白井が置かれている状況だった。
若干主観も入ってしまった気もしたが、そこは置いておく。
とにかく白井がまず考えるのは自分が何をしたいか、だ。
自らの目的が決まらなければ何も始まらない。
白井は、自らの目的とそれを叶えるための手段を御坂のベッドの上で考えて行った。

「黒子はどうすれば……………………………ハァハァハァ…」

枕に顔を埋め考えて、

「はっ!いっいけませんのっ!お姉さまの香りに包まれていると思わず意識が…」

考えていった。

「きゅい」

クロが何やってんだか、と言いたげに鳴いた。








少年が駆ける。

黒猫を胸に抱いた少年が駆ける。

少年の黒髪はとげとげとしたウニのような頭になっていてファッションに若干なりとも気を使っているのが目にとれる。

しかし、そんな僅かなファッションも今は汗でめちゃくちゃだ。

駆ける少年の息は荒い。

額から汗も吹き出ている。

それでも少年は駆ける。

目前の事実が信じられなくて、

自分の想像がウソだと思いたくて、

実験の真実が知りたくて、

少年は少女の元へと駆けて行く。

少年が駆ければ駆ける程、脳裏に昨日からの記憶が駆け巡る。

『アンタ! 一体どうしてこんな所をブラブラしてんのよ!!』

『私、あの飛行船って嫌いなのよね』

『ミサカはきちんと死亡しましたよ、とミサカは報告します』

『ただの実験ですよ、とミサカは答えます。本実験にあなたを巻き込んでしまった事には重ねて謝罪しましょう、とミサカは頭を下げます』

まるでデータをそのままコピーしたかのようにそっくりそのままの顔をした少女達。

無表情の彼女達の言う実験にはある少女のDNAマップが使われたという。

なら、そのDNAマップを提供した少女はこの事実を知っていたのだろうか?

それだけが知りたくて、少年は駆けて行く。

知った所で何があるのか、知って何をするのかなんて考えていない。

それでも昨日までの少女の笑顔が信じたくて、少年は駆けた。








ある程度目的が思いつけば、そのための手段はいくつか思いつくものだ。
だから、目的を定めた白井もそのための手段を決めた。
そしてふとそこで不安が過る。

(黒子はお姉さまの力になれるんですの?)

白井の脳裏に『いつもの』御坂の笑顔が浮かぶ。
しかし、その横にいるのは白井ではない。
ここ最近では笑みを浮かべても力ない微笑みしか見せなかった御坂。
その彼女が浮かべた『いつもの』笑顔の横にいたのは件の「あの馬鹿」に対してだけだった。
普段、人前では見せない表情を、やらない非常識な行動を、「あの馬鹿」に対してだけはしていた特別な男性。
今、白井の脳裏に浮かぶ『いつもの』御坂の笑顔の横にいるのは、「あの馬鹿」だった。

「不本意ではありますが、今のお姉さまがあなたを必要としているのなら…」

(例え、私が嫌われようとも…)

「あの方がいればきっとお姉さまは『いつもの』お姉さまに戻れますわよね」

つい、呟いた言葉に。

「きゅい」

ベッドの上にいたクロが頷いたように白井には見えた。

その時だった。

ぴんぽーん、とインターホンが鳴った。
突然の来客に通話用の受話器を取って画面を見た先には、

『……上条、だけど。御坂か?』

「あの馬鹿」さんが立っていた。








上条が常盤台中学学生寮を出たほんの数時間後。



(悪魔が嗤ってる)

とある病院の地下、その奥にある一室にいた『心理定規』は背筋を凍らせながらその光景を見ていた。
周りには人1人がまるまる入る程のカプセル状の機材が100近く部屋の中で並べられていて、『心理定規』の立っている入り口の辺りからはカプセルの中を伺うことはできなかったが、彼女の前で部屋の中央に立つ少年の位置からは見えているようだった。

「はははは、ははっはっはっはっははは」

その中心に立つ赤い学生服の茶髪の少年、頂点の1人である垣根帝督は1枚の紙を握りしめながら嗤いを堪える様に背筋を曲げて口元を抑えると、一言だけ誰もが理解できる言葉で呟いた。

「ムカついた」

帝督の言葉にその場にいた全員が全身の毛穴が広がるのを感じた。
帝督はその場で握りしめていた紙を更に握りつぶし放り捨てた。
そして近くのカプセルの1つに近づくと、カプセルの窓にノックをして中の誰かと幾らか話した後、注意深く見守る研究者に目もくれず帝督は横にいたドレス姿の少女、『心理定規』に言った。

「用ができた。後を頼む」

淡々とした口調でそれだけ言うと帝督は地下室を後にした。


数秒後、緊張が解かれた研究者達全員が息を吐くと作業を再開した。
『心理定規』も部屋の外に出て外で警護に当たっているメンバーと連絡を取る。
帝督が一時的に任を外れることだけを伝えると『心理定規』は自身の足が震えていることに気がついた。
そして改めて先ほどの帝督の怒りがどれほどだったかを理解した。

護衛任務ということで『電話相手』に指定された場所で研究者達と落ち合った『スクール』が向かった先は1つの病院だった。
割と有名な病院だったので、こんな所で騒ぎを起こす馬鹿がいるようには思えなかったが、『心理定規』は楽ができるならそれで良いと考えてそのまま任に当たった。
護衛と言う事で『スクール』は4人それぞれで当初の予定していた配置に移動して時間が経つのを待ちながら『心理定規』は定時にメンバーと連絡を取り合っていた。
その途中、帝督が所定の配置から外れている事に気がつき、帝督を探して地下に向かった『心理定規』が見たのが先ほどの光景だった。

ふと、先ほど帝督が握っていた紙が気になった『心理定規』は入り口近くに落ちていたくしゃくしゃに丸められた紙を拾い上げて、破かないように広げた。
そこには黒い仮面のマークと一緒に黒い文字で、

「ご苦労様」

とだけ書かれていた。
何が帝督を怒らせたのか、『心理定規』が首をひねりながら紙をポケットに仕舞った直後、

目の前に死の光線が振り注いだ。

即座に身を捩らせて青白い光から避けると光はそのまま床や壁を貫き焼いた。
『心理定規』はその光の正体をすぐに理解してその場から身を隠した。

「久しぶりねぇ。ねぇねぇ聞いても良いかしら?」

階段の方から聞こえて来る声に『心理定規』は先ほど以上の緊張によって急速に体が冷えて行くのを感じた。
ポケットから拳銃を取り出して両手で構える。

「上下に焼き切られて殺されるのと、左右に裂かれるのとどっちが良い?」

「どっちもお断りよ!」

叫びながら飛び出すと、そのまま一直線に反対の階段に走りながら拳銃を構えて相手に向けて撃ちまくる。もちろん能力も全開にして撃ち難いような心理関係を構築してだ。
当然のように相手は飛んで来た弾丸を円状にした光で溶かして防ぐ。
しかしそれでいい、それだけでも十分に足止めくらいにはなる。
とにかく逃げ切らねばならない。
護衛任務なんて言ってられない。
自分すら守れるかどうかわからない相手を前にして他人を守る余裕なんてありはしない。
そんな『心理定規』が逃げ出すのを、赤みのある茶髪に女性雑誌に出てきそうな服装の少女、レベル5の第四位である麦野沈利は微笑みながら見送った。

「逃げたけど…良いの?」

後ろにいたジャージ姿の少女、滝壺が声をかけると、麦野は絹旗を見ずに威殺す様な視線を地下室の奥に向けながら答えた。

「良いのよ、どうせ相手にしたって面倒なだけなんだし。それに、目的はあっちだしねぇ」

舌なめずりをする蛇の様な雰囲気を出しながら言う麦野に滝壺は静かに溜め息を漏らして麦野の後を追った。
先ほどの光線によって混乱した内部に堂々と麦野は侵入する。
ひそひそと突然の状況についていけない研究者達のさえずるような声を、部屋の中央に立った麦野は一発、壁に光線をぶち込んで黙らせた。

「責任者ってどなた?」

高圧的な声におずおずと前にでる研究者の1人。
責任者の男が用件を尋ねると、麦野は頬が裂ける様な笑みを浮かべて言った。

「そうね、何匹か活きの良いのを頂こうかしら」

悪魔が嗤って言った。









後書き

なんでだろう、上条さんが現れるシーンだけは他より異様に安心感があるんだが。
というわけで、麦のん、復活!(どんなわけだ!)
帝督がいなくなった隙に攻め入るその小物っぽさに惚れるぜw
んあ、何か明るピチューン!

さて、話は打って変わって。
今回の話の上条さんを見てわかる通り、自分のSSではかなり原作側の話を端折る傾向にあるのですが、それで大丈夫でしょうか?
よく原作は知らないけどこのSSは読むって方もいらっしゃる様なので気になっているのですが。
まぁ、気になるようでしたら言ってくださればできるだけ原作側の話もわかるように工夫はしてみようと思います。

それでは、また次回!  ノシ





















まだ終わらんよ。












今日のひまがみ。

姫「焼肉のお焦げに含まれる多核芳香族炭素。実は発がん性物質

  って本当?」

小「自分で聞いちゃった!?」

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